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wii / La farine

どうにもならないのに

 昔、女の身体はどれもそう変わらないといった男がいた。名前はすっかり忘れているのに、あの発言はよく覚えている。ディディエはどうしてあの男がああいったのかがわかるような気がするときもあれば、まるで理解できない気持ちにもなる。今は目の前によしこがいて、彼女の身体を自分の素肌で感じるけれど、この感覚を離れているときにいつも思い出すかといえば、そんなことはない。思い出さないからといって、よしこの身体は他の女とほぼ同じだとは思わない。よしこという女はまたつかみどころがないから、離れているとこの女のことはよく忘れてしまうのだが、ひと度自分の目の前で裸にすると途端に、自分の愛撫を受けていたときのよしこの表情が鮮明に蘇り、それからしばらくの間はディディエのセックスはかたくなったままで、よしこには眠ることは許されない。ディディエとよしこは会話こそほとんどしないが、代わりにセックスをしないことはない。ディディエがよしこの下半身を抱きながら女の耳元で様々な様子の彼女自身を褒めると、よしこはくぐもった声でそれに答える。


 よしこは自分から服を脱ぎたがらないから、最初はディディエがよく脱がせていたのだが、次第にそれも面倒になった。「どうして自分から服を脱がないの?」とよしこに聞いてみると、「男が脱がすものではないのか?」と逆に質問された。ディディエにはよくわからなかった。よしことの間でベッドに行く合意が出来ていたのではないのだろうか。

「君は、僕とするのは本当は嫌なの?」

「そんなことはない」とすぐによしこは答える。

「ただ...」

一瞬そう言いよどんだ後、ディディエを見据えなおして、「女の私が自分から脱いでもいいのかどうかと思ったから」と続けた。ディディエは再び、よくわからなくなった。日本という国では、セックスするときに男がいつも女の服を脱がしてやらなくちゃ始まらないのだろうか。まゆみとのときはどうだっただろうかとディディエは思い出そうとするが、何だか少しおかしくなってきてしまった。

「服なんて、脱ぎたくなったら脱ぐもんだ。女の自分から脱いでもいいかなんて、男の俺にはわかんないね。それに何だっていつも男から脱がしてやんなくちゃいけないんだ」

 少し大きなディディエの声によしこは一瞬驚いた顔をしたが、すぐに台詞の意を理解すると、「それもそうかもしれない」と同意した。それからは、よしこは自分から服を脱ぐことが多くなった。自分の前でこれまでとは変わってあっさりと服を脱いでいくよしこを見ながら、この女は馬鹿なのか賢いのかよくわからないとディディエは思う。けれども、つまらないことをいわないだけ、よしこという女は重宝である。しかも、この女を抱いた後には驚くほどよく眠れる。よしこが自分の耳元で上げる声が多いほど、ディディエには快眠が訪れるのだ。


  つづく