ホテル業界で、
日本人は世界一口コミの厳しい人種
だと言われていることはご存じでしょうか。
観光データの分析でも日本語の口コミは英語圏の口コミに比べて平均スコアが低いことが確認されています。
これは良いサービスが当たり前で、不満な点だけを後から指摘する減点方式の考え方の習慣からだとされています。
例えば、「シャワーの排水が悪い」など、使えないわけではないので滞在中にフロントにご連絡せず我慢して、チェックアウト後に悪かった点として口コミに評価するお客様が多い傾向にあります。
私がコンシェルジュとして勤務していた海外のホテルでは、日本人のお客様からの予約が入ると場が微妙な空気になりました。
日本人のお客様は全体的に民度が高く、施設を綺麗に大切に使用していただくお客様が多いので、お客様としては有難いのですが、口コミを大切にしているホテルでは実はあまり歓迎されていません。
海外のホテルでは常識的に、不満やリクエストはちゃんとフロントに伝えて、「改善されたなら問題なし」ですので、ホテル側からすると改善のチャンスも貰えず評価された、とアンフェアを感じます。
日本は長きにわたるデフレの影響で、高い質のサービスを安い料金で受けることが習慣化していました。
数年前まで、同じブランドのホテルにおいて、他国に比べて日本はホテルの宿泊代が最も安い先進国の一つでした。
特にレジャーに使う予算を削ってきた経緯もあるのか、ことホテルに関してはお客様の期待値の高いレジャー施設の一つだと言えます。
バブル期に建設された重厚で高価な備品を揃え世界一と評される日本の質の高いサービスを提供するホテルに慣れているお客様からすると、数年前まで2万円前後で泊まれていた5つ星ホテルが今では十倍かそれ以上の価格で、泊まってみても、以前と変わらないサービスでがっかりされるお話もよく耳にします。
また、「以前は記念日のケーキをリクエストすれば無料で準備されていましたが、そういったサービスもなくなりました。」とのお声も多く頂戴いたします。
そしてそれは顕著に口コミに反映されています。コストパフォーマンスの項目で5点中1点が付いているケースも多くあります。「毎年記念日に訪れていましたが、こう値上がりしては難しくなります。」「値上がりしてサービスの質は低下した」などといった常連客の声も届いています。
前にもこの話題に触れましたが、かつてなかったレベルのインフレの中、インバウンドが盛んになり、ホテルがお迎えするお客様層を選び、世界基準の価格に見直された結果このような事態になっているので、ホテル目線では適正価格なのですが、代金の差額を考えれば常連のお客様が納得がいかないのも当然のことです。
この場合、ホテルが想定している現在の客層とお客様の価値観が一致していないので、単純にこのホテルを利用しないのが正解に思えます。この価値観が一致していないお客様の意見も一つの意見として重要ですが、ホテルの想定している客層のお客様には理解が難しい口コミになってしまっているかもしれません。
普段フェラーリを運転しているドライバーが突然日本の軽自動車に乗っても正確なジャッジは難しいでしょう。その逆もしかりですが、軽自動車を買う際には、普段から軽自動車に乗っている人の口コミを聞きたいと思うのではないでしょうか。
正しいジャッジができる人が口コミを残してこそ、口コミは次のお客様に宿泊するかを判断できる目安として有効になるのです。
ホテルはなぜ口コミを大切にするのでしょうか。 ご想像の通り、お客様から選ばれやすくなるから、という理由ももちろんありますが、自分達の仕事の情熱に対して、ゲストはどのような感想を持ち何点のジャッジを下すのか、自分たちが何点の仕事をしているのかが気になっています。お客様のネガティブなお声の中にこそ改善の可能性があるからです。宿泊業界はお客様からの耳の痛いご意見をとても大切にします。本当に素晴らしい施設や、優秀なスタッフが集まっているお宿では良いことだけを口コミに見ることがありますが、施設規模が大きくなればなるほど、スタッフのクオリティコントロールは難しく、至らない点ができやすくなります。どれだけ多くの口コミをいただいていたとしても、宿泊施設ではすべてのご意見一つ一つに真摯に向き合っています。
私なりに、口コミを書く際に意識している心得を皆さんにも参考にしていただけましたら幸いです。
・自分の予算にあったホテル選びをする
・改善要求はすぐさまホテルに伝える
・無料のサービスはないものと心得る
最後に忖度ない私の個人的な意見です。
特にバブル期を知っている世代の日本人に多いのが、
「日本人はどこに行っても歓迎されている」という勘違いです。
まるで今のどこかの国の様に経済力だけを理由に自信過剰になった時期があるからです。そのどこかの国の人も、「世界で愛されている」とか「私達の意見が通らないなんてありえない」などの勘違いをしているのはSNSなどの情報から想像に難くないのではないでしょうか。
現在は日本のラグジュアリーホテルですら、サービスへの期待値が高く、コストがかかり、評価が厳しい日本人を集客のターゲットにしていません。
世界基準の常識、サービスや価格設定を理解したうえで口コミを書いてあげるのがホテルにとっても今後のお客様にも役立つ、すなわち、ホテルが大切にしたいお客様なのです。
日本人が世界のホテルで大切にされる存在になれば嬉しいですね。

