「わたしたちは3人で、喪服を着て香典を用意して、ゆうこさんに線香をあげにゆうこさんの家に行った。でも、玄関から家にあげてもらえなかった。
それで、ゆうこさんのお兄さんという人に手切れ金だと言って、封筒に入った現金を渡されたわ。B連合の人が来たら、渡すように準備しているわ。
それから、ゆうこさんがB連合にいたことは口外しないように言われたわ。お金はB連合の人に渡すために封筒に入れて、用意しているみたい。
口止め料として、B連合への献金はこれからもするから、ゆうこさんのことを話すなと言うの・・・」
その手切れ金でテーブルにある料理を注文したそうだ。お金をもらったものの、こういうお金はもったままでいたくなかった。それで、ファミレスにそれで用意できるだけのものを店員から計算してもらって注文したらしい。それで、お釣りが大分でる計算になったけど、店員のチップとかとして受け取ってもらうことにしたという話だった。
ぼくは店員がやけに愛想がよかった理由が分かった。
こうして、女性メンバーが男性メンバーに伝えたいことは、終わった。ゆうこさんの家族はB連合にはくるなと言うのだ。金を払うから、ゆうこさんのことは言うなと。ゆうこさんはいなかったことになればいいのか。
ぼくはこんなことを考えてしまった。女性の知的障碍者は性被害にあうケースが世界中で潜在していると言われている。家族が加害者のケースもある。ゆうこさんの兄に問題があったということはないのか? なぜ、ゆうこさんは男をとりかえひっかえするようになったか?
それから、料理を食べる手をとめ、どうしたらいいか考えてみんな沈黙した。
それから、みんながぼくを見た。ぼくは理由が分からないが頭のいい人と思われることがある。どうすればいいかをぼくに考えろということだろう。それで、こう提案した。
「ぼくたちがゆうこさんの家に入ってはいけないということであれば、この集まりをゆうこさんを偲ぶ会ということにしませんか?」
ぼくのこの提案にみんなが同意した。
「ゆうこは怒られて、子供を産めばよかったのよ」と20代前半で結婚して小学生の子供のいる女性メンバーが言った。そして、
「これ、みんなで食べきれないでしょ。ちょっともらっていくわ。旦那と子供の朝ごはんにするわ」と言って、受付から持ち帰り容器をもらって料理を容器に入れ始めた。女性メンバーが男性メンバーに言いたいことは終わった。そうして、結婚しているとか仕事で明日の朝も早いという女性メンバーは帰っていった。
だが、男性メンバーで帰ろうとする人はいなかった。偲ぶ会って、故人との思い出話をするものかもしれないが、ゆうこさんとの付き合いをみんなに話すのはみんなが憚られた。
アルコールで自分を誤魔化そうとする人はいなかった。どうもゆうこさんは大半の男性メンバーと関係をもったようだ。
ぼくはとにかく、料理をみんな食べてしまわないといけないと思った。ぼくは挙動不審になった。だんだん、不審の具合が悪くなっていたかもしれない。そして、誰かが解散を提案するのをぼくは待った。