Silent Wish
EP盤「Your Winters」に収録されている「Silent Wish」にも触れておきたい。前回取り上げた「クリスマスイブニング」がミドルテンポの軽快な曲であるのに対してこちらはしっとりとしたバラード調の曲だ。
典型的なJPOPバラードであり1回聴いてスーッと頭に入る馴染みやすい曲ではないだろうか。
では、いつものように曲の進行に沿って思いつくままに感想を。
キーはE♭で転調無し
◾️イントロ
コーラスが美しい。静かに入り、中盤で膨らんで終わりはまた静かになる。こんな短いイントロでもドラマがある。ちなみに一旦盛り上がったものを静かに終わらせるのは、次の1Aの空気をあらかじめ作ってあげてバトンわ渡すためでもある。
◾️1A
定番のアサヒ出だしだ。Aメロというパートは静かに入るパターンが多い。静かに=声量を絞って歌うのは難しく、一番適しているのはアサヒと結海ではないか。
ここのアサヒリードもいつもに増して丁寧で、1音1音のピッチを大事に大事にしているのがよくわかる。
声量を抑えながら息の混ぜ方、抜き方、細いビブラート、エッジボイス、と使い分けている。さすがだ。
♪2人だけの思い出… 続く結海リード。このピュアで潤った歌声はしっとりソングには本当に映える。
♪君といたら…の「い」と「た」は普通に歌っているが6度も音階が飛ぶ。語尾のビブラートもキレイだ。
バラードとしては極上の出だしではないか。
◾️1B
リードMAYUの優しい声が空気をつくる。ビブラートが儚い。
アサヒリードの♪突き刺さるん「だーー」のロングトーンがいきなり凄すぎる。ストレートからビブラートに変化するのだが、よく聴くと、このビブラートの振れ幅がだんだん大きくなって最後はビンビンという震え、共鳴がこちらにも伝わってくるのが凄い。シビレるとはまさにこのことだ。このロングトーンは、共鳴の度合いで言うと過去一ではないか。こんなに震えを感じることがあったか?
この渾身のロングトーンは、さあ、サビは行けー、というアサヒの強いメッセージだろう。そのメッセージはメンバー全員に伝わる。ひとつの曲において、このように次へ次へとメッセージを渡しながら流れを作っていく……これがリトグリ流だ。リードがメンバー間でコロコロ変わっていくグループならではの流れだろう。
1番のクライマックスはサビだけではなく、1Bからサビへと移る、まさにこのアサヒパートもクライマックスだと私は受け取った。このパートを聴くだけでもこの曲の価値はある。
◾️1サビ
ミカリード。アサヒの熱量を受け取ってしっかりと歌う。このミカのパートでもアサヒと同じ高さの音階が何度も出てくるが、こちらはストレートだ。
このサビはコーラスのハーモニーが素晴らしい。リードとともにコーラスもまた主役。♪言えない「ま」「まー」の箇所では下ハモの1人が「ま」から「まー」へと音階を下げるがこれは普通。ところが同じく下ハモのもう1人が「ま」と「まー」を変化させずそのままの音階を続けている。これによって和音をわざと不安定にさせ、ハーモニーに緊張感を持たせている。
頭の中では本能的に「解決」したいのだが、そのままかー、という建付けがオシャレ(不安定な状態から安定の状態に戻すことを音楽用語で解決という)。
バラードは単純になりがちだが、こうして変化をつけて"大人感"を醸し出している。
リードはミカの後かれんへ。地に足をつけたようなしっかりとした歌声だ。♪ひとりきりの では「き」がE♭、「り」がDに音階が飛ぶ。7度半だ。1オクターブ上の半音下まで飛び、声は地声→裏声へ難なく切り替えている。かれんには簡単なことだ。
miyouリード。サビだからと言って強引に強く歌うのではない。♪your loveが3回あるが、1回目は普通の声量、2回目で強く押し出し、3回目は弱め、仕上げのフェイクは儚く…というmiyouの表現力が素晴らしい。
この儚い♪haーーというフェイクの終わりに微かに追っかけのフェイクが聴こえるが、これはどなた?細かい仕掛けに笑ってしまう。
このフェイクで次の2Aに向けて静かな空気に戻してバトンを渡す。
◾️2A
MAYUリード。ずっとフラットしているように聴こえるのだが、これが許されるのはMAYUだけだろう。この独特の声があってのことだ。
続くミカ。♪大丈夫って笑っても では子供のような声で、♪涙こぼれそうで で乙女のような悲しい声に変わる。♪こぼれそうで はほんのわずかに"わざと上がりきらないボイス"でより切なく感じてしまう。さらに♪夜は深くなる でエッジボイスやコブシを駆使するなどこの2Aはミカの技術と心が両方つまったパートだ。素晴らし過ぎてあざといくらいの表現力だと思う。ここではサビのまっすぐなミカとは全く違ったミカが出現しており、まさにカメレオンボイスだ。ここのミカ、素晴らしい、大好物です。
◾️2B
miyouリード。ミカの温度を受けて切なく歌うパートだ。♪届かない では声量を絞りに絞っている。音階が上がっているのに声量を抑え込むのは難しい。この時のmiyouの表情が目に浮かぶ。
続く♪サンタじゃなくてー は一瞬アサヒかと思ったが結海だった。♪君に来てほしいよーー は1番のアサヒとは違い、どちらかと言うと平然と、凛とした感じで伸ばしている。結海らしいとても美しい歌声だ。しかもピッチが完っっっ璧。ここでも(アサヒほどではないにしろ)共鳴の震えがこちら側に伝わってくる。本当にキレイな歌声で聴き惚れてしまう。
◾️2サビ
かれんリード。ビブラート無しのストレート。強くて豪速球のような歌声がいかにもかれんらしい。
そして字ハモは相変わらず気持ち良い。
♪痛いほ「ど」にー の「ど」だけがユニゾンになるのか(どうでもいいか笑)。
続くアサヒリード。やはり1サビ同様にここでも♪聖な「るよ」るに で7.5度の音飛びが出てくるがアサヒなら普通にこなすよねー。
miyouリードでは♪叶わない恋だとして「も」の「も」の終わりで一瞬裏返っていてmiyouが気合いを入れている事がわかる。次の♪I need love, your love に備えての気合いだ。ここの♪I need lo---ve, your lo---veの伸ばしはmiyouのパワーの見せ所だろう。最後の♪your love で少しメロディを変えているところにmiyouの自由な感覚が出ている。そしてこのmiyouパートもコーラスが厚くて大好き。
◾️Cメロ
Bメロの終わりでストリングスが音階を上らせてスリリングな盛り上がりの予兆を感じさせてからのCメロだ。これによって聴く方は起承転結の「転」を感じる。
♪Silent tears falling はミカリードだが、字ハモで主旋律を厚くし、さらに追っかけコーラスもハーモニーになっており、その2つのハーモニーが織りなすトータルのハーモニーが素晴らしい。
Cメロ後半はまたまた見せ場だ。かれんリードの♪まだ君を believe believe のコンビネーションはどうなっているのか! ♪君の の追っかけコーラスはしっかりハモって、その後の"believe5連発"!
1発目がハーモニー、2発目以降は1人追っかけコーラスがどんどん重なっていく。1,2,3発目は順当に音階が上に上に重なっていくが4発目で一旦下がって曇った空気を出しておいてからの5発目のかれん?の突き抜けるような華やかなハイトーンだ。それぞれの音階は省略するが、5発目のハイトーンはhiF(=F5)。このコンビネーションはあまりにも素晴らしい。このCメロだけでもいいから映像が欲しい。誰が、どのような順番で、歌っているのか。そしてグループとしてどのようにタイミングを合わせているのか、その姿を実際の映像で確かめたい。せめてlead off ver.でも聴けないか…ムリですねえ笑。
◾️ラストサビ
♪君が好きなのに…はアサヒリード。熱量が高い。感情を込めて一生懸命に歌うアサヒの姿が目に浮かんできそうな歌い方だ。ラストサビらしい歌い方をしなければ…と理解した歌い方だろう。
♪君に会いたいのは私だけ… のところは結海。これだけ聴いてきたにもかかわらずアサヒか結海か迷ってしまった。この2人、こんなに似てたっけ?笑
♪ひとりきりのChristmas eve のところは1サビ2サビと少しメロディを変えて"ラスト感"を出している。
そしてラストサビ最後のブロック♪ほしいのはgiftじゃなくて…のリードはミカだ。1サビのリードはミカ→かれん→miyou、2サビのリードはかれん→アサヒ→miyouだったのでここも miyou?と思ったが最後は安定のミカで締めてくれた。
そしてラストサビでもコーラスは変わらず厚みがあって素晴らしい。2サビ以降は厚いハーモニーがずっと続くのでこの曲の主役はリードと並んでハーモニーと言っていいだろう。ハーモニー曲である「愛しさにリボンをかけて」の系譜を踏んでいるのは嬉しいことだ。
曲の感想はここまでだが、さて、
最後の♪Just your love からうっすらとバックコーラスが絡んでくる。よーく聴かないとわからない程度だ。私も歌詞を見て初めて気づいた。
うっすらと絡むのは
♪Snow…falls…Christmas night
Wish…made…silently
Lights…fade…far away
という歌詞だ。
この歌詞をどう捉えれば良いのか悩んでいる(メロディ重視の私が珍しく歌詞を気にしている)。
というのも、この曲のendingではすべての伴奏が終わった後にシャンシャンシャンシャンと鐘の音が鳴るのだが、この鐘の音の意味するところは何なのか?この歌詞に関係しているのか?
EP盤に収録されているもうひとつの新曲「クリスマスイブニング」はhapayな歌だ。♪クリスマスは君の味方 であり最後には♪つなぐ手と手 となる。
一方、この「Silent Wish」は♪叶わない恋 の歌ではある。だが…この最後の歌詞と鐘の音によってどんでん返しになるのではないか? どうなんだろう?
①鐘の音に特に意味はなく、単にクリスマスソングとしての効果音。
②最後のバックコーラスの♪Lights fade far away のように、やはり光は消え去り、"君" は来なかった。
③叶わない恋と思っていたが♪believe という歌詞、そしてラストの♪Wish made silently という歌詞もあるように、信じていたら最後には "君" が鐘の音とともにやってきた。
④その他
みなさまはこの①〜④うちのどれだとお考えでしょうか?よろしければご意見をお聞かせください。