何だろう。不思議な感覚だ。
TVアニメMIX MEISEI STORYでこの曲の一部を前もって聴いた時には、うーん、嫌いではないけど…あまり記憶に残らない、というのが正直な第一印象だった。
ところがどうだ。フルで聴いたら……すごく感動した。ああ、この曲好きだ、と素直に思えた。心が奮い立つ。歌の歓びを感じるのだ。
そうさせた正体はただひとつ。
コーラスだ。
リトグリ史上最も全力、大音量のハーモニーではないか。このコーラスはもはやゴスペルの域だ。
さらに正直に言うと、主旋律自体はカッコよさや派手さはなくむしろ素朴さを感じた。おそらくこの主旋律はコーラスとセットで作られたのではないか、と勝手に想像する。
穏やかなAメロ辺りは、音階が下降方向に連なるが、サビなどの盛り上がるパートでは音階が上昇方向に連なる。そしてその音階の上昇に寄り添うように熱いコーラスが被さってくる。
コーラスとセットになると威力を発揮する、生きているようなメロディ。そう感じる。
まさにリードボーカルのメロディとコーラスが一体となった壮大な曲だ。だから感動を呼ぶ。
曲の構成はシンプル。長さも3分29秒という潔さ。キーはGのみ、転調なし。
小細工は一切なし。さあ、このハーモニーをカラダで感じてみろ、という堂々とした構えだ。
以下、パートごとの感想。
◾️イントロ
音量を抑えた♪ハー のハーモニーから入る。
1回目はピュアなコードで2回目がわずかに濁りを仕込んでいる気がするのだが、気のせいか。(聴きすぎて逆にわからなくなってしまいました…)
とてもキレイ。最後の♪フーもキレイ。
昔の「永遠に」を思い出してしまう荘厳な雰囲気のイントロだ。
◾️1Aメロ
♪こんなに走っても…
♪みっともなく足掻かずに…
リードはmiyou、MAYUのリレー。
苦悩を表現する切ないパートなのでハスキー2人組からのスタート。低音の抜き方がうまい。
2人ともアクセントの付け方が小節の頭を意識した歌い方だ。メロディが、4拍子の頭の1拍めから入るのでなく4拍の終わりからいわゆるクって始まるので、正確なリズムを脳内で確保するために本能的にアクセントをつけているのだろう。
そしてコーラスがMAYUリードから静かに入り始める。序章。
◾️1Bメロ
♪悔しくて泣くのは…
結海とミカのコンビネーションだ。
ドラムにエコーがかかっているのか?徐々に盛り上げてきている。
ミカも低音は抜きながら何とか頑張っているね。
◾️1サビ
♪君が見ていた景色を…
リードは前半アサヒ、後半かれん。
1Bメロの終わりでシンバルがピシャっと鳴り止みミカの声が切れると一瞬の静寂。
その後にアサヒのキレのあるリードが入ってサビが幕を開ける。コーラスが一気になだれこんでくる。
そしてかれんリード。
パワフルだけど余裕のあるリードは、もうさすがかれん様。声から1ミリも空気を出してたまるか、という声100%ジュースのような張りのある歌声がサビに映えるねー。
コーラスは2手に分かれているか?
4拍子の頭1拍めから♪アー と入る組と、3拍めから♪アー と追っかけて入る組。この2段階の♪アーが
たまらなく好きだ。大勢で歌っている感がある。
(これ、メンバーが複数回被せているのか?)
◾️2Aメロ
♪周りから見たらさ…
♪君がいてくれたから…
前半は結海、後半はアサヒのリード。
2人とも低音を何とか耐えた。結海はあまり抜かずに、アサヒはため息のように抜いて。
この辺り、結海が将来どう表現を変えていくのか楽しみだ。
◾️2Bメロ
♪笑わずに僕の言葉を…
リードはMAYUとかれんのコンビ。
かれんの♪あーきらめたくないんだってー が妙に良い。特に頭の♪あー と最後の♪てー の箇所、感情がビンビン伝わってくる。
◾️2サビ
♪君が託した勇気を…
リードはミカと結海。
いいねー2人とも。音階が上がるところ、ミカはしゃくり気味なのにに対して結海はスパンと一発で次々に当てていくところが対照的で面白い。
歌い慣れている VS 初々しくて真っ直ぐ という構図。結海はホントに楽しみだ。
コーラスの盛り上げもあり、このあたりは拳を握って聴いてしまう。
◾️Cメロ
♪頑張ることから逃げていた…
miyouの声が心に沁みる。最後の♪すすめー の箇所、ここは声を張った方が良いのか、抜いた方が良いのか?これは好みが分かれるところだ。
miyouは抜いてしっとりと表現してくれた。おそらく次の落ちサビへのバトンの渡し方を本能的に考えたのだと思う。さすがだ。
◾️落ちサビ〜サビ
♪君が見ていた景色を…
♪精いっぱいやったかなんて…
アサヒリードの落ちサビ。
♪けしきをー の切ない抜き方。これ以降も声を抑えてその分、感情を溢れさせている。
ここまで消えそうなくらいに落として歌うのはこれまでなかったかも。
miyouリードのサビはコーラスとの掛け合いが見せ場だ。♪いっぱーい とか♪もうー なとのリードと同期してハモるところ、それからその後の絡み合いも素晴らしいコンビネーションで一体感満載。
そして♪明日を変えるんだー の決意の箇所のコーラスとの合流となる。見事なアレンジだ。
◾️大サビ〜ending
♪ほら…
♪さあ、行こう…
前半はミカリード。 ♪ほらー はレ(D4)から上のレ(D5)へ1オクターブ飛んでいるが、完璧!
しゃくるのではなくD5にほぼ当てに行っている。
だからパンチがある。
後半アサヒリード。♪さあ行こーー も同じくD4からD5への1オクターブの飛び。こちらも完璧!ここはアサヒの凄ワザの宝庫だ。
まず♪さあ のピッチの正確さと声の芯の強さ!
青春フォトグラフの♪まーまーでーいい の声の強さを思い出す。かつて私の中にアサヒの潜在能力の高さが刻み込まれたシーンだ。
そして♪行こーー のオクターブ飛びの正確さ。こちらもしゃくることなくピタリと当てに行っている。
そして仕上げは♪行こーー の伸ばし方。「行」から高音域の「こーー」へ地声で到達するのだが、その後「こーー」で揺らぎ(音階で言うとレーミレミレーとなるのか)はいつのまにかファルセットに変換しているという器用さ。
ミカの♪ほらー から怒涛のハーモニーでコーラスが押し寄せる。♪Wo wo wo wow wowoの波だ。
この波が何回も繰り返される迫力はどうだ。
メンバーの顔の前にマイクがあるのではなく、少し距離を置いたところから何十人もの声が合わさった束のようなハーモニーは圧巻だ。
教会でも屋外でも、とにかくみんなの声を一つのマイクで拾うゴスペルをイメージした。
怒涛のハーモニーの中、miyouのフェイクが冴える。
シンプルだがセンスを感じる。音楽を聴き慣れている人のフェイクだ。
そしてオーラスは全ての楽器伴奏が止み、コーラスだけとなる。
♪Wo wo wo wowwo が2回響き渡り、余韻を残して幕を閉じる。
もう拍手しかない。👏👏👏👏👏👏
力が湧いてくるような感覚。
これをステージの最後に演られたら泣いてしまう。
TVアニメMIX MESSEI STORYでは落ちサビ、サビ、
endingがないので怒涛のコーラスの波を存分に味わえない。
とは言うものの、サビはきちんと一回あるので私の聴き方が良くなかったのだろう。反省。
この曲は間違いなく心に刺さる名曲だ。