モーツァルト!そしてピアソラ。
久しぶりに、先日映画を見てきました。
カルロス・サウラ監督の「ドン・ジョヴァンニ」。素晴らしかった!
……ただ、もう大体公開され終わっているはずです。こういうところに書いておいてなんですが、僕が劇場で映画を見る場合、多くは下高井戸シネマというところで見ていて、大概の劇場で公開が終わっていることが多いのです。あしからす。
モーツァルトがダ・ポンテという人と組んで、いくつかの傑作オペラを作ったのは前から知っていて、またこの劇作家を高く評価していたのは知っていたのですが、……ダ・ポンテのことは知りませんでした!不覚……。カサノヴァと深い関わりがあり、確かに新しい時代を体現する人物だったのでしょう。そしてそんな人が、よりによって、あのモーツァルトの盟友になった!
最後が物足りない人もいるのでしょうが、僕はこういう結末の映画、基本的に好きです。
モーツァルトに関して、あの『アマデウス』の、素晴らしすぎるモーツァルト像を踏まえているのかもしれません。ただ、敢えて違う面が印象に残るよう設計されていると思います。それが、本当に絶妙で、素晴らしい!
また、ある程度確信を持ったフィクションだな、という感じを受けます。深読みすると、創作ってこういうことだよな、と思うのです。人生を切り売りするようなところがあって、それには激しい痛みが伴うし、題材が過激だと、表面的な内容から誹謗中傷を受ける。作品はモチロン、その人生も攻撃される(それだけのことをしている可能性もありますが……)。それと闘い続けた創作が、新しい時代を作るんだな、とも思います。
あっという間にこの世を去ったモーツァルトと異なり、ダ・ポンテは、最後はどうしたことか、アメリカで死んでいます。享年89歳。その後半生は映画で描かれませんが、間違いなく凄まじい人生だったことでしょう。
音楽に泣けました。モーツァルトが年々素直に聴けるようになってきたのも、収穫でした。
余談のようですが……
ピアソラもそういうところがあるなあ、と思わずにはいられませんでした。
というのも、10月11日に江古田のライブハウスBuddyで、
『その名は、ピアソラ。』
という公演をやるのですが、今ちょうどその台本を仕上げに掛かっているからです。
ワタクシ、宮越がテレビ時代に得たすべてを使って、書き下ろしたラジオ台本風のお話と、頼もしいメンバーとのライブの演奏が絡み合って生まれる世界。4月に、同じ公演を行ったのですが、思いがけず好評を得た結果、再演となりました!
全体を貫くストーリーも感じられるから集中力が続くし乗りやすい、あるいは、今までほとんど聴いたことのない人の場合、曲の世界に入り込みやすい、という効果があったそうです。えへ。きっと演奏してくれるメンバーが、同じ思いで演奏してくれたからです。
タンゴの革命児、アストル・ピアソラの人生の節目を作った、その先輩たちの音楽、そして彼自身が作った曲を台本に乗せて、その人生を描きます。コンセプトは4月と変わらず、ただ台本の細部も演奏する曲も、大きく書き直していて、内容は相当パワーアップしている自信があります。
人生は一度きり。その時間にできることはあまりにも限られていて、自分の力も限られている。それ自体は、ピアソラだって同じです。ピアソラの人生がぎっしり詰まった音楽と、その人生は、きっと力を与えてくれます。調べれば調べるほど、聴けば聴くほどにそう思います。
……僕にとっても、考えたらこれまでのすべてが詰まっています。テレビ番組を作って身につけた言葉、今表現している音楽。そのすべてを使って、僕はピアソラを、可能な限り表現します。
映画『ドン・ジョヴァンニ』に勇気付けられました。テレビの分かりやすさは捨てない。でも、あくまでテレビやラジオでないからこそ書き込める部分まで、ギリギリまで踏み込みたいと、今、書いています!