星にならなかった夜たち
三番星さんのことを書く前に、
少しだけ触れておきたい出会いがある。
正直に言えば、
それは「星」と呼ぶほどのものではなかったのかもしれない。
名前をつけるほどでもなく、
思い出として大切に残っているわけでもなく、
ただ、自分の中に少しだけ苦い感覚として残っている。
一度だけ近づいて、
それきりになった出会いがいくつかあった。
会う前は、少し期待していた。
もしかしたら、何かが始まるかもしれない。
もしかしたら、少し心が動くかもしれない。
もしかしたら、寂しさが埋まるかもしれない。
そんなことを思っていた。
でも実際には、何も始まらなかった。
近づいたはずなのに、
心は近づいていなかった。
時間だけが過ぎて、
終わったあとに残ったのは、満足感ではなく虚しさだった。
自分は何をしているんだろう。
そう思った。
誰かを好きになりたいと言いながら、
本当はただ、寂しさや欲を一時的にごまかしたかっただけなのかもしれない。
でも、そのごまかしは長く続かなかった。
むしろ、終わったあとに余計に寂しくなった。
心が動かないまま近づいても、
本当に欲しかったものは手に入らない。
それを何度か繰り返して、
ようやく少しわかってきた気がする。
自分が欲しかったのは、
ただ誰かと近づくことではなかった。
会えたらうれしいと思うこと。
返事を待ってしまうこと。
また会いたいと自然に思うこと。
その人のことを、ふとした時間に思い出すこと。
そういう、面倒くさくて、少し苦しくて、でも温かいものを探していた。
一度きりの近さでは、
その代わりにはならなかった。
むしろ、自分の中の空っぽな部分が、
よりはっきり見えてしまった。
あの頃の自分は、たぶん焦っていた。
恋をしたい。
ときめきたい。
誰かに求められたい。
でも、傷つきたくない。
その全部を抱えたまま、
簡単に答えが出る場所を探していたのだと思う。
でも、簡単に手に入るものは、
簡単に消えていった。
そして、消えたあとに残ったのは、
自分の心の雑さだった。
誰かを大切にしたかったのか。
それとも、自分の寂しさを埋めたかっただけなのか。
その区別がつかないまま、
いくつかの出会いを通り過ぎてしまった。
今思うと、あれは恋の足跡ではなかった。
でも、無駄だったとも言い切れない。
あの虚しさがあったから、
自分は少しずつ気づいたのだと思う。
心が動かない関係では、
自分は満たされない。
ただ近づくだけでは、
自分の欲しかったものには届かない。
誰かを好きになりたいという気持ちは、
もっと厄介で、もっと面倒で、もっと時間がかかるものなのだと思う。
三番星さんに出会う前、
自分はそんな夜をいくつか通り過ぎていた。
星にはならなかった夜たち。
でも、その暗さがあったからこそ、
次に小さな光を見つけたとき、
自分はまた少し期待してしまったのかもしれない。