Cメロについて


(ご興味のない方は読み飛ばしてください)


J-POPの代表的な曲の構成は

イントロ

1番 Aメロ→Bメロ→サビ

2番 Aメロ→Bメロ→サビ

Cメロ→サビ(または落ちサビ、大サビ)

である。

もちろん変化形はたくさんあり、これはあくまでも代表的な例だ。


余談。私も詳しくないのだが米国の場合は、

Verse(Aメロのことなど)→Chorus(サビのこと) が基本だと言われている。派生としてPre-Chorus(例えばBメロのこと?)とかBridge(Cメロのこと?)とか呼ばれるブロックもあるらしい。


今回はこの中で「Cメロ」にスポットを当ててみたい。

普通はその曲のイメージに直結するサビこそが曲の花であり脚光を浴びがちだ。確かにCメロはなくても曲は出来上がる。必須ではない。しかしCメロは、そのサビ、しかもクライマックスであるラストのサビをさらに輝かせてくれる存在だ。無いと味気ない。こちらにもっと光が当たっても良いと思うのだ。


Cメロはおおよそ、2サビの後ろに位置し、最後のサビ(落ちサビや大サビ含む)へとつなぐフレーズだ。後ろのサビを盛り上げる必要があればCメロで盛り上げの予感を醸し出してサビへとつなぐし、後ろのサビが落ちサビであれば、落とす予感を醸し出してサビへとつなぐ。曲をドラマティックに仕上げてくれる魔法の装飾だ。

では、ふリトグリの曲でCメロはどれくらい用いられているのだろうか?

今回、デビュー曲「放課後ハイファイブ」から「MASTERKEY」までのオリジナル曲105曲についてCメロを調べてみた(モノズキカ!) 。

厳密に言うと、そのうちLet's grooooove!!!!!Monster Opning/Ending は通常の構成を無視したライブ用のものなのでこの2曲を除外して全103曲。

このうち99曲にCメロが存在する。はずれた4曲のうち「CLOSE TO YOU」と「夏になって歌え」は2サビの後にコーラスが間奏的に入るが、このコーラスがCメロ的な要素もあるように感じる。ので、純粋にCメロがないのはわずかに2曲。

「空は見ている」と「Dear My Friend」だ。ほぼ全曲にCメロがあるということはかなりの驚きだった。

他のJ-POPもそうなのであろうか?


Cメロをきちんとイメージしていただくために具体的に例を取ってみる。

デビュー曲「放課後ハイファイブ」だと ♪憂鬱な気分並べたなら…のブロック。

ヒット曲「世界はあなたに笑いかけている」だと ♪Ah, ah, 気づいてよいつもより良い予感が…のブロック。

最近の曲「Join Us!」だと ♪自分を愛せる君を愛したい…のブロック。

最近の曲でもう一つ「WONDER LOVER」だと ♪すべては変わり甘くとけていく…のブロック

がそれぞれCメロに当たる。

皆様も「あー、ここかー」とCメロの雰囲気が感覚的におわかりになるだろう。起承転結で言えば"転"の部分に当たり、流れに沿って軽い変化の時もあるし、曲によっては曲調がガラリと変わることもある。

いずれにしても次のサビの雰囲気を最大限に引き出す"お膳立て"のフレーズだ。それだけにCメロのリードボーカルは責任重大だ。音量、声質、歌い方などを技術的に駆使してサビにバトンを渡す。「さあ、サビ行けーー」というバトン。


リトグリの中で「これは鮮やか!」と感心するCメロを勝手にいくつか挙げてみる。完全に私の好みによる選択だ。

(*サビの前にA,B,Cのメロがある場合、私の言ういわゆる"転"のCメロは「Dメロ」となる。ここではあくまで"転"のメロディをCメロと称することにする。ご了承ください)


◾️Go My Way!

Cメロは ♪同じ情熱をみんなでそう抱きしめて…のブロック。ノリの良い長調のメロディがAメロ、Bメロ、サビと続き、ご機嫌に2サビが終わった後、いきなり突風が吹くような感じのCメロが入る。

リードは芹奈。前半の♪同じ情熱を… でお腹に力の入った声が響き始める。だがここではまだ抑えめ。次の♪そんな道のりを「キ」セキと呼ぶはずさー 信じ「てー yeah」で芹奈らしさが出現する。「キ」は前の「を」から6度ほど飛んだ高音だが、ピッチがズレることなくキレイに、しかも力強く「キ」と入る。音が飛んでもキレイな高音を出すのは芹奈の真骨頂だ。どれだけ飛ぼうが正確だ。この点において彼女の右に出るシンガーはそうはいない。 

この「キ」はCD音源だとそれほどでもないが、実際のライブだとかなり強調されており、聴いた瞬間に鳥肌が立つ。信じ「てー yeah」の部分、ピッチはもちろんのことパワー、yeahの下り音階のセンスは、さすが芹奈だ。うまい! 結果としてここでグンと盛上がり、その後のサビへとうまくつないでいる。鮮やかにCメロの役割を果たしている。


◾️明日へ

Cメロは ♪ボロボロのまま笑っていた僕に…のブロック。これも「Go My Way!」同様にこのブロックで曲調が変わる。2サビまでは明日への決意は感じながらも実はメロディ自体はおだやかな長調である。♪ボロボロのー で突然に短調を感じ、一瞬で気配が怪しくなる。リードはやはり芹奈。芹奈が歌うと♪ボロボロ が本当にボロボロに感じる。♪次のドアはもうすぐってことを で感情がほとばしる。♪汚れ「た」靴のままでいいからと の「た」へ込める執念がすごい。これもCD音源では感じられないがライブだと「た」は瞬間的に裏返り、ものすごい迫力を感じることができる。思わず彼女の世界に飲み込まれる。最後の♪言えるんだーAhー で次の落ちサビに向けて音量を落とすと思いきや、声を張った状態のままでこのブロックを終える。で、直後にストンと落ちサビに突入するので余計に効果的になっている。普通なら落ちサビは他のメンバーに変わるところだが、この曲ではそのまま芹奈が続けるので自分にバトンを渡していることになる。

ライブではCメロと落ちサビの間に芹奈独特の"間"がある。この沈黙の長さは芹奈に一任されているように見えるが、いつも絶妙の"間"である。

このCメロ〜落ちサビの連動は見事という他ない。


◾️幸せのかけら

Cメロは ♪前に進んでいるかどうか… のブロック。

この直前のアサヒリードの2サビの最後♪探してたー から伴奏の雰囲気が変わる。風雲急を告げる、といった感じの弦楽器(シンセサイザー)が煽ってからのCメロだ。伴奏の難しいリズムの上でしっかりとそのリズムに乗って芹奈のボーカルが冴える。(芹奈のリードの曲だけを拾っているわけではないのだが…)

あきらかにAメロ、Bメロ、サビとは違った世界を表現している。この曲はリトグリの中でも最もバラード的な曲だと思っているが、このCメロだけを切り取って聴くと激しい曲だ。"もがき苦しんでいる時にあなたの助言に救われた"その感謝をこの激しいメロディに込めている。このCメロのリードボーカルは芹奈をおいて他にはいないだろう。さらにこのブロックの最後♪I feel you love のところでかれんが絶妙なフェイクで絡んでくる。そのあとは以前にこのブログでも取り上げたかれんの見事な落ちサビ&サビへと移行する。

いやあ、芹奈&かれんのコンビネーションはやはり最高だ。


◾️Love To The World

Cメロは ♪心を見せつけろ… のブロック。私の一番好きなCメロだ。ここでもやはりABサビとは曲調がガラリと変わる。この曲が一番変わりようが激しいのではないか。サビまではキーCだったが、このCメロではCmに転調する。主音は同じC(ド)同士で長調から短調に変わるので曲調が変わるのがわかりやすい。

そしてここでもまた芹奈だ。芹奈のボーカルが強い強い。出だし♪「心を」のところでは一瞬manakaかと思ったが強い時の芹奈だ。♪You gonna be 「strong」,

gonna be a 「star」で地声の高音E♭を簡単に出す。

そして…さらにCメロ後半のリードをかれんが引き継ぐ。ここでも超高音が続く。♪輝いていれば「い」い の「い」はなんとG5(HiG)!ミックスボイスでなく地声に聴こえる。鬼のような高音だ。しかもその前の音「ば」はC5なので5度も飛んでからのG5だ。しかもこの「い」の近辺は高音が何音か続く…かれんの喉はどうなっているのだ?おそるべし、かれん!

余談だが芹奈もその昔「I Want You Back」の後半で地声でC5♯(HiG♯)を出している。このふたりの威力は計り知れない。

このCメロの後、大サビ〜endingの♪Yeah Yeah Yeah Yeah Oh へと繋がって大いに盛り上がって曲が終わる。これこそがCメロの効果だ。鮮やか!

いや、このCメロはいつ聴いても何度聴いても凄すぎる……参りました🙇


◾️おかえりなさい(おまけ)

最近の中で効果的なCメロというとこの曲かな。

Cメロは♪思い出がいくつも生まれて…のブロック。

この曲のキーはEなのだが、♪思い出がいくつも でコードはC、♪生まれて でD、育まれていたよー でEに戻ってくる。これはCメロと同時にキーEmに転調したものとみなして良いと思う(詳細説明省く)。つまり「Love To The World」同様に同じ主音(E)の長調から短調への転調。ドラマティックに曲調が変わる効果的なCメロだ。

この直後、アサヒの ♪「か」なしみも喜びも全部…の「か」の抜き方は素晴らしい。「I Promise You」の

♪不器用で「ねえ」うまく…の時と同じ抜き方だ。

「か」だけが"話し言葉"で「なしみ」以降は"歌唱"に戻るイメージ。アサヒ独特の抜き方なので特許を取っておいた方が良い笑笑。


以上、いくつか私の好みのCメロを挙げてみた。

繰り返して言うが、芹奈がリードボーカルを取るCメロを拾ったのではなく、好きなCメロでリードを取っていたのが芹奈、ということだ。

考えてみれば、曲調を激しめに変える、というシチュエーションは芹奈にピッタリだし、スタッフさんも同様に感じてそのブロックを芹奈に任せた、ということだろう。

興味を持たれた方がもしもいらっしゃるなら、いろんな曲のCメロに注目して聴いてみてください。

多くは2サビの後ろに位置していますので、ぜひ。


後述になるが、たまたまアルバム「Juice」の曲ばかりになってしまったことに今更気付いた。

やはり「Juice」は名盤だなあ。

そして「Love To The World」……またやってくれないかなあ。再シングル化。クルマや清涼飲料水、その他たくさんのCMにもピッタリ。これ以上ないよって言うくらいCMにもイベントにも適した曲なんだけどなあ。争いのある今の世の中にも合っているし。

どうかなあ。コウハクニモピッタリ……