「ゾンビが鷹産んだ」
などとわたしは陰口を言われている。だけど、そう腹はたたない。わたしは本当に俊和がわたしに似なくてよかったと思っている。
夫、駿は高校生の時に市役所の就職試験に合格してずっと市役所で働いている。わたしは高校は大学までエスカレーター式にあがれる私立高にすすみ、大学を卒業した。卒業後は就職はしないですぐ、駿と結婚した。
駿が市役所に合格できたのは、わたし、由乃の父が手をまわしたからだという話もある。わたしたちが結婚して市営団地に住めるのもわたしの父のおかげだとか。だが、そう言いたい人には言わせておけばいいだろう。
俊和はわたしを怖がったりしない。俊和もウルバッハ・ヴィーテ病なのか? いや、きっと違う。
幼稚園が同じだったとして、わたしと駿が急接近したのは中学生になってからだ。わたしは中学にろくにいかない状態になっていた。
それでこう思うことがある。駿もチリ紙交換屋もわたしの妄想を実現するために利用された犠牲者だったのでないか? みんな、わたしが悪いのでないか。だとしても、いまは専業主婦をして、俊和を育てるだけ。
****************
ー熱い。熱い。熱い。大火事だ。
ー土崎が朝のように明るい。
ーはじめに飛行機から爆弾を落としたのは日本でないの。
ーB-29に九八式高角砲でなんとせと言うんだ。俺たち、やけどをしたのを道路にさらしものにされているのかよ。みんなおれが死ぬのを待っているのか?
なんだ? ぼくは夜中に悪夢を見て目がさめた。寝汗をひどくかいている。パジャマを取り換えよう。
昨日、土崎空襲の慰霊所の近くに行ったからこんな汗をかくのか? 関係ないか?
明日は由乃さんの団地の人たちから、新聞をもらえるのだ。寝ておかないと。