無理なくヴァイオリンを持つためには?!学生や大人がヴァイオリンを弾くために、考えると良いこと | 音快計画-ヴァイオリン弾きのお仕事とはッ?!-

無理なくヴァイオリンを持つためには?!学生や大人がヴァイオリンを弾くために、考えると良いこと

 長い間、本番がほとんどなくなってしまったので、主にレッスンを、それもオンライン中心でレッスンをしていました。

 弓を誘導して体感させてあげる、音を実際に聴いてもらう、といったことができないので、どうしても教えられることは限られますが、反対にいつもできなかったこともできました。これはいいなと思ったのは、生徒が弾いている自分の画を見られること。また、先生と見比べてみるころができる、ことですね。

 

 その中で、特に、大人になってヴァイオリンを始めた人に伝えておけたらいいなあ、と思うことが色々あったので、少しここに書いておきます。斜め、というのがポイントではないかという話です。

 昔、大学入学後に楽器を始めた人たちを、半年でオーケストラの舞台に乗せる、という荒業をしてきて以来、長いこと大人を教えてきましたが、数年は幼児の数倍のスピードで上達するのが普通ではないかと思います。全てはやり方次第。これは、概ね中学生以降にスタートした人には、当てはまる話だと思いますので、ご一読いただければと思います。

 

 一言で言ってしまえば、大人には、幼児とはまったく違うアプローチ、明確なメソッドが必要だということです。
 スズキメソードで言うように、音楽と言語の習得は似ていて、幼児は外国語を話すように弾けるようになっていきます。裏を返せば、大人に幼児と同じ方法は使えない、ということではありませんか?

 実際、大人になって始めた人のほとんどが、何年経っても弾けるようになりません。そういった方々に話を聞いてみると、全員が3歳児と同じように教えられていることが分かります。


 大人は、理解したことしかできるようになりません。やっているうちに分かってくるとか、時間をかけ、根性で何とかなる、とかいうことは、ほとんど考えられません。しかし、客観性、合理性を理解できる。これが、大人ならではの武器です。その武器こそ、使うべきです。

 

 例えば、非常にシンプルなことですが、子どもは鏡を使って練習する、ということができません(もちろん、例外はあると思いますが)。

 人は、自分がどう見えているか、ほとんどの場合、分かっていません。力学的に無理があるかどうかは、客観的に見ることができれば、自然と分かります。ですから、大人の場合、鏡(あるいは動画)をうまく使うことが非常に有効で、合理的な動きになるように修正することができれば、確実に上達します。弾きながら鏡を見るのは、ポイントはあるものの、意外と難しいのですが……。


 一番初歩、楽器の持ち方が極めて重要ですが、これはほとんど教えられていません。そして、合理的にならず、ガチガチに力み、あっという間に行き詰まるのです。

 3歳の子どもに、手の力のイメージや、指のどこの辺りが弓のどの辺りに接して、など教えるのは、まあ無駄ですよね。そのため、幼児には幼児に合った教え方をしているはずです。大人には、ちゃんと考え方やチェックポイントを教えれば、自分でできているか、分かります。

 

 考え方のポイントだと、僕が思っていることは、楽器の向きです。ヴァイオリンを弾くとき、身体の正面に対して、楽器が斜め前を向きます。この、斜め、というのがポイントだと思います。

(いずれ写真を載せます)

 そこで多くの人は、楽器に対して手のひらが平行になるように手を使おうとします。これは自然なことですが、結果、楽器に合わせて腕を、ものすごく無理してひねる。ガチガチに力が入って、手がまともに動かない!動かないので、弾けるはずもない。こうして、まったく弾けないまま、あきらめることになる人は多いと思います。

 数年習った、と言う方が、僕のところに来る生徒で一番多いのですが、最初の一歩であるはずの楽器の持ち方を、ある程度でも分かっている人が、まったくいない……。

 ある程度以上、腕をひねるわけにはいかないので、手の開き方で調整するのです。普通に手を開いてもダメで、ヴァイオリンを弾くときは、手を「斜めに開く」必要があります。人差し指は縮めて、小指は伸ばす、という方向です。そうすると、楽器の角度に対して、無理のない持ち方が可能になります。

(すみません、いずれ写真を載せます)

 楽器の持ち方は、体格、腕の長さ、手の大きさ、指の長さ、各指のバランスなどで、細かいところは、相当個々人によって違うように思えます。結局のところ、レッスンをしないと教えられないところです。その上、流儀も一つではありません。

 どうあれ、身体の作りに対して合理的に楽器を持つことができれば、大人になってから楽器を始めても、当然、かなり弾けるようになります。

 

 また、人間は、正面に比べて、斜めの認識が極めて不正確です。

 斜めにある楽器に対して、まあ大体直角に弓を動かすのですが、主観的な認識と、客観的な認識の間に、大きなズレが生じることは、鏡を使うとすぐに分かります。客観に合わせて、主観の方を調整する。それが、初歩のときに一番必要な練習ではないかと思います。