時の声
The Voices of Time and Other Stories

J・G・バラード著
吉田誠一訳


随分と昔から何度も何度も読み直している短編集です。
最初に読んだのは10代だったか20代だったか。
発表は1962年、日本語訳初版は1969年とSFのクラシック。
表題作は何とも救いようのないこの世の終わり方面のお話。
その話にはワタシの心の奥底に呼応する部分があるのです。
話自体と云うよりもトーン。
外国観。
隙間のたっぷりとある未来のビジョン。
それこそ昔の本牧にあった米軍住宅の緑の芝生に映えるやたらに整った建物の感じ。
沖縄にもいっぱいまだ残っている米軍基地の殺風景さ。
白くて四角い建物。
冷たく空虚なイメージ。
ワタシにとってリアルでジリジリと心を焼かれる外国観。
それがこの「時の声」に何故か感じられるのです。
読み直す度に感じる何か。
映画を見たと云うよりも小旅行をしてきたような感覚。
ゆっくりと浸りました。
自分がこの世界の中のちっぽけな存在であること。
それが味わえれば充分です。
またいつか、時の声を聞きに旅をしたいと思います。