まだプロテストを受けていた頃、
つまり下積み時代。
御用達だったゴルフ場の最寄のセブンイレブンのオーナーが
元野球選手で、応援するからがんばれ!と応援してくれていた。
事故をもらって選手を諦めてから、
例の大変な目に遭ってしまって
お金を作るのに
深夜と早朝のバイトを入れさせてもらうことにした時期がある。
これが、今思うと
世の中の人の動きやコンビニの凄さを知ったり
大変よい修行になった話はおいておいて。
ある時、シフトの時間にバックヤードに行くと
いつもは穏やかなオーナーとマネージャーが何やら憤慨していた。
冬も終わりそうな春の兆しを感じる寒さも和らいだ時期の夜のことだった。
常連的に万引きをされているようなのだけど
知らないか?とのこと。
う〜む。心当たりはない。
オーナーたちは、
はじめのうちは、おかしいと思っていたけれど
まぁ、数百円なのでと見送っていたらしい。
しかし、被害総額が万を超えどんどん
上がってきたので調査を行った。
この時のプロファイリングはこうだった。
どうやら同じ人物の可能性が高い。
入り口からすぐの栄養ドリンクが狙われていて
はじめは、安価なものだったけれど近頃は、2000円クラスの
高価なものを盗んでいる。
こちらが、気がつかないと思っているのか
犯行時間もほぼ一定の朝の時間帯と夕方の時間帯の2パターンの模様。
おそらく本部に相談してこなったのだと思うけれど
しっかりとした対策が行われ、
犯人を捕まえるミッションが下された。
この時、取られていたのは、「行動科学分析」を用いいた
犯人を捕まえる方法と万引き防止策だった。
つまり今の私の専門分野だ。
脳や人の心理を理解していると問題の解決はしやすい。
対策を講じて、すぐ
その日のうちに犯人に目星がつけられた。
シフトの時間にバックヤードに行くと
今度は、オーナーが頭を抱えている。
「どうかしましたか?」私
「それが、どうやらこいつが犯人らしい。」オーナー
モニターに映っていたのは、
おとなしそうな近所の大学生と思われる女の子だった。
意外な犯人だったことと
罪は罪だけれど色々とご苦労をされてきたオーナーは、
「 必ず捕まえなければならないけど
この子は、学校を退学や停学になるだろうな…。
就職にも響くかもしれない…。」という。
とりあえず、何が何でも捕まえて防止せねばならないとのことで
現行犯で捕まえるミッションが下された。
私は、シフトに入る日は、心の中で(頼むから、今日は来ないでね。)と願っていた。
それから、2、3日後だったと思う。
無事に、少女は捕まった。
私が、見たときには
少女は、泣いた後のような顔をしていた。
母親はというと無関心そうな表情だったのを覚えている。
優しい(甘い?)オーナーは、親御さんを呼び
被害総額を本人に支払わせるように言ったようだった。
それで、オーナーは、学校への連絡はしなかったと聞いた。
この後、この万引き被害は収まり一件落着となった。
しかし、春になると時折、思い出すこの事件。
あの子も返済を機に、
そのセブンイレブンに足を踏み入れることはなかっただろう。
しかし、彼女自身の犯行に至った問題は、解決されたのだろうか?
最後までお付合い有難うございました。
深謝
松澤