4月の文楽 | 人間の大野裕之

人間の大野裕之

映画『ミュジコフィリア』『葬式の名人』『太秦ライムライト』脚本・プロデューサー
『チャップリンとヒトラー メディアとイメージの世界大戦』岩波書店 サントリー学芸賞受賞
日本チャップリン協会会長/劇団とっても便利

書くのが遅くなりましたが、4月国立文楽劇場も堪能しました。
一部が「加賀見山旧錦絵(かがみやま・こきょうのにしきえ)」
お家騒動ものです。見所は長局の段で、局岩藤の悪事を暴こうとして果たせず自害する尾上と、その部下のお初のやりとり。尾上を源大夫師匠、お初を千歳大夫師匠、三味線は鶴澤藤蔵師匠。尾上が死んでからの千歳大夫師匠の大熱演は格別なもので、涙がでてきました。

二部が「祇園祭礼信仰記」と「桂川連理柵(かつらがわれんりのしがらみ)」
「祇園祭礼信仰記」の大膳は玉女師匠、雪姫を初役で豊松清十郎師匠。清十郎師匠は時折蓑助師匠を彷彿とさせる色気。
 さてさて、「桂川連理柵」。「帯屋の段」嶋大夫師匠、切は住大夫師匠。14歳の女と浮気して妊娠させたしょうもない男の話でも、お二人が語れば、なんともいえぬ慈愛がにじみ出る、その芸の秘密が知りたい。住大夫師匠と錦糸師匠のゴールデンコンビはまさに絶品。そして我慢の女房のお絹を演じる文雀師匠の気高さ、どうしようもない夫長右衛門を熱演する勘十郎師匠・・やはり吉田蓑助師匠の遣うお半の、あの色気・・それにしても、14歳の女という設定であのエロさはない!(笑)見ほれておりました。

終演後、楽屋お見舞。勘十郎師匠いわく「あんなどうしようもない男を、どないやって演じるか日々研究してるんですがね・・」いやあ、でも、あのとんでもない男の話でも、人情と慈愛の話になるというのが名人のすごいところ。
4月もええもんを見せていただきました。

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気がつけば、5月も半ば。
もうすぐ告知のさるものの作業で、延々と台本を書いております。あと少し・・
また、別の本を書いております。
そして、先週はさる映像の仕事を終えて、東京で打ち合わせをこなし、本日はまたいまから原稿に向かいます。
おかげさまで過去最高レベルで忙しくさせていただいております。
一つ一ついただいたお仕事をいいものにして、皆様にお届けしたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。