ボローニャ復元映画祭2日目*ルイーズ・ブルックスとGreat company | 人間の大野裕之

人間の大野裕之

映画『ミュジコフィリア』『葬式の名人』『太秦ライムライト』脚本・プロデューサー
『チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦』岩波書店 サントリー学芸賞受賞
日本チャップリン協会会長/劇団とっても便利

【ボローニャ復元映画祭2日目*ルイーズ・ブルックスとGreat company】
まずは、日本での告知です。前回Part1に引き続いて、本日から5日連続で、夕刊フジにて日本チャップリン協会・大野裕之が短期集中連載いたします!タイトルは、「没後40年 意外と知らないチャップリン秘話 Part2」1000字×5回。ぜひご覧ください。

さて、ボローニャの二日目。去年も泊まったゲストハウス(日本でいう民泊?)はとても安く快適だが、今年はなぜかお湯が出ない。まあ、猛暑なので水浴びもすっきりして良い。朝から晩まで映画をみているだけなので、宿ではネットさえ使えればそれでいい。
朝9時からの上映はみたいのがなかったのでパス。
11時からアルレッキーノ劇場で、OUT OF THE PAST(1947年)。ジャック・トゥルヌール監督、ロバート・ミッチャム主演!面白くないわけがない。ミッチャムが過去に探偵をしていたことを今の恋人に話し始める——カーク・ダグラスからの依頼で、お金を持ち逃げしたダグラスの恋人キャシーの調査を頼まれるが、ミッチャムはキャシーと恋仲に。その後、ダグラスはミッチャムを殺そうとするが、キャシーがダグラスを撃ち殺し、ミッチャムに自分と逃げようという。ミッチャムは裏切って警察に通報するが、二人とも撃ち殺される。残されたミッチャムの今の恋人は、すべてを悟って、一人消えていく、というもの。
会場でフーマンと会ってランチを食べようということになった。日曜なので、チネテカ近くのPirateというレストランしか空いていないので、そこに行くと、デイヴィッドもウリもジェイもみんないる。アメリカのチャップリン研究の大家フランク・シャイド(ぼくはチャップリンのNGフィルムをぜんぶみた3人のうちの一人だが、フランクもその一人)、チャップリンの兄シドニーの詳細な伝記を出したリサ・スタインもいた。
14時30分からは、「マストロヤンニ会場」で1917年の『カリギュラ』修復版。大オペラみたいな演技で、かつ皇帝役の人が顔も面白く、死ぬ時の演技が忠臣蔵の6段目の桜丸や伽羅先代萩の仁木弾正よりも長く、死んだと思ったらまた立ち上がって倒れこむと言った具合で、爆笑してしまった。
16時30分からは、今日のお目当て=エルンスト・ルビッチュ監督のTROUBLE IN PARADISE(『極楽特急』1932年)の修復版。ミリアム・ホプキンスとハーバート・マーシャルの詐欺師コンビが、女社長ケイ・フランシスを騙そうとするが、マーシャルとフランシスが恋仲になってしまうコメディ。『極楽特急』にはチャップリンの『巴里の女性』からの影響が色濃く、あちこちのシーンに見られる。上映後は、「あのシーンも『巴里の女性』だった!」とみんなでわいわい言いながら。いわゆる「ルビッチ・タッチ」はチャップリンの『巴里の女性』から得たものであることは広く知られているのだが、なぜかあまり日本では言われない。日本では、私たちの上の世代で「革新的な映画作家としてのチャップリン」を無視しようとしていた批評家がいたことの影響か。
『極楽特急』の上映が大幅に遅れたので、次の18時15分からの上映会場に走る。ヴィゴの『新学期 操行ゼロ』修復版かルイーズ・ブルックス主演のPRIX DE BEAUTEか。皆のお目当てはPRIX DE BEAUTE。やはり超満員で床に座って見る。
PRIX DE BEAUTEは、トーキーとサイレントと両方あるが、今回はサイレント版の修復。
衝撃の一言。これはすごかった。
ルイーズ・ブルックスがミス・ヨーロッパのコンテストに応募して優勝するが、嫉妬深い恋人が芸能活動を許さない。家に連れてかえるが、しがない印刷工の恋人として毎日が楽しくない。デートで下品な遊園地に連れていかれたことがきっかけで、家を出て、映画女優になる。が、男は映画会社まで追ってきて、試写室でスクリーンテストを上映している最中に、ブルックスを撃ち殺す。生き絶えるブルックス、スクリーンには笑顔で歌っている彼女の姿。
脚本はルネ・クレール。撮影:ルドルフ・マテ。
・・もう、圧倒されました。ぼくは、いま作業中で、現時点で一応プロデューサーさんからOKの出ている脚本をやり直したくなりましたよ。
冒頭で、恋人とのび太くんみたいな男友達と三人で浜辺で遊ぶブルックスから、すでにやられました。美しいとか魅力的とか、そんなのではなくて、本当にルイーズ・ブルックスが眩しいのです。憧れてしまうのです。ああ、これが映画なのか・・(みんなでふざけあってるうちに、のび太くんがブルックスに海に投げられるのですが、それにしても、どんな善行を積めば水着のルイーズ・ブルックスに海に放り投げてもらえるのでしょうか。)

上映が終わったのは20時過ぎ。チネテカの中庭でばったり会ったリーに感動を伝えた。今晩は残りは「ジョニー・ギター」とかで、何度も見てるし、もうええわ。しかし、あまり人にあわないなあ。パレス・ホテルの横のレストランにいったら皆いるだろうけど、わざわざ行ったら寂しがりと思われるし。まあ、一人で宿に帰って寝よう。
と、宿に戻ったら、フーマンからメッセージ。「パレス・ホテルの横のレストランに皆で行くから来るか?」ええ、いきますとも。
というわけで、デイヴィッド、フーマン、フランク、リサとご飯。最近亡くなったフィルム修復家のデイヴィッド・シェパードを偲ぶ会話。あとはそれぞれ今研究していることの意見交換。私も次の本の話をすると、すぐに皆から意見と情報をもらえる。楽しい映画談義。3時間ぐらいご飯を食べたあと、フランクが「このメンバーで食事ができてよかった」というと、リサが一言「そう。Great Companyだね」と。
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