寒さを感じた時に、よしこは自分が眠っていたのに気づいた。上半身には何もかかっておらず、下半身を少し毛布の中に入れていたが、毛布の大部分はディディエが占めていた。ディディエは一度眠ってしまうと、簡単には起きないことがあるが、毛布のヘリをつかんで寒いから自分の身体も毛布に入れてくれというと、いきなりよしこは二の腕をつかまれ、ディディエの胸元に身体を引き寄せられた。
毛布の下でディディエはよしこに背中を向かせ、背後から抱く形をとった。かけられた毛布が身体の線になじむ頃になって初めて、よしこは首筋に、ディディエの寝息がかかるのを感じた。それから少しして、「身体が冷たいね、僕の子猫ちゃんはどうしてこんなに身体が冷えているの?」といいながら、ディディエはよしこの身体の上半身や下半身を触り始める。ディディエの両手は無骨で、指が太く、長い。彼の両手はよしこの身体には十分に大きくて、肉付きのよい手のひらで肌を撫でられるのは、気持ちの良いマッサージのようである。けれども、臀部から両腿の間を触れられると、よしこはあられもない声を上げてしまう。ディディエは口にしているものに時に歯を立てるから、よしこはそれまですすり泣くような声を出していたかと思うと、いきなり「痛い」と大声を張上げてしまうこともある。よしこが文句をいったところで、ディディエがまた彼女の身体のどこにでも唇を寄せ舌でもってよしこの皮膚をゆっくりと繰り返し舐めていると、じきによしこは黙ってしまい、それから再びくぐもったような声を上げ始める。
ディディエにとってよしこは、楽な女だった。ある程度つきあが長くなってもディディエに電話を掛けてこようとしないし、自分が会いたい時には、必ず会える。よしこのアパルトマンには誰も訪ねてこないから、会えば必ず服を脱ぎ、肌を重ねる。あまり言葉を交わすことはないけれど、顔を合わせればまずこの女はディディエに笑顔を見せるから、不思議と、よしこから嫌われているとか一緒にいて居心地が悪い気分にならない。時折、よしこと一緒にいてリラックスしている自分を発見することがある。一緒にいる間、彼女はディディエの肩や腕を普段からよく擦っている。それが理由なのだろうか。彼女とのつきあいは最初からこんな調子だったわけじゃない。でも、一緒に時間を過ごす間に、よしこはディディエの身体に良く触れ、良く擦るようになってきた。よしこによく撫でられているとディディエは自分のこころがどこか落ち着くような気がし、ずいぶんと感情のコントロールを図ることができるようになったのを感じる。けれども、それを深く考えるのは今はやめておこうとディディエは思う。確か、こういう話はとっつきやすいようだけれど、簡単には答えが見つからなくて、例えカップルの間でも辟易としてしまいそうな話題なのだから、興味本位で感情という分野には立ち入らないほうが良い。そして、よしことの間にもめごとを持ち込むのだけは避けたいのだ。
ディディエはよしこの身体を自分に引き寄せると、唇にキスをした。唇の間から舌を滑り込ませ、よしこの背中をさすり腰元を撫でた。
つづく