放送作家の小野高義です

 

危険な暑さの中

きょうも各地で熱戦が繰り広げられた

高校野球の地方予選

 

中でも注目を集めたのが

強豪が居並ぶ

神奈川県の決勝

横浜ー慶応の

名門対決

 

横浜高校が2点をリードして迎えた9回表

慶応渡辺選手が起死回生のスリーランホームラン

 

春に続いて

慶応が甲子園行きを決めました

一年夏から甲子園を経験し

これが最後の夏のエース杉山くんが

泣き崩れていました

 

一方の慶応

いろんな意味で注目を集める清原選手

この大会は先発を外れることが多く

この試合でも代打での登場

ではありましたが

 

中継でやたらと抜かれていたのは

特殊な生い立ち故の宿命でもあって

仕方ないかなあ

と思いつつ

 

家族はそういう感じで

なおかつ留年までしてしまったことも世に知られて

それでも

中継で見せる笑顔は

底抜けに明るく弾けていて

 

もちろん天性の性格ということもあるのでしょうが

清原君が

この

慶応高校という高校で

心から野球を楽しんでいることが伝わって

 

個人的にはなんかすごくホッとします

  ◇

 

同じ日

埼玉県の準決勝では

 

4年ぶりの甲子園を目指す

花咲徳栄高校が

秋と春に埼玉王者となり初の甲子園を目指す昌平高校を

壮絶な接戦の末に倒し

決勝にコマを進めました

 

この花咲徳栄高校で4番を打つ

3年生の小野勝利くんは

1年の春に背番号20ながらホームランを放った

スーパー1年生

その時在籍していたのは横浜高校でした

 

そう

横浜高校を退学して

花咲徳栄に転校し

この夏甲子園の切符をつかもうとしています

 

  ◇

 

今年の夏

各地で

こうした選手の活躍が目立っています

 

熊本県大会を制して甲子園出場を決めた

東海大熊本星翔高校の4番百崎蒼生くんは

一年の秋から東海大相模で3番ショートで活躍していた選手ですが

門馬監督の退任と、部の雰囲気になじめず退学

 

野球をやめようとまで考え地元に帰った時

その後東海大熊本星翔高校の監督に声をかけられ

再び野球を始め

この夏甲子園への切符をつかみ取りました

 

  ◇

 

今年、私学三強と言われる

帝京、二松学舎大付属、関東一高が敗れる波乱の中

26年ぶりの甲子園まで

あと二つのベスト4までコマを進めた

岩倉高校

 

その快進撃を牽引するのが

主将でエースで4番の大野巧成投手

実は大野君も

創価高校に入学したものの退部

野球をやめようと思っていたところ

周囲の説得もあり

昨年春に転入した岩倉高校で野球を続けることに

 

そして今

チームの大黒柱として

26年ぶりの甲子園に導こうとしています

 

  ◇

 

中学野球の有力選手が

高校でドロップアウトしてしまうのは

決して珍しいことではありません

 

ケガであったり

指導者の方針が思っていたのと違っていた

であったり

部の雰囲気や人間関係に問題があったり…

 

その理由は様々ですが

 

まだ社会のなんたるかを知らない未熟な高校生が

壁にぶつかって挫折することは

野球に限らず

むしろ当たり前のことです

 

なので

 

今年のようなケースが

もっともっと毎年起きても良さそうなものですが

 

転校して活躍する選手が稀なのは

 

高校野球の規約で

 

「転校したら一年間公式戦に出られない」

 

というルールが大きいと思います

 

  ◇

 

もちろん

こうしたルールができた事情はよくわかります

 

昭和…それも戦前から

高校野球は

あらゆるスポーツの中でも

圧倒的な人気と話題を呼ぶ

国民的イベントで

 

ルールが整備されていない頃は

高校野球そのものが商業化に傾いて

高校野球という名の興行で大人がうごめき巨額の金が動く

ということがありました

 

選手の退部や転入を野放しにすることで

 

有力校による選手の引き抜き合戦も

起こりかねません

 

引き抜くとまではいかなくても

 

中学野球選手をスカウトするのと同じように

他校の選手を勧誘して転入させようとする

という動きが出てこないとは限りません

 

そうした動きの抑止力となっていることは事実ですが

 

逆に

高校選びでしくじると

選手の才能の芽はそこで摘まれてしまい

 

セカンドチャンスは限りなく狭く小さい可能性である

 

という現在の状況にもつながってくるわけです

 

  ◇

 

よくよく考えてみると

おかしな話

ではあります

 

進学校に通ったけれど

なんか学校息苦しいし

いじめられるから転校した

 

っていう生徒が

一年間東大受けられません

 

なんてことはないわけです

 

でも

野球部でいろいろあって退部する

というのは

 

そういう状況と何ら変わりません

 

  ◇

 

時代は変わって

 

野球人口の減少が叫ばれる中

 

セカンドチャンスのない野球部でいいのかな?

 

と個人的には思います

 

 

引き抜きが行われることになり

それが倫理的にどうなのか

という意見もあるでしょうが

 

「引き抜き」

という言い方が良くないだけで

 

やめる理由もないのに別の高校に連れて行くのは引き抜きだけど

そうでなくて

自分の意志で今の野球部を辞めたい

というのは

ただの意志の尊重で

 

そうした選手を受け入れるのは

むしろ

「手を差し伸べる」

ということでもあります

 

世の中には

試してみてやっぱり違うと思ったら返品できるクーリングオフがまかり通っているのに

 

全く知らない未知の世界に飛び込んで

飛び込んだら最後

良いも悪いも最後までやらなければ後はない

という宿命を

まだ未熟な高校生に背負わすのは酷だし

それ自体が何よりもブラックではないか

という気もします

 

  ◇

 

確かにそれでも悪質なスカウティングがまかり通る可能性がないとは言えない

というのも事実ですが

 

それなら

 

たとえば

特待生で選手を取っている学校は受け入れることができない

とか

県外選手の人数に応じて受け入れ人数枠を設ける

とか

特待生も県外選手もいる、というならこれまで通り一年間試合には出れないけど

それでもその学校に行きたいなら一年我慢する、という選択肢も与える

とか

 

柔軟なルール作りって

他にあるような気がするんですよね

 

  ◇

 

そもそも

他の学校ではなく

この学校で野球をやっていたい!

と思える野球部であれば

辞めることもないわけで

 

一年出場できないというルールを撤廃することで

 

多くの高校が

「ずっと野球を続けたくなる」良い野球部

であろうとする方向に向かって

 

巡り巡って

 

やっぱり野球手楽しい

という空気が醸され

 

野球の人口がまた増えてくる

 

そんな風になるんじゃないかな

 

とぼくは思っているのですが

 

みなさんいかがでしょう

 

というわけできょうはこのへんで

小野高義でした