夏樹兄さんは会社の正社員だ。バブル景気がはじけて、就職氷河期が到来していて、それで正社員として採用されているのは幸運なことだと夏樹兄さん自身、思っていた。
夏樹兄さんは中学の同級生だった池田さんとぼくの不登校などについて相談していたが、池田さんからきたメールに悩んでいた。
<ひきこもりや不登校が長期化していしまうというのは、初期対応で傷を治すのでなく、傷をいじくるようなことをされてしまった場合があった場合だと思う>
池田は学校へ来る時期もあった。だが、卒業するころはいなかった。卒業式のあとで、親と学校へ卒乗証書をもらいにいったという。
それで、夏樹兄さんは池田さんの傷をいじくるようなことをしてしまったのか? 考えた。不登校になった池田さんの家を何度か他の同級生といっしょに訪ねていた。だが、池田さんは病院へ行っている場合もあった。
池田さんの母親に部屋に入れてもらえて待っていると、病院から帰ってきた池田さんが逃げてしまうことがあった。そのことで池田さんは多人数でくるからだといまになってメールで書いてきていた。
いとこのぼくにパソコンを譲ったのは、傷をいじくることになってしまったのか? 夏樹兄さんには分からなかった。メールでそう相談した池田さんも分からないと答えた。ただ、こういうことを書いてきた。
<不登校が中学生になったころだとしても、原因は小学生のころにできたのかもしれない。君のいとこの秀和くんは学校へ行くとひどく疲れることはないか? だとしたら、対人ストレスが普通の人より過剰に受けるからだと思う>
こういうことを秀和から話してもらうことは、池田の言うとおりに夏樹兄さんが秀和から信頼されることか。
傷をいじくることになる、場合もある。
夏樹兄さんはパソコンの電源を落として、寝ることにした。