放送作家の小野高義です

 
今日の選抜もまたまた盛り上がってますね!
衝撃の3日目、といったところでしょうか。
 
第一試合第二試合
続けて延長戦!
どの投手も素晴らしかったですが
特に石岡一の岩本投手
素晴らしいピッチャーですね!
ストレートの伸び、威力は
眼を見張るものがありました。
 
いやあ、ほれぼれするようなフォームです
東北の名門強打のモリフを快速球で抑えていきました。
 
…なだけに
9回2点差
ツーアウトあと一球まで来たのに…
しかも二打席とも…
なのに同点
モリフもさすが東北の名門…
とはいえ
最後の最後、討ち取ったピッチャーゴロを悪送球…
ある意味衝撃、ともいえる展開でした。
 
とはいえ岩本くん
将来が楽しみな投手であることはまちがいありません。
強豪ひしめく茨城県ですが
是非夏の活躍も期待したいものです!
 
そしてやはり
衝撃といえば第三試合の山梨学院ですね。
 
札幌第一、決して弱いチームではありません。
近年レベルの高い北海道地区大会で決勝まで進んだ実力校です。
それでも山梨学院の容赦ない攻撃…。
 
特に2番と3番
2番の菅野くんは5打席連続を含む7打数5安打にホームラン
3番野村くん
山梨のデスパイネと呼ばれる前評判は伊達じゃありませんでした
 
この大舞台で
どでかい2ホームラン
 
菅野くんも野村くんも
捕手側のいわゆるガイドハンドの脇がしまり、キレイなインサイドアウトで
軸の速い回転を遠心力に変える見事なスイングでした。
野村くんは次の試合も大いにホームランが期待できそうな雰囲気を感じました。
 
今大会は見応えある投手戦が多く、投高打低の大会になるのかと見ていましたが
まさかまさかの大量得点。
まさに衝撃でした。
 
今日で三日終わりましたが
それにしても
好投手が目立ちますね。
ぼくたちが高校の時は
選抜で140以上投げてるとすげえとなりましたが
今は140出さないとエースになれないような時代です。
球種にしても
高校生がシュートやカットボールやサークルチェンジを平気で投げてきます。
相対的にレベルが上がっているのは間違いないです。
 
でも
今、メジャーリーグでは
ピッチャーのレベルが上がるところまで上がりきったが故の問題に突き当たっています。
 
ご存知の通り、マウンドからホームベースまでの距離は
世界中どこでも18.44メートル。
この距離に決まったのは
1893年
つまり120年以上、変わることのない距離なのです。
この18.44メートルという微妙にして絶妙な距離が
剛球投手とそうでない投手を冷酷に差別し
この距離において打者を制圧できる力を持つピッチャーに
大投手という名声が与えられました。
遠すぎず近すぎず
絶妙な塩梅の距離だからこそ
長きにわたってこの距離が守られてきたわけですが
メジャーリーグでは
この距離をより遠くしようというルール改正案が検討されています。
 
理由は
平たく言うと、ピッチャーの球が速くなりすぎたからです。
 
メジャーの平均球速は150㎞以上、しかもツーシームで揺れてくるから、まあ、打てません。
WBCでも150㎞以上のツーシームやカットボールを当たり前のように投げ込んでましたよね。
そら滅多なことでは打てません。
 
実はフライボール革命というのは
こんな風に劇的に上がった投手たちから得点を取るために一番手っ取り早い方法をデータで弾き出した結果
とも言われています。
確かに計算上、「確率」でいえばゴロよりフライの方がヒットになる確率は高くなります。
しかし、全体の母数で言えば
ゴロの方が圧倒的に多いため
データ上、ヒットの「数」が多いのはゴロ、ということになります。
しかしながら
レベルの上がりきった投手から得点するために、ヒットを連続して積み重ねるのは難しい。
ならば長打を狙って最初からフライを打て
という一か八かの側面もあると言われています。
また、セイバーメトリクスによるシフトによってゴロがヒットになりにくくなったことも、
フライボール革命に拍車をかけた要因の一つです。
 
事実、
本塁打数は増えたものの三振の数も激増し
ここ数年メジャーのワースト記録を更新し続けています。
野球がどんどん大味になり
観客動員数や人気に陰りが見え始めたことで
打者有利のスリリングな野球を取り戻すため
シフトの禁止や
マウンドの距離の改定などが検討されている、というわけです。
 
そういえばイチロー選手は引退会見で言ってました。
「今、頭を使わなくてもできてしまう野球になりつつある」
と危機感をのぞかせるコメントです。
「本来、野球は頭を使わなきゃいけないスポーツ、そうでなくなってきてるのがどうも気持ち悪くて…その危機感を持ってる人は結構いると思うんですよね」
と。
イチロー選手がアメリカに渡ったのは、パワー野球がメジャーに革命を起こしていた頃でした。
マグワイヤやサミーソーサ、バリーボンズなどが
シーズン60本70本のホームラン争いを繰り広げていたものの
その代償としてメジャーリーガーたちに蔓延した薬物汚染。
「まずパワーありき、パワーが全てを制する、そういう野球回は退化している」
とイチローは
2005年のインタビューで言っていました。
(というのをTBSのS1で見ました)
そして、そんなパワーありきの当時のメジャーに風穴をあけるかのように
シーズン最多安打記録など、スピーディで頭脳的な野球を体現しました。
WBC二連覇も、今思えば
そんなイチローの「頭を使う野球」「力ありきでない野球」
の正しさを証明するための戦いだったのではないでしょうか。
そして
18.44メートルという数々のドラマを生み、歴史を紡いできたその距離を変える
そのことこそが
イチローのいう「頭を使わない、気持ち悪い野球への危機感」の表れなのかもしれません。
 
ところで、18.44メートルという絶妙にして微妙な数字、なんで生まれたかご存知でしょうか。
 
話は今から120年〜130年ほど前にさかのぼります。
当時、ニューヨークジャイアンツに
アモス・ラジーという
豪速球投手がいました。
当時はマウンドからホームベースまで50フィート
つまり14メートルほどでした。
しかしアモスラジー投手はとにかく球が速かった。
あまりにも速すぎて、相手の打者が苦情が出ました。
それでも豪速球を投げ続けていると
ラジー選手が相手打者の頭にボールをぶつけてしまい、その選手は、4日間も意識不明の状態となってしまいました。
これはいけないということで
マウンドとホームベースの距離を10フィート下げることになったそうです。
 
でこの距離がいい塩梅だったので
ルール改正してこの距離にしちゃいましょう
とルールブックを改定したのですが
出来上がったルールブックには
なぜか
「60.6フィート」
え?
実は原稿には「60.0フィート」と書かれていたのですが
書いた人の字が汚すぎて
製本する人が
「60.6フィート」と読んでしまい
そのまま製本しちゃった。
で、6インチくらいまあいいか
ということになってそのまま採用。
この「60.6フィート」こそが
今の18.44メートル
というわけです。
 
以来120年以上変わらずに数々ドラマを作り出してきたこの距離が変わってしまうのは
なんだか切ない気もしつつ
そんな風にして生まれたものがいずれ変化していくのも仕方のない時代の流れなのかな
という思いもあり…
 
なんか複雑ですね。
 
という豆知識もちょくちょくひけらかしていきたいこのブログ
 
とりあえずきょうはこのへんで
小野高義でした