一輪


先週の「Pages」に続き「一輪」が配信リリースされた。Pagesとは対照的にしっとり系の本格的なバラードだ。TBS日曜劇場「GIFT」の挿入歌ということでヒットすることに期待したい。



◾️構成

イントロ、1A→サビ 2A→2サビ

Bメロ→落ちサビ→ラストサビ


典型的なJPOPだと A→B→サビ という構成だが、この一輪はもっとシンプルでA→サビという構成だ。

このスタイルは

・シンプルで覚えやすい

・サビにすぐ到達するので、サビ=聴かせどころ に

 たっぷり時間を割くことができる

というのが特徴だと言えるかもしれない。


また歌割りは、最近のリトグリの傾向どおりに8小節ずつきれいにリードボーカルが交代するスタイルだ。


キーはA♭からスタート。

◾️イントロ

リードはアサヒ。伴奏無しでアサヒの歌声で入るので

ここは記憶音感が必要だ。

歌い出してすぐにこのパートはAメロかと思ったのだが、パートの終わりの伴奏を聴く限り、イントロだと思い直す。イントロにサビでなくAメロを用いたということだ。


ここのアサヒは話すように歌っている。歌い方で言うとまるでMAYUのようだ。この音量&低めの音域だと音程を取るのは難しい。

♪一人で咲くは「なー」のところ、ビブラートが切ない。♪「こ」れでいい「そ」れでいい のタッチの何と繊細なことか。


◾️1Aメロ

弦楽メインの美しい伴奏を挟んでMAYUリードから始まる。もうさすがMAYU。儚くて味わい深い。特に語尾が良い。話すように歌うお手本のようだ。

アサヒもMAYUも感情の量をうまく抑えている。サビで盛り上がるための制御だ。


♪ふと思い出すのは からかれんリード。小音量&低め音域は超人かれんの苦手分野だとは思うがアサヒ、MAYUの空気を引き継いでうまく次のサビへと繋げている。 


◾️サビ

おーー、ミカがいきなり感情を乗せてくる。泣いているかのようなエモーショナルなボーカルだ。素晴らしい。前のかれんパートの♪きみのすが「た」とミカの♪「ど」ーして までは(♪ねえ を挟んで)1オクターブの音飛びだ。この♪ねえ どーして はこれだけ音が飛んでいるからこそ、そして姉組3人が音量を抑えたからこそ、さらにミカが見事に感情を歌詞に乗せたからこそ、このフレーズが吹き上がるように前に出てきて心に刺さる。抑揚の付け方が見事だ。

さらに、かすかに聴こえる上ハモがぴったりと寄り添っていて、まさにリードに一輪の花を添えているようだ。これは結海だろうか?もう一人いる? ウーアーコーラスとの配分はどうなっているのだろうか?聴き取れない…。 

ところで、♪このむね「はー」はサビでの最高音。ここだけがファルセットのしゃくりだ。

フワッと裏返るのが気持ち良い。この「はー」はhiE♭だ。この後、サビを歌う他のメンバーはこのhiE♭をどのように表現するだろうか?


サビ後半はmiyouリード。こちらもエモーショナルだ。♪悔しさ「を」知った… の「を」はhiE♭。やはりきれいに裏返るファルセットだ。ミカリードの時と同様にここでも上ハモがピタリと寄り添っている。結海ひとりなのか?

それにしても♪君と咲いてたいんだー というフレーズが良すぎる。歌詞とメロディの相性が抜群。ミカパートが苦しみを表現しているのに対してこのmiyouパートはそれを乗り越えた喜びを表現するパートだ。

その後のmiyouの♪Woーのフェイクも素直なメロディでmiyouの声の良さが映える。

バックコーラスは今までであればウーアーで伸ばしていたところを♪ha ha ha と短く切ったハーモニーで希望や光を表現しているのかもしれない。


◾️2Aメロ

1番同様にMAYUリードからの入り。1サビの盛り上がりからMAYUの歌声で見事にクールダウンさせている。MAYUの歌声は清涼剤だ。

ミカリード♪逃げたくなるのは でベースが止まり、さらに次の♪きっと で一瞬すべての楽器か止まり、ミカの声だけなる。この静寂もオシャレ。♪咲いてると知った をより強くギアアップさせるための静寂でもあるのかな。この作家陣は抑揚に気を使ってくれているので曲がよりドラマティックになる。

ミカの♪咲いてると の前で一瞬アクセルを踏み込むような強めのブレス…、♪知っ「た」の絶妙な力のかけ具合…、どちらも大好物。


◾️2サビ

miyouリード。miyouが感情を込める時の裏返り方が泣ける。♪傷つきあっ「て」の「て」とか、もっと強いのが♪「ほ」んとうの君に の「ほ」だ。


次のミカリード。♪喜び「を」 は例のhiE♭だが、何と!ついに地声だ。1サビでのミカはこの部分はファルセットだったが、ここでは地声。ミカリードはこの後出てこない。ここがラストのリードだったのでミカの精一杯を出したのだと勝手に推測している。

そして♪咲かせたいんだー (君を のhiE♭では再びファルセット)  が希望の光をパッとさすようなアレンジでとても良い。


◾️Bメロ

通常のJPOPだとCメロに当たるブロックで、起承転結の"転"に当たるメロディだ。

Aメロとサビの繰り返しの中に挿入されるBメロは、より重要性を帯びている気がする。その重要なリード担当が結海。満を持しての登場だ。結海の芯のある強い声はこのBメロに合っている。

♪「ぼー」くの でいきなりhiE♭。ここはミックスボイスだ。

♪目の前で泣い「てー」 もがい「たー」

せなか「をー」の「」の3音はA♭→B♭→Cと階段状に上がっていき徐々に盛り上がっていくように作られたメロディだ。うまくできている。結海はこの3音を強調するように敢えてしゃくり上げている。


続いてアサヒリード。リードとしてはイントロ以来の登場だ。♪きみと「いう」そんざ「い」がー の「いう」は頻繁に出てくるhiE♭、さらに「いう」はそれより1音高いhiF(=F5)だ。この高音群を難なくクリアしていくアサヒが頼もしい。

♪もういっ「かーーい」

すすむん「だーー」の伸ばし方が正しくて強い。こちらまでビンビンと響きが伝わってくる。アサヒはどんどんパワフルに進化している気がする。

このBメロ、大好物です。

そしてアサヒの渾身の♪すすむん「だーー」が終わると同時にプツリと全ての音が止まる。


◾️落ちサビ

沈黙の中で、♪ねぇどうして… 結海のソロが始まる。感情を抑えに抑えて独り言のようにつぶやきながら歌う結海の声は苦しそうでもあり泣きそうでもあり…。♪ぶつかるたびに 向き合うたびに はほぼ口を開けないままで歌っているのではないか?これは結海の表現力だろう。

バックに流れる弦の音が絡みついてさらにエモーショナルになっていく。ラストの♪手を取るんだ「ろー」の伸ばし方が何とも悲しい歌声だ。


続くかれん。結海の空気を引き継いで抑えて歌う。しかしこのパートの次にはラストサビが控えているので後半には少しギアを上げて繋げている。その一連の音量調節がうまい。

ここで絶妙な細い声で上ハモしているのはアサヒ?どなた?こんな小さな声で高音の上ハモしているのはかなり難度が高いはず。


♪いま一つの輪になるー の後に♪woo woo woo woo  と音階が上がったところでブレイク。1拍のブレイクを置いて ♪HaーーA A Ahー の盛り上げが凄い。♪Haーー の出だしがかれん、コーラス、伴奏がピターッと揃っていて鳥肌! その後の♪A A Ahー のコーラスの厚み! 

この分厚いコーラスでキーA♭→Aへの半音上げの転調が完成する。半音上げの転調は特にバラードではよくあるパターンでいわば正統派なのだが、こんなに胸が熱くなる転調はめったにない。


かれんとコーラス、そして伴奏が文字通りひとつの輪になって盛り上がるシーンは間違いなくこの曲のクライマックスのひとつと言ってよい。

このパートも生歌で聴いたら、ド迫力で波動がドーーンと来ること間違いない。


◾️ラストサビ

ラストサビのリードを飾るのは、ここまでサビには登場しなかったアサヒだ。キーが半音上がっているが、その高音もものともしない。

♪この胸「は」 はhiEでファルセット。あまりにも優しくフワッと抜くのはアサヒの得意技だ。 ♪にげ「たー」くないからー の「たー」はhiDだが地声で力強く、かつエモーショナルに押し出している。


そしてラストのリードを飾るのはやはりかれん様だ。

最近のかれん様は、この音域だとピッチ、パワーで他のどのシンガーにも負ける気がしない。

♪「きみ」と咲いてたいんだーの「きみ」はhiE、かれんならこの音は地声で出せるはずだが、敢えてミックスボイスにしているのか。


♪君と生きてたいんだー のところ、結海がハモっていると思われるが、ここってもしかしたら……

♪君と生きて まだがユニゾンで、

♪たいんだー で上ハモに分かれていっていないか?

ユニゾンの後だから♪たいんだー の上ハモがものすごく効果的に浮き立って聴こえてくるのか?

曲の終わりとしてはカッコいい終わり方だしハーモニーで終わるとはリトグリらしい。


この曲はA→サビの繰り返し、半音上げの転調、などなど気をてらわないシンプルで素直な要素で出来上がっているのだが、それぞれのパートでボーカルやコーラの一体感、強さ、厚さによって特別な歌に押し上げられている。そして何より6人の歌に込める感情や魂が素晴らしく、小細工など不要、真っ向勝負をしているところが聴く者の心を揺さぶるのではないだろうか。

ここまでいろいろと書いてきたが、SNSでMAYUが言っている通り「ありったけの愛を込めた」感情メインの歌なので、技術的にどーのこーのよりも素直な気持ちで歌を、声を、感じていただきたい。