お庭の犬 | おばあちゃんになった、わんこさんのおはなし。                    ~高齢柴犬の闘病・介護記録~

おばあちゃんになった、わんこさんのおはなし。                    ~高齢柴犬の闘病・介護記録~

ハイシニア柴犬介護記録です。
1年3カ月の闘病期間を含め、いつでも家族みんなで笑いながら過ごした、柴犬「わんこさん」との16年と8カ月の生活。
悲喜こもごもあったけど、トータルしてとっても幸せだった日々のおはなしです。

犬と一緒に過ごす生活って、いいね。

わんこさんは、 お庭に暮らすワンコでした。

 

子犬の頃の1~2カ月程は予防注射の免疫が充分についていないということで家の中で生活をしましたが、その後は病気にかかってしまうまで15年間ずっと、暑い夏も台風の大嵐の日も、雪の舞う寒い日も、いつでもお庭で暮らしていました。そしてわんこさんの様子から、私たちはわんこさんは屋内で暮らすよりもお庭の生活の方が好きなのだと分かっていました。おそらくわんこさんはお外で暮らしていたお母さんのもとに生まれて、はじめからお外でのびのびと生活をしていたんじゃないかなと想像できるくらいに、最初からお庭での生活にしっくり馴染んでいました。

 

元気で頑丈でたくましい、自然の中の生活の似合う素朴な子でした。快適温度のリビングでフワフワソファに乗ってテレビを眺めるより、そよぐ風を感じて庭の草木や空を飛ぶ鳥を眺める方が断然に好き。晴れた日の気持ちよさも、雨の日に濡れてしまうのも、どっちも当たり前のことなんだから何の不平も感じない。雨の日は犬小屋にこもり、晴れた日はせっせと土をほじくり返したり、水の鉢をひっくり返して水浸しにしたその上に満足気に座っている。汚れることなんてちっとも怖くない。

暑い日には物置の狭い隙間にもぐりこんでいたりした。虫がひよっこり出てきても少しも怖がらず、興味津々で鼻先をくっつけるようにして観察していた。何が見えるのか雨水桝の取っ手の小さな穴を覗き込んで、手も入らないから鼻先を差し込んでふーっと息を吹き込んだ後にじっと息を殺して、再び穴の中を注視し続けていた。そうしながら何を考えていたのかは分からないけれど、なんだか真剣なその後ろ姿が、とてもかわいらしかった。

 

番犬業務中には、ガレージの向こうに広がる道路を通る人をキリッと背筋を伸ばしてカッコよく座って眺め、隣家との境の塀に手をかけ立ち上がって、背伸びをしてずっと向こうの方まで見通してパトロールをしていた。我が家の敷地内にうっかり不法侵入してきた蝶々を追い払うどころか、熱烈に歓迎してしまうフレンドリーなパトロールぶりだった。フレンドリーな態度は人間に対しても同じ。勝手口から不意に現れて家の裏手の機器の点検をするガス屋さんにも水道屋さんにも、吠えるどころか満面の笑顔で歓待をする。鎖をギリギリまで引っ張るから喉が絞まって舌が紫色になっているのにかまわず、遊んでほしい一心でもっともっと近づこうとがんばっていた。仲良しだったお隣のおばあちゃんが窓を開けたり、奥さんが箒を持ってお掃除に出てきたりすると、それはもう大喜び。「わんこさんは本当に愛想良しだねえ。」なんて話しかけてもらっていた。狭い我が家の庭でも、わんこさんはすみずみまで探求しつくし、楽しんで暮らしていてくれたと思う。

 

勝手口の3段の段差をわんこさんは一日に何回も何回も昇り降りして暮らしていたから、知らず知らずのうちに足腰の強化トレーニングをしているようなものだった。平坦な場所で暮らすよりもずっと、鍛えられただろうね。だから走るのがとても速かった。

ある日偶然にテレビの情報で知ったのは、外気温など過酷な条件の屋外で飼われている犬は室内飼育の犬よりも短命になりやすいということ。確かに薄い犬小屋の屋根だけでは殺人的な暑さの夏の直射日光も遮りきれないし、扉さえない入り口は冬の寒風までをまともに受け入れて防ぎようがない。頼れるのは体の強さと忍耐力だけという厳しい条件下では、消耗も激しいだろう。

シニア期になってからのわんこさんは酷暑・極寒の一時は空調を効かせた家の中に避難をさせていたけれど、家の中では本当につまらなさそうだった。滑る床の上は歩きにくく、何もすることがないから眠るしかないといった入院中のお年寄りの退屈に近かったのかなあと思えたから、一日中を家の中で過ごさせると決めるのはためらわれた。快適温度は手に入れられても、風の様子や通りの向こうの気配を感じとりにくい環境はきっと、わんこさんにとっては不自由そのものだったんだろうな、と思えた。

 

やっぱりわんこさんはお庭の犬。お庭にいてこそ、いきいきとしていられる子だったのだ。私もそれが一番わんこさんらしい生活の仕方だと思った。すばらしさも過酷さもどちらも含めて、自然のすべてをそっくりそのまま愛していたわんこさんだから、一日中ずっと室内飼いをするという選択肢は浮かばなかった。

わんこさんに尋ねることができてもきっと「外がいい」と言ったと思う。たとえ寿命が少しだけ削られると、あらかじめ知っていても。最近の飼育事情に逆らった昔ながらの生活が好みだった犬の中の犬、わんこさん。実は古風な頑固者だったのかもね。

 

彼女が今眠っているのは自然豊かな場所にある霊園で、室内の納骨堂の小さな棚に納まるよりも個別のお墓に閉じ込めるよりも喜ぶのはこっちだろうと、広場にある共同墓地に遺骨を納めた。自然の中で眠るというその選択を、わんこさんならきっと満足してくれているはずだと、私は思っている。

 

 

             
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