夏の暑い日だった。乗用車の後部座席に乗っていた。会社の事務の人が運転して、社長は助手席にのって移動した。

社長は市場で働いていて、スイカとかを卸してくる親戚に用があってきたようだった。

話は社長と事務員がすることで、ぼくはクルマの中でクルマの番をしていればいいようだった。クルマの中は冷房が効いていた。30分ぐらい、そのクルマの中で待っていただろうか。二人は帰ってきて、会社にもどることになった。

「千秋公園のお堀に人が落とされたのんだと。だけど、落とされた奴は落とした奴を警察に訴えないことにしたと。その落とされた奴は人を殺した奴なんだと。それで落とした奴も人を殺した奴で、恐ろしい奴なんだと」

それは、ぼくと関係ないと思っていたが25年後ぐらい後にネット上で関係してきたらしい。

山の中。ぼくは昔の夢を見ていた。夢の中でまだ、ぼくは赤ちゃんだった。赤ちゃんを寝させるカゴに入れられていた。まだ、立つこともできない頃のことで1歳か2歳のころだろう。その日は母の実家の町は祭りの日だった。それで、ぼくは母の実家に連れて来られていた。

その赤ちゃんだったぼくの頬に、よし子おばさんがキスをした。ぼくは、その頬を手でぬぐった。

 

ーあなたは、わたしを傷つけた。

ー私のキスを嫌がった。

ー私はキタナイの?

 

はっと、目がさめた。山の中にいる。

そうだ、よし子おばさんを下ろさないと。

ぼくは木の枝にぶら下がっているはずのよし子おばさんをさがした。ぼくを呼ぶ声が聞こえる。

誰かが山の中を歩いてくる。よし子おばさんはまだ、首をつっていないんだ。止めないと。

たしかにぼくを誰かが呼んでいる。近づいてきているのは、よし子おばさんか?

「よし子、おばさん」。声をかけてから、相手が男の人だと気づいた。

「村山秀和くんだね。君の従兄の夏樹くんも来ている。秋田市へ帰ろう」

相手は初対面のはずだが、なんとなく何度も話をしたことがあるような気がする。

ぼくを呼んでいたのは、夏樹兄さんの声だと気がついた。

山の外に出る。

道路にスピーカーをつけた小型トラックが停まっている。リサイクルをするトラックか? 夏樹兄さんがそのトラックから降りてきた。

「秀和、外に出るのが平気になったんだな」

あっ、平気だ。

ぼくは、昭和61年の5月頃から10月頃までリサイクルの会社で内勤の仕事をした。

ある日、社長が妙な話をしていた。

「6時間だや、6時間。電話、しっぱなしだった」それはぼくに関することだったのか?

そして、9月だったか。次の日の朝の4時から会社にきて、ビール瓶を選別するように言われた。ビールの大瓶はキリンとその他のビンで形が違う。ビールのメーカーもいろいろある。それらは、選別されたのを岩手県のビンのリサイクルの業者まで売りにいかれる。

翌日、言われた時間に出社してビンの選別を行う。8時ころからだったろうか。社長が起きてきて、他の社員もくる。

「精神が分裂してるとかでないんだ。そんなことないんだ・・・」

とか社長が他の社員に言っていた。

それって、ぼくのことか? 電話って、やっぱりぼくに関することだったのか? でも6時間もかけて何を聞いたのだろう?

 

その前の8月頃にはスイカだのリンゴだのを訪問販売で売ったりしていた。社長の親戚に市場で働く人がいて、押し付けてくるらしい。そういった仕事は不思議とうまくいった。ぼくは自分で自分に客商売は無理だと決めつけていたが、やればできると分かった。