一般的には知られていないでしょうが、映画ファンの間で評判になっている映画「ギルティ」を観賞しました。
「ギルティ」はデンマーク映画で、日本でデンマーク映画が公開されることは珍しいでしょう。
アカデミー外国語映画賞で最終選考9作品に残り、ハリウッドリメイクも決定しているという、評価が高い作品です。
映画の舞台は、日本でいうところの110番、緊急通報室で、そこからカメラは外に出ず、声や音だけでしか状況が描かれません。
見る側に想像力が必要とされます。そこについていけない人もいるでしょうし、会話や音だけでここまで臨場感あふれる状況が描かれるのかと感嘆する人もいるでしょう。私は後者でした。
主人公のアスガーは、緊急通報室での勤務を惰性で行っていましたが、拉致被害者からの通報を受け、何とか被害者を助け出そうと奮闘しますが、事態は思わぬ展開に転んでいき、最後は予想もつかない着地を迎えます。
この映画はスリラー・サスペンスとしても面白く、終始ハラハラドキドキさせられます。それだけではなく、人間の偏見、差別といったものも描かれており、人間ドラマとしても秀逸です。
人間は思い込みによる偏見、差別というものが根強くあります。そのことを「ギルティ」は浮き彫りにします。
主人公のアスガーは、電話だけのやりとりを様々な人達と繰り返していき、事態の解決を図ろうとしますが、先入観が次第に覆され、思いも書けない方向に事態は展開していきます。
そして見ている私達も、アスガーと共に先入観が覆されていき、いかに偏見を持ってものごとを見ていたかに気づかされます。
カメラはほとんどアスガーしか映しておらず、映画の観賞者もアスガーといやがおうなく一体化していき、先入観を壊され、偏見に気づかされます。このあたりは非常にうまいです。
一体この事態はどう収束されていくのか?というところにまで行ってしまいますが、ラストでアスガーは通報者の女性に語りかけます。
その語りかけが、嘘も飾りもない、あるがままの自分をむきだしにして、真に相手のことを思ってのものであり、それに私は魂が振るわされました。
通常ならとても言えないような自分の罪を、全く隠すことなく相手に語りかけ、それが通報者であるイーベンに届き、救いがもたらされます。
ただしその救いは「ああこれにて一件落着。良かった良かった」と単純に言えるものではなく、苦味も込められた救いです。単に「ああよかったよかった」で終わらせることがないのがよりリアルだし、深みがあります。
問題点もなくはないですが、それもあまり気にならないほどの秀逸な出来栄えで、ヒット作以外のものも見るような映画ファンには是非見てもらいたいです。