満員御礼! | 音快計画-ヴァイオリン弾きのお仕事とはッ?!-

満員御礼!

『ラ・クンパルシータ 百年の物語』。ウルトラ超満員の大盛況で終えることができました!
 スクリーンが見えにくかったり、窮屈な思いをされた方もいらしたはずです。本当にありがとうございました!

 どうしても長くなるので、いつもは書かないようにしていますが、この企画が完成するまでの経緯の一部を、たまには書いておこうと思います。

 僕は昔、ピアソラのお話モノを作りました。『その名は、ピアソラ』というタイトルで、アストル・ピアソラというアーティストの人生を、物語しながら演奏する、という企画です。
 もっと色々なエピソードが分かると更に面白くなるんだがなあと思ってはいたものの、台本を書く上でとりあえず困ることはありませんでした。

 ピアソラに関しては、とても詳しい日本語の本が何冊もあり(事歴的なことに比べると、人柄が分かるようなエピソードは多くないのですが)、どういう人生を歩んだか、ある程度はすぐ分かります。本によって食い違う部分もあり、その部分はハッキリ言えない、ということも分かります。

 また、日本語字幕の付いたドキュメンタリーの動画などもいただけて、ピアソラ自身が語った言葉なども聞くことができるのです。

 その後、もっと色々な題材で、何か作ってみたいとは思っていたものの、知り得た情報が少な過ぎて、完成しませんでした。何一つ。

 もちろん今は、マエストロ達に関する本も手に入りますし(個人輸入できる)、ドキュメンタリー動画なんて素晴らしいものもYoutubeにかなりあるのですが、バッチリすべてスペイン語。ハードルが高すぎるのです、せめて英語なら……。
 結局、一人の人物に関する情報が少ないと、お話として面白い部分が分かるまでに至らない。情報がどれくらい確かか、という部分を全く無視して、全部使ったとしても、話としての要素が全く足りず、企画にすらならない。

 半ば諦めて、ピアソラもののリメイクや、演奏や楽譜作成ばかりやっていました。

 そこに一昨年の11月、西村秀人先生に、「ラ・クンパルシータ物語」が出来ないかなと思うのです、と提案された時、瞬時に、これだ!と思いました。2017年が、クンパルシータの初演百年だったということに合わせた企画ですが、そんな重要メモリアルイヤーがあることすら、僕は知らなかった。

 まず、大体のことが分かる資料(西村先生にいただいた)を元に、僕が最初の台本を書きました。

 これが、大体しか分かっていないままノリで書くので、創作(願望?)や箇条書き(要望?)がいっぱい混じっていました…。そのイイ加減なホンの、意図するところを汲んでもらい、先生がかなり書き換え、相当書き加えて、実際に使う台本の大元ができたのが、去年の5月です。

 それを読んでようやく、僕はこの話の面白さがどこにあるのか分かりました。

 ラ・クンパルシータという、楽譜の書き方も知らない建築学部の学生の時にたまたまできてしまった不完全な曲が、作曲したマトス・ロドリゲスの人生を変えてしまうのです。そして、自分の曲の権利を取り戻すのに、長年法廷闘争したりするのですが、そんな話が面白いのは、彼の生き様がそれだけ面白かったからでしょう。

 彼が作曲家になったのは、クンパルシータの権利を取り戻そうと決めた後ですし、印税の一部が入ってくるようになってからは、一曲たりとも作りませんでした。何ともタンゴらしいと言いますか……。


 もっと伝わりやすくならないか、何度も修正を加えていきました。こんなエピソード、(まさか)あったりしませんか?などと先生に要望しますと、驚くほど何でも出てきました。本当に凄かった…。

 この物語が公演として成り立つものになったのは、何と言っても、西村先生のお力です。

 初演百年という曲の物語ですから、演奏する曲は古いものばかりになります。

 当時の様式で、という訳にはいかないまでも、できれば古典タンゴの様式で演奏したかった。古典のタンゴは、リズムも歌い方も、それぞれの様式ごとにかなり違っていて、この企画用に新たにメンバーを選定しても、通り一遍以上の演奏にするのは難しい。そこで、自分も一緒にやっていて、普段から様式にこだわっているメンターオで、と考えました。
 とはいえ、普段のレパートリーはそう使えない。曲ごとに違ったりする演奏の様式、その違いをちゃんと表現する。……大変極まる仕事になったと思います。他にやっているところがないそんな内容に、真摯に取り組んでくれたおかげで、この公演は完成しました。

 面白かった!また作りたい。しかし、何を、かがまだ決まっていないのが残念です。しかし、次もきっと、より面白いものが作れるはずです。またご期待下さい!