ダムの底に沈んでいるもの | つながっていこう~オンライン版絵本で支援プロジェクト【公式ブログ】

こんにちはラブラブ群馬のおこちゃんです。

 

ふと、思うことがあります。湖の底には何が沈んでいるんだろうと・・・

私の心のみずうみには何が沈んでいるんだろう。私の心のみずうみはからっぽ、ぽっかり穴があいています・・・なんてセンチメンタルな気持ちになってしまう秋です。

 

 

紅葉を求めて、八ッ場ダムに行って来ました。この八ッ場ダムは上毛かるたに「耶馬溪しのぐ吾妻峡」と歌われている吾妻峡を流れる吾妻川にあります。八ッ場ダムは計画から68年かかって、2020年に3月末に完成しました。かつてここには川原湯温泉があり、計画当初から地元住民の反対運動があり、その後、反対派、賛成派に町は二分され、計画が難航したそうです。紅葉はまだ早かったのですが、八ッ場あがつま湖周辺の観光施設にはたくさんの人が訪れていました。温泉街がダムに沈む前にと20代の頃、友人達と川原湯温泉に泊まりました。当時は昔からの温泉街の風情があり、温泉客は少なかったです。地元の人から「こんな何もない所に来ても、おもしろくないだろう」と、言われたことを覚えています。ダムができる前は吾妻川の両側に470世帯のの家屋があったそうです。その集落はこのダム湖の下に沈んだのです。当時の住民の方々の想いはどんなだったんだろうと考えたら、こんな本を思い出しました。

 

『おばあちゃんは木になった』

写真・文 大西暢夫

ポプラ社 2002年

絵本の舞台は岐阜県揖斐郡徳山村。日本最大のダムを建設することになった予定地で、ぎりぎりまでまで住んでいた村のお年寄りたちのところへ、写真家の大西さんが何度も訪ね、友情をはぐくみながら丹念に撮った記録絵本。(絵本ナビより)

 

ダム建設が決まり、街に引っ越したが、「すぐにダムができないのなら、もう少し生まれ育った村で暮らしたい」と村に戻ってきた、はつよさん・司さん、ゆきゑさん夫妻、じょさん、小西さん夫妻、泉さん夫妻。電気もガスもないけれど、自然に与えられたものを大切にして、感謝して、自給自足の生活をしていました。ジジババは毎日笑いながら、生き生きとした表情をしていました。そして、遂に家が壊される日、じょさんの悲しそうな顔、後ろ姿。じょさんはどんな想いで壊される家を見つめていたのだろう。

 

ダム建設のために町や村が沈んでいくのは、日本だけのことではありません。

 

『みずうみにきえた村』 〈新版〉

ジェーン・ヨーレン 文 バーバラ・クーニー 絵 掛川恭子 訳

ほるぷ出版 2020年

 

友達と遊んだのどかな風景、当たり前にあると思っていた自然、やすらぎを与えてくれた故郷の村がダムに沈んでいく様子を小さい女の子サリーの目を通して語られていきます。パパは言います。「わしらの村をおぼえておくんだよ」と。大きくなったサリーはパパとクビアン貯水地にボートで漕ぎ出します。パパは沈んでしまった村の思い出をサリーに話します。そして、サリーは「はなしてやらなくちゃだめよ」という、ママの声を聞きます。ダム建設のために地図から消えてしまう町や村。そこに家があったこと、人々の生活があったこと、忘れてはいけない、伝えていかなければいけないのです。

 

『THE DAM-この美しいすべてのものたちへー』

デイヴィッド・アーモンド 文 レーヴィ・ピンフォールド 絵

久山太市 訳 評論社

 

キャサリンは明け方、パパと一緒にダムで沈む村の家々を回り、バイオリンを弾いて、歌を歌い、音楽で満たしていきます。ダムが完成して村は姿を消して、やがて、美しい湖が姿を表します。でも、ダムの底に沈んでも、水におおわれても、音楽は失われませんでした。いつまでも音楽は湖の底から心に響いてきます。

 

ダムが完成して、湖ができ、美しい風景が広がります。新しい温泉街ができ、レジャー施設もできて、かつてここにあった町も忘れられてしまうのでしょう。せめて、湖の底にあるそこに生きてきた人や生き物や植物たちの想いに心を馳せてみようと思います。