まとめ役の人は前から知っている人だった。
「へば(それでは)、村山くん、スクイジーを使って玄関のガラスを拭いてけれ」と水の入ったバケツと小さなスクイジー、雑巾を渡されて、まとめ役の人に言われた。
市役所の窓清掃は何度もしたことがあった。玄関の窓の手が届くところは女が毎日拭くから、やらなくていいとみのるさんから言われていた。それでぼくが、
「脚立がいります」と言うと、
「手が届くところだけでいい」ということだった。
言われたとおり、ガラスをスクイジーをつかって拭いた。
「できるでないか」とまとめ役の佐藤さんは言った。それから「まったく、幸田のやつは・・・」と小声でつぶやいた。
女の人はスクイジーがうまく使えないようだった。それで、午前中に玄関のガラスを拭くのがぼくの仕事になった。そして、午後は市役所中のゴミ箱からゴミを回収に回ればよかった。
回りの人の話を聞くに、ぼくが会社から待機をさせられていたときに市役所で働いている男の人が交通事故で入院したらしい。
そういえば、ぼくがこの会社に採用が決まったのは幸田さんが病気で入院したからだ。ぼくは、穴埋め要員というわけか。だからって、不満はなかった。
ぼくは冬になったら、窓清掃で水を使うのは辛いなと思っていた。屋内でワックスがけをするとしても暖房を清掃員のためにはつけないだろうと思った。それが、神様がお願いを聞いてくれたみたいに市役所で働けばいいことになった。
入院していた人はゴミ集めだけを毎日していればよかったそうだ。だいぶ、年をとった人で社長の古くからの友達だったらしい。病院を退院しても、退職するのではないかと言われていた。
あと、ぼくは清掃のおばば様の手伝いをすればよかった。まとめ役は男性だったが、清掃をするのは、みんな年寄の女の人ばかりだった。それで、おばば様のいうとおり電気掃除機をもって階段を上り下りするとか水が入った水を運ぶとか、ある程度重いものを運べばよかった。お年寄りの女性には、ぼくにはなんでもなくてもある程度の重量のあるものを運ぶのが辛いらしい。ぼくはおばば様のいうとおり、その重量のあるものを運べばよかった。そんなことはいつもおばば様一人でやっていたことらしい。そのある程度の重量物を運んで手伝う相手は日によって違った。みんな、親切丁寧に仕事を教えてくれた。
11月分の給料がもらえた。給料の明細書をみると、10月の末に待機していた日は有給がついていた。