年越しの瞬間、私は冷静沈着なHちゃんと一緒に行列に並んでいました。近所のお寺では、除夜の鐘をつかせてもらうことができるんです。真冬の深夜はとっても寒いんだけど、今年Hちゃんは大切な試験を控えています。合格祈願と、試験までの期間のさまざまな誘惑の煩悩をぶっ飛ばしてしまえ、ということで、鐘を鳴らしてほしかった。Hちゃんの夢が叶いますように。そうして私も、いつかおはなし完結の日を迎えるという夢を実現させられますように。
徐々に進む人の列に逆らって人影が近づいてきました。
「大行列だなあ。」
のんきな声は獣医の先生です。今年もよろしく、などとあいさつをしたあと、すでに鐘をつき終わっていた先生は帰っていきました。よろしく、って言われてもわんこさんがいなくなった今、先生との接点はどこにもなくなってしまってるのにね。
先日お会いしてお礼をお伝えし、
「もしわんこさんが新しい子犬を呼んでくる日が来たら、またお世話になるかもしれないけれど、そんなこと今は全く考えられないので、今までどうもありがとうございました。」と最後のごあいさつをしたばかりです。
そういえば一昨年も年末にフラっと訪ねてきて、
「わんこさんにもし急変があったら、ためらわずすぐに連絡して。わんこさんのほかにもうひとり、急変したらちょっと厄介な子がいるから、ふたりだけは暮れも正月もなしでいつでも受付可能。」なんて言っていたっけ。
そのうちに列は鐘の真下に近づき。いよいよHちゃんの番。大きな音が響きました。願いは叶いそうだと思える、澄んだ音色。次は私。同じくらい大きな音が鳴ったように思えました。
最終的に頼れるのは、自分の努力かもしれないけれど、目に見えない力が存在するのなら、どうぞ力を貸してください。
願いの叶う一年になりますように。Hちゃんも、皆様も、そして私も。