Break out of your bubble (Bob)
大作が来た。
リトグリは10月9日に24枚目のシングルの代表曲となる「Break out of your bubble」を配信した。
ダンスとかファッションとか美とか舞台装飾とか、エンターテイメントの要素はいろいろあるが、リトグリの王道である歌とハーモニーという要素で堂々と勝負できる感動の1曲だ。全面に散りばめられた難度の高いコーラスの上で各メンバーのリードボーカルが光る。
特に2番以降、怒涛のように押し寄せてくる歌声とコーラスワークに圧倒された。
まだまだ聴き込みが不足しているものの、この曲の良さを早く共感したいので現時点での感想を記しておきたい。
作詞はアカペラで有名なTORUS(とおるす)さん、作曲&編曲はHaruto OnoeさんとTORUSさん。
まずは曲の構成だが、
イントロ
1Aメロ→1Bメロ→サビ
2Aメロ→2Bメロ→サビ
Cメロ→落ちサビ→大サビ
となっており、JPOPの王道の構成。
転調はなくキーは最初から最後までG♯(=A♭)一本。
真っ向勝負だ。
では構成の順番に従って感想を。
▪️イントロ
♪Break out of your bubble 〜リードはかれん。
ウーン、出だしからリズムが難しいぞ。ちょっと反則だが、発音通りにカタカナで書くと
「ブレカウトーブョーバーボー」笑笑。小節で区切って書くと「ブレ」「カウトーブョーバー」「ボー」。
(私は小節の頭がどこなのかを気にする変態的な性分なのでここはスルーしてください。
この出だしの「ブレ」で、かれんの声に誰かの声が重なっているように聴こえるのは私だけ? 誰かユニゾンで重ねているのか、(それともかれんの声をディレイさせているのか)、どなたか教えてください!
ユニゾンだとすれば、この出だしを合わせるのはかなり難度が高いでしょ。いわゆる"かれんの息だけで入る"やつだ。次の「カウ…」が小節の頭であり、ここから字ハモの複雑なハーモニーが入ってくる。ごく短い時間の「ブレ」の後に合わせて入るコーラスもやはり難しい…。 イントロだけでもうスゴい。
▪️1Aメロ
♪水槽の金魚の群れ〜 ミカリード。
はじめ誰のリードか分からなかった。ミカの場合は、(他のメンバーの声が個性的なので)消去法でミカだとわかるケースも結構ある。パンチが効いていればはしめからミカとわかるケースもあるが、この1Aメロの場合は前者の方だ。相変わらずピッチが正確だ。
♪重力に抗うように〜 MAYUリード。
最後の「もう」限界「だー」がいかにもMAYUらしく、文節の最後の音のピッチが気持ち良い。これはMAYUの世界。
イントロの終わりからAメロにかけて♪Ha-Aa というコーラスが続く。2重ハモで下がファ→レ♯と移動するのに対して上はキー音のソ♯→ソ♯と同じ音階を続ける手法だ。単純なハモだが、3度ハモと比べると浮遊感がある。
▪️1Bメロ
♪(いつしか)伝えること〜 アサヒリード。
♪伝えることができるだろうか はこの曲の中では低音部。アサヒは年々低音部の歌い方が上手くなってきている。全ての音を丁寧に歌っているからこその上達。 ♪触れられたくない場所 のところ、感情を音符に乗せるのが実にうまい。ここの歌詞は重要な部分だから尚更だろう。
♪(だけど)受け入れられない〜 miyouリード。
出だしはmiyouらしく息多めの声だが、音階がのぼっていくに従って息が減って声だけになっていくさまが良い。最後の♪こわーーーい のロングトーン(C5)が素晴らしい。miyouの張った声は心に刺さる。
▪️1サビ
♪あるがままの〜 かれんリード。
1Bメロ最後、miyouのロングトーンの後にブレイク。4拍分の沈黙…そしてかれんの高音ボーカルが来る。
このブレイクは後のクライマックスにも出現するが、ドラマティックな展開にするのに効果的だ。かれんの"当てに行く"ボーカルがさらに効果を上げている。ここはせり上がって ♪あ⤴︎るがまま ではなく、いきなりパーンとC♯5に当てに行く方が何倍もインパクトのあるサビになる。かれんだから簡単に歌っているがビシっと決めるのはさすがだ。
♪あるがまま「の」すがたである「きだすみらい」
の「の」はファルセット、「きだすみらい」はミックスボイスと思われる。「の」はF5というかなりの高音なのでファルセットで納得だ。かれんはシャウトすれば地声で出せる音ではあるが、まさかここでシャウトするわけにもいかない。「きだすみらい」については、次の♪えがいてみては閉じ込める の中で同じ音階を地声で出していることを考えると、このミックスボイスはやはりかれんなりの表現だろう。これは歌い手によってそれぞれの表現があり正解はない。
ところで、うっすらと下ハモで支えているのは誰?
ミカ? これもお見事だ。
♪分かって欲しい〜 結海リード。
♪わかってほ「しい」の音階はかれんの「の」と同じF5だ。かれんの「の」が小音量のファルセットであるのに対して結海は限りなく地声に近いミックスボイスで音量を落とさず対応している。堂々たるハイトーンだ。張りと太さがあって素晴らしい。高音部はかれん、アサヒと並んで完全に3本柱だ。結海のスゴさはこれだけではない。この後の♪ぼくじゃないぼ「く」を生「きるのはー」♪ では「」の部分だけがファルセットであとは地声なのだが、その地声とファルセットの切替が実にお見事。しかもピッチが完璧!お見事過ぎて驚愕だ。
最後の♪し「た」いんだー の「た」は普通の流れであれば音階はC(ド)なのだが、敢えて半音下げてB(シ)にしてマイナー感を出すアレンジとなっている。ここは正直に言うとちょっと唐突感がありそのままCでもよかったのではないか、とも感じたが、不思議なもので繰り返し聴いているうちに耳に馴染んできた。今ではBの方がおしゃれに感じてきてしまった。
ラストの♪だー は発音はエ行寄りになってしまってはいるが、太さがすごくあってボワっと空間に広がる感じがいかにも結海だ。いや、素晴らしい。
▪️2Aメロ
♪君だけは〜 MAYUリード。
1Aの時はバックにHa-Aaのコーラスが入ったが、ここからはストリングスが入る。MAYUの歌声はフルートのように柔らかなので親和性は良いのかもしれない。
♪信じてみたく〜 アサヒリード。
MAYUの最後に隙間なく被せてアサヒがリードへ。
♪雑音(ノイズ)「の」中すす「む」君「と」の道…
ここの「の」はうまく言えないがすごみがあり、さらに「む」と「と」のせり上げが実にうまい。文字でなく歌い方で韻を踏んでいるかのよう。ラストの「ち」の引き方もうまい。♪君との道 で伴奏が一旦止んでアサヒの声がパッと浮かび上がるアレンジも素敵。
そしてこのあたりから怒涛のような歌とハーモニーが隙間なく続いてゆく。
▪️2Bメロ
♪(いつしか)めぐり逢うこと〜 ミカリード。
アサヒの最後に被せるように(いつしか)のコーラスが入る。ミカは低音部の処理がうまくなっている。
そして♪(僕が)ぼくであるための居場所をーwowo のところだ。キターーー。ミカの張った声は大好物。♪「ための」とか♪wowo とか声の輪郭がハッキリとしていて張りがあるのでコーラスに埋もれないし節まわしのセンスもあって最高。ここ一番好きかも。
♪(だけど)受け入れられない〜 結海リード。
ミカの最後に被せるように(だけど)のコーラスが入る。ここも隙間がない。ミカの熱い温度をそのまま結海が引き継いで熱く歌う。♪そんな希望さえ見出せずにいた は音階がのぼっていくにつれ熱量も上がっていく。まーっすぐな結海の人間味が溢れているフレーズではないか。ここのバックコーラスも徐々に音量を上げて行くし、楽器伴奏も音量を上げ一気に盛り上がっていく。そこに乗る結海の歌声…オヂサマハナキソウニナル。
▪️2サビ
♪丸裸の心で〜 miyouリード。
さらに結海の声に被せて今度はmiyouが来た。
(このミカ→結海→miyouのリレーがたまらない!)
miyouの声はどうしてこうも人の心を打つのか。♪丸裸 だけでグイグイ刺さってくる。この天性の声で、高音域で、しかも正確なピッチで、聴く者はイチコロだ。
♪過去と殴り合い…ショッキングなワードではあるが優しくファルセットにくるんでいる。♪飛び越えるしかない亀裂…これも怖いワードなのだがここまで堂々と歌い上げられるとどうでもよくなってくる。
♪とび「こえ」る の「こえ」あたりの張った声が特に良い。
♪戻らない〜 かれんリード。
そしてさらにかれんが隙間なく続ける。♪戻らない昨日よりも はミックスボイスだ。先ほども書いたようにかれんは地声で出そうと思えば出せる音だ。ここでもミックスボイスを選択したのはかれんの表現。
さて、高音域はさらに続く。♪僕らの目に「う」「つ」るの「はー」 の「う」はG♯4、ここから一気に「つ」でG♯5へ上がり、最後の「はー」もG♯5という超高音。ここはさすがにファルセットだ。ん?ちょ待って。G♯4→G♯5って1オクターブ上まで一気に飛ぶということだよ!しかもこの超高音。
鬼のような音階の並び方だ。しかし音域モンスターのかれんはあっさりとこなしてしまうのだ。どうだ作曲家さん!笑笑。
最後の♪向こ「う」がわだー の「う」は1サビの結海パートと同様にわざと半音下げてマイナーになっている。
▪️Cメロ
消し去りたい〜 MAYUリード。
さて、かれんにMAYUがさらに被せてくる。CメロでMAYUを起用するのは珍しいのではないか。MAYUの場合、Cメロでも劇的に空気を変えるのではなく、優しく、あくまでも優しく空気を変える。ここもMAYUの世界だ。
♪Ah、僕は戻らない〜 miyouリード。
さらにさらにmiyouが♪Ah という強烈なエッジボイスを被せてくる。そして音量の上げ下げを工夫しながら歌い上げていく。ここのバックのHa-Ha-Ha-Haというコーラスは迫ってくるよう感じで超カッコいい。大好物のフルボリュームコーラスだ。 と、♪決めたからー で盛り上げていたHa Ha Ha Haが止み、さらには全ての音が消える。ブレイク。4拍の沈黙。何と2A→2B→2サビ→C とつなげたり被せたり1秒の隙間もなかった歌声がここでピタリと止む。だから沈黙が深い。
▪️落ちサビ
♪丸裸の心に〜 ミカ
落ちサビの文字通りストンと落ちた沈黙の中でミカが絞り出すように歌い出す。この曲の中で一番難しいところかもしれない。盛り上げからの落ちサビがこれ以上ないくらいの効果を発揮し空気が変わった、その中での歌唱は大きなプレッシャーだろう。ミカは地声とファルセットの切り替えを確かなピッチを丁寧にこなして大役を果たしている。
そのミカを支えるようなコーラスは教会の聖歌隊のようで、クリスマスイヴのクワイヤを彷彿とさせる。楽器は低音の弦楽器だけで全体的にアカペラ風の仕上がりだ。あまりにも素晴らしく永遠に聴いていたい。
♪戻らない〜 アサヒリード。
ファルセットから入るその声はミカと似ており、リードが変わったことに気づかなかった。♪昨日「よりも」あたりで、あ、アサヒだ、と感じることができる。空気を引き継ぐという意味でこれほどうまいバトンタッチはない。その後の♪「つしたいのはー」は先ほどのかれんのパートと同じで最高音G♯5だ。今更ではあるがアサヒの万能さに感動してしまう。君にできないことはないのか?これまでもメンバーが抜けた後をこなし続けた。高音やフェイクなどいろんな技もこなしてきた。"あの3人"のカバーは並大抵ではない。それを淡々とこなしてきた。それは知ってはいたけれど
やはりアサヒの才能にはあらためて驚かされる。
そしてそのG♯5の高音ファルセットの最後で再びブレイク。すべてが止まる。4拍の沈黙。さあ、大サビが始まる。
▪️大サビ
♪あるがままの〜 結海リード。
1サビのかれんと同じ♪あるがまま の「あ」でパーンと当てている。落ちサビのファルセットの後だけに結海の地声のインパクトが強く、感動がすごい。聴いていて体中から力が湧いてくる。それくらい結海の声は良い。この落ちサビ直後の最大のクライマックスに起用されたのは、一番成長したと言っても良い結海だった。このパートはもう何も言うことはなく、ただただ何度も聴いていただきたい。素晴らしい。
(ここで半音上げの転調をしていたらどうだったのか?
気になるところではある)
結海ラーさんはこの大サビで確実に泣くだろう。
♪選ばなかった〜 かれんリード。
結海の声に隙間なく続けるアンカーはやっぱりこの人、かれん。このパートの後半の♪今の僕ならー のところは1サビのファルセットとは少し違い、ミックスボイス気味だ。つまり音量を出せるファルセット。これは結海のエネルギーを引き継いだ結果だろうと思う。ラストは例によって♪い「け」るからー で一文字だけマイナーになり、その後Ha-Aa- の美しいコーラスでついにこの曲が終わる。(最後の「け」だけは半音上げて明るく終わってもよかったなあ、と個人的には思う)
全体を通して素晴らしい曲とアレンジだ。
怒涛のように続く歌と伴奏、ピタリとやむブレイク、このコントラスト。また時には優しく、時には迫り来るように、時には神聖に、変幻自在に空気を変えるコーラス。高音のボーカルとメンバーに合った音域。(これは大事なことで、例えば「今この瞬間に」のように低音域が多くて歌声がテレビで聴こえづらいという心配もない)など歌い手の威力が発揮されることがきちんと考えられた曲とアレンジではないか、と思っている。とおるすさんと尾上さんに感謝。
NHKのTVドラマ主題歌ということもありスタッフさんの気合も感じる。陸王ほどは視聴率が高くはないと思うが、世の中の関心がより多く集まってくれることを望む。飛びまくっている音階、高音をきちんと上がりきれるか、複雑なハーモニーとコンビネーション…
難しい曲でありハードルは高いが彼女たちならきっと最高のパフォーマンスを見せてくれるはずだ。もう1歩跳ね上がるための大きなチャンスが来ている。まさに見せ所だ。
この曲で、観るものを圧倒してほしい。そして紅白まで一直線だ。GoGoGo LGM!
(余談:このブログを書き終わったら何と「Memories」が配信されているではないか…これ、すげ〜!さすがLet's Groooove!!!!! Monster Opening/endingを
書いたCHI-MEYさんだ!)