薪能(たきぎのう) | つながっていこう~オンライン版絵本で支援プロジェクト【公式ブログ】

大宮の氷川神社で行われた薪能を観てきました。


“大いなる宮居”として大宮の地名の由来にもなった氷川神社。関東一円の氷川神社の中心として、2400年以上の歴史があります。

氷川神社に続く参道は、さいたま新都心方面から2キロの直線。ケヤキ並木になっていて、春は所々で桜も咲きます。我が家が引越す時に大宮を選んだ決め手は、Webで見た参道のすばらしさが本物✨だったことでした。

本題に入る前に…

【予習その1】
薪能の「薪」という漢字は、艸(くさかんむり)と書きますね。
:「並び生えた草」の象形
左が刃物+木右が斧、の象形だそうで、元々は「新」だけでたきぎを表しました。それが、新が「あたらしい」の意味で用いられるようになったので、「艸」を付けて区別するにようになったそうです。

古代の中国では、神事で火を灯す神聖な木を選ぶ時に、辛(針)を刺して、しばらく落ちなかった木を神が認めた木としました新たに神聖なる木を切り出すこと(新しいものを生み出す)という意味で「新しい」という意味になったそうです。

私は小学1年生頃まで、薪(まき)で沸かしたお風呂に入っていました。薪は木を切り、割ってしばらく置いてから使うのに、なんで「新」?と思いましが、謎が解けました!

【予習その2】
3月に「大宮薪能を楽しむための解説講座」@氷川の杜文化館、に参加してみました。
講師は金春流の本田芳樹氏。演目「高砂」について学び、装束の着付けを解説付きで見せていただき、それから謡の体験も少しだけしました。

面白かったので4月ににもう一回「能の見所」解説、仕舞謡体験に参加しました。足袋または白い靴下を持参ということで、実際に能舞台の上で歩き方と扇の扱い方を教わりました。

さらに5月、本番を一緒に観に行く予定の夫を誘って大宮薪能鑑賞講座」@RaiBoC Hall、へ。
「高砂」を金春流、宝生流、観世流の三流派で演じて、その違いについて解説いただきました。それから、別の演目「半蔀」の装束の着付けを見た上で、半蔀の“作り物”(小道具)が使われる場面を見ました。

さあ、薪能鑑賞の準備はこれで万端です!

【当日5/25土曜日晴れ
昼間は晴れて28℃と暑い日でしたが、夕方は涼しくなっていたので上着を着て出かけました。参道を歩いて氷川神社に向かいます。

氷川神社に到着。正面にあるのが楼門。


境内の楼門内にある舞殿↓で行われます。ここは、節分には豆まきが行われます節分


席は、中正面の9列1番と2番。

境内や周囲の大木の梢がさわさわと風で鳴っている音、カラスの群れがねぐらに帰ってきたのかどこかへ行くのか、上空で鳴いている声が聞こえます。人が歩くと玉砂利の音も響きます。

【いよいよ19時開始】
夜、次第に暗くなってきた中、それまで点けられていた照明が消され、いよいよ始まります。アナウンスで案内や紹介があり、まずは市長のあいさつ。
その後、笙(しょう)や篳篥(ひちりき)による雅楽が奏でられる中、拝殿内で薪能が無事に行われるようにとの祈祷があり、その後に屋外で火入れ式が行われます。神事として行われる厳かな儀式ですが、オリンピックの聖火の点灯式を連想しました。
竹の棒で、左右に2台置かれたかがり火台に順に火が点けられると、あたりがふわっと明るくなりました。
左右共に二人づつの装束を付けた人が椅子に座り、火が小さくなる数分毎に、薪を数本ずつくべていました。2時間以上ずっとです。ぱちぱちと燃える音に、薪が追加される小さな音が重なります。

続いて法政大学の伊海孝充先生による、狂言「貰聟(もらいむこ)」と、能「高砂(たかさご)」の解説。聞いておかないと分かりづらい言葉や背景について分かりやすくお話いただき、結末は見てのお楽しみ!ということで、さあ、演目が始まります。

ここまでで35分。すっかり雅な空気に包まれていますキラキラ

本日は、
素謡(金春流)翁  本田 光洋
狂言(和泉流)貰聟 石田 幸雄
 能(金春流)高砂 金春 安明


狂言は、途中から笑いが起こりました。
酒に酔って高飛車な夫が妻に離婚を迫り、離婚届のような紙まで渡すのですが、妻が実家に帰って父に告げると、父は「またか」と!?

狂言の後は、15分の休憩時間。また照明が点きました。
 
手前の黄色い装束の二人は左側のかがり火を守ります。
結構寒くて、火にあたっている人もいれば、少雨用に座席に配られていたビニールのカッパを着込む人も結構いました。
私もそれを見て念のため着用。風が通らなくなって、暖かかったです。
薪は最初4束あって、ここまでで一束分が使用済み。

上演中は写真撮影が出来ないので、休憩時間の最後に照明が消された瞬間に1枚撮りました↓
(とは言っても、かがり火だけではほとんど見えないので、最低限の照明は使われています。ついでに声も屋外では聞こえないので、うまくマイクが使われていたと思います。)

奥の朱色の楼門の方へ通路が伸びていて、見えますサーチ通路=橋掛かりは仮設ですが、小雨で行う場合などに濡れないようにだと思われますが、屋根も付いていました。

能面は千年!、装束も何百年と使われているものがあったりと、濡らせません!!!万全の準備がされています。

高砂は、結婚式で「高砂やこの浦舟に帆をあげて…」と謡を聞いたことがある人も多いと思います。私も記憶があるような…。この謡を事前の講座で練習したので、これが聞こえた時には、習った時の文字の横に書いてある記号も一緒に思い出しました。
松の木陰を掃き清める老夫婦、相生の松、そして最後に大阪の住吉明神が登場するこの高砂には、夫婦和合の考え方、長寿、和歌と夫婦の永続を願う気持ちが込められているそうです。


そういえば、後半はフクロウの鳴き声かな、ホッホー、ホッホーと聞こえていました。
この高砂で薪能は終了。お開きです。

じょうろで消火。


鎮火を見届けた頃には、拝殿の扉も閉まっていました。
カッパを脱いで、参道を歩いて帰りました。

 

解説された伊海孝充先生は、平和の中で薪能を楽しめる幸せをかみしめよう、とおっしゃっていました。
多くの方の尽力があってこその薪能、ずっと続いて欲しいと思いました。

 

今回は予習から付き合ってくださり、ありがとうございましたm(__)m

 

おまけに、もう一つキラキラ

氷川神社では、今年は6/8(土)と6/9(日)にほたる鑑賞会があります。

よかったら、みなさんも大宮へどうぞ~星空