わんこさんは豆や芋といった食品が大好きです。さすが女の子、と言われますがそんなものでしょうか?
節分の時はそんな大好きな豆をわんこさんのいる勝手口には特にたくさんまいてあげていました。その豆を喜んで拾い、パクパク食べていたわんこさん。翌日の散歩の時リードを付け替えたとたん、つながれたままでは届かない位置に落ちていた豆に向かって一直線に進み、パクリと食べる。
「わんこさんきっと一晩中、『あの豆だけ届かない』ってずっと狙っていたんだろうね。」と家族で笑いあったのを思い出します。
散歩中も、よそのお宅の家の前に前夜にまかれた豆が落ちていると、目ざとく見つけて拾って食べていました。歩きながらでも、わんこさんは本当に上手に豆を見つけていました。
わんこさんが12歳になったこの年、勝手口にいつものようにたくさん豆をまくために、お面をかぶった鬼が外に出て、みんなではしゃぎながら豆をぶつけて大笑いしていた時。わんこさんはその騒ぎに参加せず、犬小屋にこもっていたのです。
鬼役の家族が犬小屋を覗き込んで声をかけた時には、明らかな嫌悪をあらわしました。小屋の奥に逃げるような態度をとります。毎年、豆の袋についているおまけのお面をかぶったりはしていたのですが、その年から急に、お面を嫌がり始めたのです。恐怖を感じているようでした。その年を境に、わんこさんはまかれた豆を拾わなくなりました。
朝、当然食べられてなくなっているだろうと思っていた豆がそのまま残っていたので、おかしいなと思いながらも拾ってわんこさんの鼻先に持って行ってみるとちゃんと食べます。
推測ですが、おそらく、顔を隠した変な格好をして、ゲラゲラ笑いながら食べ物を投げつけあっている豆まきの行為が、わんこさんにとっては奇行にしか思えなくなったようでした。
食べ物は投げつけるものでなく餌鉢に入れてもらうもの。顔…ことに目がわからなくなるお面なんて、常識では考えられないおかしな格好。いつの間にかわんこさんの考え方は、そんな風に固く保守的になってきていたのでしょう。
融通の利かない石頭。好奇心や柔軟性が失われ、不動の安定を求める。おばあちゃんらしい考え方の特徴が表れはじめた瞬間でした。
ゆっくりゆっくり、おばあちゃんになりつつある変化。今から考えれば老化現象だと理解できますが、当時の私たちはわんこさんがおばあちゃんになる日が来るなんて、思ってもいなくて。何も気に留めずにいました。普通の日のわんこさんは、いつも通りどこも変わらず、我が家の家庭犬として充分賢く過ごしていてくれましたから。
今年も、節分にはミニわんこさんに豆をお供えすることにしましょう。きちんとお皿に入れて。
