タンゴの楽譜と雑司が谷の件
タンゴを演奏する。その時使う楽譜は、イチから全て自分たちで作るのが普通です。残っている録音から、いわゆる耳コピをするか、自分たちで編曲をするか。そのどちらかです。
タンゴの真ん中にあるリズム、メロディー、巨匠たちの残したスタイルに向き合おうとすると、これはもう、耳コピするしかありません(但し、昔の録音では概ね大編成なので、自分たちの楽器編成に合わせて書き換えることはしないといけません)。
やってみると、特徴的なことがいくつもあって、難しい。例えば、タンゴのリズムもメロディーも、時間どおりに音が演奏されているとは限りません。聴いたままを記譜することが正解とは限らない訳です。
例えば譜面に4分音符があったとして。その記譜どおりの時間、演奏されていないことがよくあります。それは、何か理由があったので、時間どおりの長さに演奏されなかったということです。その理由を理解できないと、その部分、4分音符を演奏していた、ということ自体が分からない、ということもあり得ます(よく起こっていることのように思います)。
そういうことが分かる部分でも、やはり聴いたとおりに近い形で書くこともあります。どういう人が弾くのかによって、書き方を変える訳で、より理解してもらいやすい方を選ぶことがあります。でも個人的には、もったいないかなと思っています。
おそらく元々の録音で演奏していたミュージシャンたちは、そういう譜面を見ていないからです。楽譜はとてもシンプルな形で書いてあったと思われます。それを基に、彼らがどういうリズム感で刻み、メロディーを歌ったから、録音に刻まれている音楽になったのか。そのことこそ面白いなあと思うからです。
僕が参加しているタンゴバンド、メンターオは、ライブでは古典タンゴの演奏のコピーしかやらない、近年珍しいバンドです。一般的には、渋い、と言っていいのでしょう。
しかしその渋さ、侮れない。
どっぷり巨匠たちの世界に浸って、それも、限られたスタイルに限定して、追求し続けているのです。
このバンドの楽譜は、ほぼ全てバンマスの池田氏が書いていて、リハーサルでは、元録音をみんなで聞きつつ話し合い、実際音を出しながら探っていく。そんな感じで進みます(実際には色々な場合がありますが)。
こういうリハーサルは、何よりその音楽が分かってくることが、とにかく楽しいのです。そんな経験を重ねるうちに、本人たちがそこまで気にしていないような気がする、サウンド自体も見違えるほど充実してきています!
来週日曜、久々に雑司が谷でライブです!ぜひ、一度聞いていただけたらと思います!
3/10(日)14時開場 15時開演
@エル・チョクロ http://el-choclo.com/
東京都豊島区南池袋3-2-8
(副都心線「雑司が谷」駅1番出口徒歩2分半、都電荒川線「鬼子母神前」駅徒歩3分)
出演;
池田達則 (バンンドネオン)
専光秀紀/宮越建政 (バイオリン)
松永裕平 (ピアノ)
大熊慧 (コントラバス)
お問合せ:03-6912-5539 /info@el-choclo.com または出演者まで
チャージ:4000円