午前中、○月号の原稿の清書を

 送ったあと、「そろそろ年の瀬だなぁ」と気が付いて

 ぱったりと筆が止まった。

 

 石原慎太郎の新刊を取り出し、

 「ありがたいなぁ」と思いながらゆっくり眺め、

 

 小林秀雄の、「遠野物語」で有名な柳田國男についての講演を聴き、

 講演中朗読された一くだりを40年ぶりに思い出し、

 「そうやって読むのだったのか」と臍をかみ、

 

 風呂場で福野礼一郎の新刊を読み、

 カツカレーを食べた後は、

 

 酒を飲みながら、吉右衛門の「鬼平犯科帳」。

 

 ああ、年末だ。

 

 押しも押されぬ名作を一日楽しんだ割には、

 「それに比べて、自分は」の、

 まっとうな反省もなく、

 

 「いい一日だった」

 

 と思えるのも、

 やはり年末だからだろう。