いやぁ、懐かしいなぁ。

何を思ったか。今日は何ということのない平日の夜中なのに。

急に、小学校教員として初めて赴任した北海道の小さな町「幌延町(ほろのべちょう)」のことを思い出した。私が幌延で勤めたのは大学を出てからの3年間。

 

なんでだろ? そっかぁ。先ほどテレビで観た、山梨にある「日建」という会社のドキュメント(テレ東)が原因かぁ。

 

「日建(にっけん)」なる会社の社長はすごい! 地雷除去機を開発して、ウクライナなどに提供している社長だ。眼差しがすごい。企業というのは、利潤を追求する集団のはずだが、ここの社長は違う。もちろん利潤がないと会社は成り立たないわけだが、同時に世界平和を目指して実際に行動を起こし、社会貢献している。ここがすごい!

 

地元山梨の中学校も社会科見学のコースにこの会社を選んでいる。それもそのはず。この会社の社会貢献、世界平和貢献は、社会科のほぼ全ての教科書会社の紙面に載っているというのだ。なるへそ〜! この会社、ただものではない!

 

ウンウン。東京にいなくたって、どこにいても物事を起こすことができるんだよな、と思いを新たにしながらテレビを観ていた。

 

だから、幌延を思い出したのだろう。

以前にもこのブログで書いたことがあったかもしれない。

私が教員になって2年目だったか。今から37年くらい前のこと。

その時、高学年の学級担任をしていた。

当時の自民党政権は、1988年(昭和63年)から1989年(平成元年)にかけて、各市区町村に対し地域振興のために1億円を交付する大盤振る舞いの政策を施していた。

幌延町では、地元出身の書家「金田心象」の偉業を讃えた記念館を建てた。

当時の幌延町の人口は3500人。人の数より牛の数(8000頭)が多い^^;

その街に、モダンな書道美術館ができたのだ。かっこよかった。

教員になる前、旭川市にあった西武デパートの美術ギャラリーで働いていた私だが、「美しいもの」にすぐに惹かれてしまう性癖があった。

休みの日に、できたばかりの書道美術館に行ってみた。

これはすごい! 圧倒される墨象の作品。エネルギーに満ちた作品の数々。

日本のどこにいたって、世界のどこにいたって、人に感動を与えることのできる発信はできるのだと、からだのどこかで感じていた。

 

その時だ。ふと思いついた。「そうだ! ここでコンサートを開いてはどうか!?」と。コンクリートの床、壁でできている美術館。展示室で手を叩いて鳴らしてみる。反響が少なからずある。「これはいい響きだ」。クラスの子どもたちを連れてきてリコーダーを演奏しても面白い。きっといい音空間ができる。

普段の日常からはちょっとだけ切り離された美的空間ができる。そう直観した。

 

すぐに企画書を書いた。もちろん宛先は町の教育委員会。美術館は教育委員会の管理下にあるのだ。

 

町民だれもが出演できる、町民だれもが聴きに来ることができる、そんなクリスマスコンサートを、この美術館でやってみたい! そういう企画書を書いた。

しかし、最初は認められなかった。ダメ〜〜〜! 音楽を発表するなら公民館があると言われてしまった。できたばかりの打ちっぱなしのコンクリートの床にパイプ椅子を置くことにもリスクがある、と。

確かにそうだ。音楽の演奏に相応しい公民館もあるし、コンクリートの上にパイプ椅子を置けば、ちょっとズレるだけで大きな音が鳴ってしまうし、万が一の場合、床に傷をつけることになる。

 

諦めかけたその時、企画のことを耳にした町議が「面白いじゃないか!」と名乗りを挙げてくれた。

そこから、話はグングン前に進むこととなり、町の若者を中心に実行委員会が立ち上がった。

 

音楽で参加しなくても、コンサートのポスターづくりで参加できるような企画も立ち上がった。町にはトナカイもいた。トナカイが引くそりに乗るイベントもできた。

まだある。「サイリウム」なるポキッと折って光る発光体をクリスマスツリーに飾るイベント、さらに雪で作ったキャンドル・ミニかまくらで、美術館までのアプローチを彩るイベントも……。

 

あっという間に、町民を巻き込むイベントになった。

何百というオリジナル・ポスターが集まった。町の数か所で、ポスター展が開かれた。

 

こうして第一回目の「心象館 音楽の夕べ」が開催に漕ぎ付けられた。

いやぁ、懐かしい。1回目は20組くらいの出演応募があったと記憶している。町の大正琴のサークルで。中学生の管楽器アンサンブルもあった。ピアノを習っている子が出演してくれた。役場の人がサックスを披露してくれた。私も下手くそなピアノを弾いた。確かMistyというスタンダードナンバーを弾いたのかな?

最後はプロのクラリネット奏者を招いて一発やってもらった。

なんとも言えないいいムードに包まれたのを今でも覚えている。

小さな小さな町で起きた小さなイベント。ものめずらしかったか、地元紙やテレビでも紹介していただいた。

旭川の親父は鼻高々にして「さすがは俺の息子だ!」「やることが面白い!」と銭湯に来ていた町内の仲間に息子自慢をしていた(大笑)。

 

私は3年でその町を離れた。あれから35年近く経っている。まさかなぁ……。コンサートはもうなくなっているだろう、と思ってインターネットで調べてみたら……、な、な、なんと! まだ続いてるではないか!

 

 

いやぁ、嬉しいったらありゃしない。懐かしいったらありゃしない。まだ続いていたんだなぁ。

嬉しいなぁ。なんだかとっても嬉しいなぁ。

 

「ブラボー 幌延町!」「ブラボー 金田心象書道美術館!」「ブラボー 心象館 音楽の夕べ」

 

幌延町は、私の第二の故郷。

第一の故郷は、旭川。第二はいくつかある。幌延は、私が旭川を離れて長期間暮らした初めての地。だから第二の町。ニューヨークも第二の故郷。幌延に行く前後、長期間過ごした町だから。音楽を勉強させてくれた町だから。長い…と言えば、東京ももう23年も棲んでいる。やっぱり東京も故郷なのかな?もう。

 

人生、どこにいても楽しい!

 

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話は変わって。

2月8〜9日は、筑波大学附属小学校の研修会。授業を公開させていただきました。4年生と音楽づくりを楽しみました。各地からいらしてくださった先生たちに観ていただいた授業。子どもたちは、現代音楽作曲家リゲティの作品に着想を得て自らの音楽をつくっていました。ゼロからイチを生み出す瞬間。これぞ音楽づくりのいいところ。楽しかったです。

研修会の翌日、沖縄に向かって研修会、先週末は愛知県設楽町での飛び込み授業。そして研修会。その翌日は名古屋でのリトミック研修会と続きました。今日は宮城教育大学の先生と学生さんが授業を観てくださいました。これからの教育を担う学生さんたち。積極的なその姿勢に感銘を受けました。がんばれ!ミライ!

さて、今年度も残すところあと1ヶ月。

ラストスパートですね。頑張りましょう!みなさま!

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