湘南ビーチFM『Hits Around The Clock』2023/06/18

2023年6月選曲「梅雨時はスッキリと

お聞きくださった皆様、ありがとうございました!

 

・No One’s Gonna Love You  / S.O,S. Band 1984

 いきなり自分でも意外なところから入りました。ロック方面に8割9割傾倒していた80年代のワタシが当時かなりしっかり聴き込んでいたのがS.O.S.Band。ポリシンセの不思議な空間的広がり、多分当時はコーラス系とリヴァーブ系しかなかったのにこの深宇宙感、これはジャケットの印象もかなり大きかったと思います。ソーラーサウンドって呼ばれてましたね。以来、ソーラーと云う言葉に何となくグッとくるようになりました。印象操作、簡単ですね。ホント気をつけます。何のこっちゃ。あとワタシはシンセベースダイスキデス。

 

・With A Little Help From My Friends  / Sergio Mendes & Brazil ‘66 1966

 星の数ほどあるビートルズカヴァーの中でもセルメンのヤツはかなり気が利いていてイイと思うのです。Aメロの4小節目(と8小節目)のトニックのコードがmaj7になっているのがとても美味しいです。すぐに出てくるBメロの2小節目のトニックがトライアドなのとなかなかステキなコントラストであります。

 

・Day Tripper  / Sergio Mendes & Brazil ‘66 1966

 こちらはやなりメインリフをピアノの左手が良い湯加減で奏でているのがスバラシイデス。ビートルズはベサメムーチョなんてカヴァーしていたのでどこかにきっとラテンサウンドの影響があったに違いないのですが、このリフなんてこっちのアレンジを想定して作ったなんて云われてもああそうですかと納得するしかありません。ちょっとしたコードの差(アレンジ)も聴き所であります。

 

・Slow Ride / Foghat 1975

 これを聴いて暑苦しいと思われた方、申し訳ありません。ワタシにとってはハイ&ドライで爽快納涼サウンドなのであります。番組中でも申し上げましたがプロデューサー兼ベーシストのNick Jamesonのプレイがスラップ(チョッパーと云ってしまう)ありファンキーなフレーズありでともすれば単調になりがちなフォガットの曲を見事にカラフルでスパイシーに仕上げております。他にもレコーディングエフェクトも多用して唯一無二のサウンドにしているのがスゴイ。ルースでドライヴィングなギターとタイトなベースのフレーズのギャップがクールでもありユーモラスでもあり笑いあり涙ありで(ないか)とてもスキなのです。ドライな音空間もスッキリで梅雨時にピッタリだと思うのですが、ご賛同戴けなくても当然かと思いますのでお気遣いなくお願い致します。

 

・Goodbye Pork Pie Hat / Jeff Beck 1976

 ワイヤードのA面3曲目。これを聴き続けてもうすぐ50年になるのかうわぁー。シンプルなようでいてこのレコーディングにはジェフは二人います。どちらかがダビングでどっちを先に録ったのかしらん。今聴いてもあまりの名人芸ぶりに弾いた順序なんてどうでも良いけどどうでも良くないの。何もない空間から何を引っ張り出して来たのか。それが天の才で天才と云うことなのかこれでいいのだ。いやそうじゃなくてよく聞けばアンプのノイズもスイッチングのノイズとかもみんな余すところなく収録されていて音楽空間の一部になっていてジョージ・マーティンもやはり天才であると納得し、ワタシとしてはマックス・ミドルトンも天才だと思うのですよ天才過ぎてバカ田大学のように思えることもあるのだ。結果的に涼しいです。とても涼しいサウンド。ワタシにとってはこれだけ聴いてきても何度かに一度は総毛立つようなお化け屋敷的納涼感も御座います。ああこわ。

 

・Blue WInd / Jeff Beck 1976

 ほいでもってワイヤードのB面1曲目。これがまた多勢に無勢と云うか、ヤン・ハマー数名(ドラムとシンセ多数)とジェフ一人(多分これは一人だと思うのだけど、いや二人いる!二人だ!)の超絶技巧掛け合い漫才が楽しめます。ヤン・ハマー先生のとんとことんとこすっとこどっこいのドラムとヤン・ハマー先生のエグ味たっぷりのぐにょんぐにょんシンセベースとヤン・ハマー先生の爽快泡系のシンセとこれまたエグいヤン・ハマー先生独壇場のシンセリードがこれが全部束になってかかってもジェフの一瞬のコキッとしたピッキングの妙技に太刀打ちできずに地団駄を踏んでいるようなこれは歌舞伎とか狂言の舞台のような趣の深さを感じる次第で御座います。ややこしやややこしや。

 

・Backs Turned Looking Down The Path / Warren Zevon 1976

 サウンドはスッキリと爽快ですが、ファーストアルバムからこの虚無感と云うか諦観とと云うかスゴイ境地にいるのですよウォーレン・ジヴォン。コーラスで一瞬だけジャクソン・ブラウンの声が聞こえます。こうした気持ちは全く関係ない本を読んで感じたものリンクさせるしかないのだけれど、そうした本も言葉も文化的背景も少なくなってきてしまって、ああこれらはみんななくなってしまうのだなと最近深く思うようになって参りました。諦めと感謝か。あまりそっちの涼しさの方にはまだ行かないようにしておきます。

 

・Hasten Down The Wind / Warren Zevon 1976

 こちらはリンダ・ロンシュタットのカヴァーでもお馴染みの曲。男と女の歌。こんなに簡単ではないと思いつつ、根っこは同じ人間なのでそんなに変わるはずもなく、どうにでもなるしどうにもならない。だからこの曲も一つの正解で、正解は一つではないことも思い知る。熱くなるのも、クールでいるのも自分次第。誰がそんなことを俺に教えたんだ。教わらなくても知っていたのか。俺は何なのだ。ヘイユー。ホワッチュアネーム。とウォーレン・ジヴォンから左とん平へと繋がり、最終的に野坂昭如に辿り着くのではないかと思います。それか深沢七郎か、翔んで寺内タケシなのか。ああ涼しい。

 

・Sphere of Innocence / Allan Holdsworth 1992

 エンディング曲です。涼しすぎてヒヤッとします。

 

お楽しみ戴けましたでしょうか。

次回は7月3週目の日曜日、2023年7月16日がワタシの出番です。

また色々と取り揃えてお届けしますのでよろしくどうぞ!