先日、ひょんなことから、朗読をする機会を頂いた。
お題は「愛する人へ」。
何を書くか当日まで悩んでいたら、
奥さんが「あなた、お母さんと一緒に食事とかしていたよね。そのときに話したこととか、書いたらいいんじゃない? あなたは、あきらかにお母さんで作られているんだから」と言う。
神の声だった。
お母さんか。。。
過去に書いた記事をもとに、母の日に奥さんのコンサートに行ったときの思い出を朗読として成立するように編集した。800文字くらいと聞いていたが、ブレスのための濁点を何十個も入れていたら、900文字近くになってしまった。
タイトルは「マザーズデイ」。
原稿はできたものの、朗読に関してわたしは誰にも習ったことはない。結婚式の司会者のときに、新郎新婦を紹介する原稿や、時に新婦の代読として、ご両親への手紙を読むことがあったくらいだ。
以前絵本会で「だってだってのおばあさん」の朗読に挑戦させていただいた時も、どうしてもネコとおばあちゃんの声を表現できなくて、結果奥さんと二人で朗読させて頂き、なんとか成立させた。朗読は、表現力がものすごく問われる世界だと思っている。
作・絵: さのようこ
フレーベル館 1975年
今回は、とにかく、ゆっくりと、一語一語を切りながら、発語することを心がけた。そして、感情をのせて声を作るのではなく、あふれてきた感情、そのままを声に乗せて読もうと決めた。
事前に読みあげてみた。
母のセリフのところで、何度も、みぞおちのあたりが震えた。
母との会話の一つの一つのシーンが、絵を見るように思い出された。
その瞳。表情。口調や声質。
みぞおちの震えが止まらなかった。
明らかにこれは「愛する人」へのメッセージだと思えた。
2021年 2月14日 サイレントバレンタイン本番。
歌や詩の朗読や、ご自身の書いた文章の朗読など。
出演者さんの表現力に圧倒された。
そして自分の響きを出し切った会であった。
もちろん、完璧になんてできなかった。
それでも、自分という響きと、母という存在を、
この世にすこしでも表現できたことの方がうれしかった。
胸の響きが収まらない中、最後の一言を読み上げた。
「母を知らない母へ あなたの子供でよかったです」
【マザーズデイで、奥さんが歌った「おかあさん」の歌】