どんな関係にも、いつか「慣れ」がやってくる。
最初は会うだけで少し緊張して、
次に会える日を楽しみにして、
何気ない言葉ひとつにも心が動いた。
それが何度も会ううちに、少しずつ自然になっていく。
会うことが特別な出来事ではなくなり、
いつもの店で話して、いつものように笑って、
次に会う約束をする。
刺激は少なくなる。
その代わり、安心が増えていく。
その安定は、とても心地いい。
でも、不思議なことに少し寂しくもある。
あの頃のドキドキがなくなってしまうようで、
大切なものをひとつずつ置いてきてしまったような気持ちになる。
けれど、今日ふと思った。
これは飽きたということではない。
むしろ逆なのかもしれない。
会うことが自然になった。
一緒にいることが当たり前に近づいた。
それだけ、この人が自分の中に入り込んできたということなのだと思う。
そして、そんな相手だからこそ難しい。
好きだと思う。
もっと一緒にいたいとも思う。
できることなら、恋人になれたらいいのかもしれない。
でも、それはできない。
恋人という立場になれば、そこには気持ちだけでは済まないものがある。
その人の時間や未来に踏み込むなら、
それなりの責任を持たなければならない。
その責任を取れないことは、自分がいちばんよく分かっている。
だから前には進めない。
好きなのに、進めない。
一緒にいたいのに、その先を約束できない。
この距離が、ときどきたまらなく切ない。
彼女は今、恋愛も彼氏もいらないと言う。
その言葉を聞いて、少し嬉しくなった自分がいた。
しばらくは今の関係でいられるような気がしたからだ。
でもそのすぐ隣には、
「いつかいい人を見つけて、ちゃんと恋をしたらいいのに」
と思う自分もいる。
そばにいてほしい。
でも、幸せになってほしい。
自分では与えられないものがあるなら、
いつかそれを与えてくれる人と出会ってほしいとも思う。
勝手なものだ。
その日が来たら、きっと寂しい。
それでも、「行かないで」とは言いたくない。
どんな関係にも終わりがあるのなら、
嫌いになって終わるのではなく、
傷つけ合って終わるのでもなく、
「あの時間はよかったな」
と、お互いに思えるような終わり方をしたい。
だから今は、
「好きだ。恋人にはなれないけれど、一緒にいたい」
そんな言葉は胸の中に置いておこうと思う。
言ってしまえば、相手に何かを背負わせてしまうかもしれない。
伝えるなら、もっと簡単でいい。
一緒にいる時間が好きだということ。
今日会えて嬉しかったということ。
また会いたいということ。
それだけでいい。
未来を約束できないからこそ、
今ここにある時間を雑に扱いたくない。
いつか向こう側へ行く日が来るとしても、
それまではもう少し、
この穏やかな関係の中にいたい。