『拝啓 吉田さん②』 | 真マロン白書

真マロン白書

男が魅せるジャニヲタ道 人はみんな笑うけど そこに彼らがいる限り 語る言葉はすべて真 

 

 

 

この荷物運びの仕事は交代制で。

 

 

【早出】【日勤】【遅出】

 

 

いつもオレは早朝6時から昼13時までのシフトが多かった。【早出】

 

 

早出のスタッフは昼から自由に遊べる。

 

 

だから仕事が終わったらみんな仲間内でゲーセンに行ったりパチンコ行ったりしてた。

 

 

でもオレは人見知り日本代表。(自称)

 

 

みんなと同じように遊びに行くわけにはいかないのだ。

 

 

その日も当たり前のようにタイムカードを押して足早に帰ろうとしていた。

 

 

すると

 

 

外で吉田さんがタバコを吸って誰かを待っていた。

 

 

お疲れ様でしたと声をかけるまでもなく、当然のように向こうから話してきた。

 

 

おもむろにスタッフルームの横に併設されている自販機に行ってペプシを買う吉田さん。

 

 

ペプシコーラ(500ml)

 

 

それを目の前で開けてオレに渡す。

 

 

 

缶の500mlて…。

 

 

 

おごってもらえるのは嬉しかったんだけど、飲むのに時間がかかる。

 

 

とどのつまり彼の話し相手として捕まったわけだ。

 

 

 

誰かを待っているようだったのでそこら辺を聞いてみた。

 

 

そしたら

 

 

『オンナが今から迎えに来る』とのことで。

 

 

耳から血を流す原因となった彼女が見れるのかと思ったら

 

 

 

どうやら違う相手みたいだった。

 

 

 

しばらく待っていると

 

 

薄緑のベンツがやってきた。

 

 

 

こんなやつ

 

 

いかにもお金持ってそうな婦人が車から降りてきて。

 

 

吉田さんの手提げカバンを持ったかと思うと、オレには目もくれずにそのまま彼の手を引っ張って去っていった。

 

 

今のは一体誰なんだ…。

 

 

スタッフルームのすぐ横には京都駅。

 

 

線路に敷かれたバラスト独特の臭いにまじる婦人の香水が違和感を増長させる。

 

 

コーラですっかりパンパンになったお腹をさすりながら走り去るベンツを見送った。

 

 

 

 

 

 

次の日

 

 

謎の多い吉田さんに少し興味が出てきた。

 

 

ところがこの日

 

 

彼は休みだった。

 

 

となるといつも通り誰とも話さないオレがそこにいたのは言うまでもない。

 

 

一応、10時に昼休みがあって。

 

 

この日はたまたま別のスタッフと休憩を取ることになったんだ。

 

 

このスタッフはいつも腕にだけ汗をかく変わった人で、周りも距離を置いていた。

 

 

幸福の科学とかいう宗教を信仰してたのが理由でみんな怖がってた。

 

 

そしてその信者とスタッフルームに二人。

 

 

コンビニ弁当を食べる。

 

 

 

 

 

変わり者二人の咀嚼(そしゃく)音が室内に響き渡る。

 

 

後輩だから何か話すといった気遣いを当時のオレはまだ持ち合わせていない。

 

 

静まり返るスタッフルーム。

 

 

デスクで弁当を食べていたオレはシフト表を見つける。

 

 

そこに吉田さんの名前があったので

 

 

『今日は休みなんですよね』とオレは口を開いた。

 

 

そしたらそのスタッフは

 

 

『吉田は変わってるから相手にしない方がいい』と言ってきた。

 

 

 

 

…。

 

 

 

……。

 

 

 

…いや。

 

 

 

アンタのが相当変わってんだろ。

(今ならマジで言ってるかもしれん)

 

 

荷物運びのスタッフは全員で10人ちょっといたんだけど

 

 

吉田さんを嫌ってる人が意外と多くて。

 

 

理由はわからないけどなんか嫌われてた。

 

 

でも、次の日

 

 

なぜ彼が嫌われているかわかったんだ。

 

 

 

いつものように貨物用のコンテナへ搬入する作業をしているとき

 

 

 

吉田さんとスタッフが揉め出した。

 

 

原因は吉田さんの香水だった。

 

 

彼はいつもいい香りがしてた。

 

 

ところが搬入スタッフとして香水の匂いがするのはいただけない。

 

 

そこを指摘されたのだ。

 

 

吉田さんも素直に謝ればいいんだけど、怒ってる相手スタッフに対して噛み付く。

 

 

 

『おたくの汗の臭いのが問題やで』

 

 

 

眉一つ動かさず冷静に言い放つ吉田さん。

 

 

更には

 

 

『オレが香水を付けるようになったのはアンタの汗の臭いが原因だ』

 

 

と、相手の心臓を突き刺すほどの一撃を喰らわせる。

 

 

言い方の問題はさておき

 

 

たしかに吉田さんの言ってることは正論だと思った。

 

 

揉めてるスタッフはいつも犬の背中みたいな臭いがしてた。

 

 

匂いが気になるならまず自分をどうにかしろ

 

 

この理屈はかなり正しい。

 

 

よくジャニヲタさんが『私は良識のある人間です』とばかりに

 

 

他のヲタさんに対してマナーとかモラルを声高に呼びかける姿を見る。

 

 

だが、根本的な問題がスルーされている。

 

 

そもそも『良識のある人間=ジャニヲタ』とはならない。

 

 

であるのにも関わらず

 

 

マナーとかモラルなんてのを声高に叫ぶのは

 

 

嫉妬を正当化しているだけだ。

 

 

ヲタ活で遠慮なんてタブーだ。

 

 

マナーやモラルを強調するのであれば、ジャニヲタ辞めて茶道とか作法教室とか趣味を変えることをオススメする。

 

 

他人になにかを指摘するのであればまず自分から。

 

 

ジャニヲタさん同士で指摘している様は、実にみっともないと言えよう。

 

 

 

 

 

 

 

結局、そのあと吉田さんは揉めたスタッフを完全にねじ伏せた。

 

 

ここで働いている人間の大半は変わり者ばかり。

 

 

もちろんオレも。

 

 

まともな場所から追い出されて結局辿り着いた僻地が今のアルバイトだったわけで。

 

 

アニメオタク・高齢失業者・ゲーマー・引きこもり・元暴走族・宗教・人見知り

 

 

そびえ立つビルの隙間で社会に馴染めずにそれでも生きるために働く。

 

 

吉田さんもジゴロな生き方の影に相当いろいろなことがあったに違いない。

 

 

コンテナの荷物を待つ控室。

 

 

一昨日は耳から血が流れてるか見せに来たのに

 

 

さすがの吉田さんも喧嘩の後は気まずいようだ。

 

 

こちらから声をかけるのも難しい。

 

 

こういうときは嵐が過ぎ去るのを黙って待つほうがいい。

 

 

よく考えたら彼が他のスタッフと話している姿をあまり見たことがない。

 

 

控室で荷物を待つ間、座っていることなんてほとんどなくて。

 

 

旅行代理店の女性スタッフと話すかポケベルの返信で公衆電話に行くかどっちかだった。

 

 

ただ気遣いがホントにできるのは確かで。

 

 

下を向いて誰とも話さないオレを見つけてはいつも気さくに声をかけてくれる。

 

 

その揉めた日も

 

 

『…あいつらはレベルが低いからな』

 

 

と耳元でささやいてきた。

 

 

吉田さんは声が野太くてやたらエロい。

 

 

視覚ではなく聴覚で相手を懲らしめてくる。

 

 

ここまで色気があるのだから昨日の『ベンツ婦人』とどういう関係なのかは

 

 

さすがのオレにもわかった。

 

 

 

 

そして数日後

 

 

 

そんな色男にオレは

 

 

 

とあるものを渡された。

 

 

 

 

 

 

 

『拝啓 吉田さん③』へつづく