『異邦人ピアソラ』 | 音快計画-ヴァイオリン弾きのお仕事とはッ?!-

『異邦人ピアソラ』

 ピアソラの生涯が、故郷のない、どこにいても異邦人だと感じるようなものだったに違いない、という主張(マリア・スサーナ・アッシ/サイモン・コリアー「ピアソラ-その生涯と音楽」による)には、僕もほぼ同感です。

 アルゼンチンに生まれ、4歳で渡米、ニューヨークで育ちます。1929年の大恐慌の後、一度母国に戻りますが、すぐにまたNYに戻ってくる。自分がニューヨーカーであるという自覚がある少年。「星条旗よ永遠なれ」を聞くだけで血が騒いだ、と本人がインタビューに語っています。
 母国に戻ったのが、16歳。スペイン語が上手に話せない。服装もアメリカ人みたい。ということで、当然いじめられたようですし、居心地たるや、もう最悪だったことでしょう。

 ブエノスアイレスに上京して下積みを始め、アニバル・トロイロのバンドに入ったのは2年後ですが、アメリカ人みたいなところがまだあったのでしょう、「ジョニ」というあだ名を頂戴します(もっとも、「ガト(猫)」と言われることが多く、他にも「レーザー」とか色々あったみたいですが)。

 僕は、このトロイロの下にいた期間が、音楽家としてももちろんですが、人間としてのピアソラに、とても重要な意味があったのではないかと思います。故郷のない人間が、これこそ自分の故郷だと言えるような何かを、心の中に作ることができた時間だったのではないでしょうか?そして、異邦人だからこそ持っている感覚が、目覚めてくる……。
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 僕自身は、父親の転勤で2、3年おきに住む場所も学校も転々としまして(国内ではありますが)、その後も引越しが続き、これまで18回転居しています。
 そういったわけで、僕には故郷と思える一つの場所はありません。そういう感覚がないのです。しかし、ない、というより、沢山ある、という方が、僕にはしっくり来ます。そのためか、日本が故郷だ、というような、ひろーい故郷感だけがある。そういったことから、特に少年時代のピアソラの思いを想像して、台本を書きましたー!

 人の価値観を変えるのは、
 世界を変えるように難しい。
 しかし、ピアソラの音楽と人生が語っている。
 人は、人とその世界を変えていくことが出来る。

 資料を構成して書かれた台本と、湧き上がる音楽。
 当時の映像を交え、心象と歴史が交錯する映像。

 すべてが溶け合って
 ピアソラの人生を語り出すその時、
 あなたの脳裏に浮かぶものとは?

 『異邦人ピアソラ』

2015.3.15(土) 17:00 OPEN 17:30 START
 音と言葉”ヘイデンブックス” www.hadenbooks.com
 東京都港区南青山4-25-10 南青山グリーンランドビル
  TEL/FAX 03-6418-5410 前売3800円 当日4300円
出演
 宮越建政(ヴァイオリン/構成/語り)
 北村聡(バンドネオン)
 三枝伸太郎(ピアノ)
映像
 茂谷さやか
企画
 福井利恵子

 同じように書き下ろした台本を読んで、ピアソラの生涯を追体験しながら、音楽を演奏していく、『その名は、ピアソラ』という出し物を2年前までやっていました。幸い、映画を見ているみたい、など好評をいただくことができました!
 それを基に、今度は実際に映像がつきます。ある意味では、映像があるからこそ、映画のようには感じられないのではないかと思っています。そうではなく、もっと違う何かが生まれるはず。
 音楽も、決まった曲を演奏する部分だけでなく、映像や話に合わせて自由につけてもらう部分も多分に設定していて、どうなるか、非常に楽しみです。

 そうそう、丁度おなかがすいてくる時間だなあと、ご心配される方もいるかもしれません。しかしそこも抜かりなし。

ピンチョス

 ドーン!このような見事なピンチョスが用意されていることでしょう!

 会場は、素敵なブックカフェです。しかし、定員30人ほどで、残り十数席のようです。お問い合わせは、お早めにお願いいたします。