※主に関ケ原で活躍した武将たちの輪廻転生・現パロです。
※場合によっては女性に転生してしまった設定の武将もでてきてしまいます。
※だいたいほのぼの、たまにシリアスでいこうと思います。
※今回は字だけですが、いずれはイラストなども付けられたらと思います。
登場人物紹介
島左近勝猛→400年と数十年生きているために黒いキツネに変容することができる。孤児院にて大谷刑部少輔吉継の生まれ変わりを発見し、同居。一人称は「左近」「拙者」。
大谷刑部少輔吉継→生まれてから孤児院で10年と少しの間育つ。自分の正体に気付かないうちから聡明であり、「小早川秀秋」の名を聞いた途端に記憶を何となく思い出してくる。暗闇が苦手で散歩が趣味。一人称「僕」
◇◇◇◇◇◇
最近、近所の女の子と仲良くなった。鮮やかな赤いワンピースがよく似合う子。1人でいることが多い。僕が彼女と知り合ったのは、島殿と暮らすマンションの近くにある公園だ。夕飯の買い出しに出掛ける際によく目にしていたから、何となく僕が話しかけた。初めて僕が彼女に話しかけた時、彼女は驚いて怯えていた。
それから度々、その公園で遊ぶことがあった。彼女は1人で遊ぶのが好きらしい。その旨だけを口にし、僕が話しかけても頷くか首を振るだけだった。仲良くなったといっても、正しくは僕が仲良くなりたいだけで、彼女に言い寄っているようにも思える。ある日彼女から口を開いた。曰く、僕に白い幽霊が憑いている。それからその白い幽霊が彼女にも見え、常に纏わりついている。
彼女の言葉を半分信じ、半分は子ども特有の戯言だと思いながら公園で砂遊びをしている彼女の横で僕も年甲斐もなく山を作って遊んだ。
それからも雨の日以外は彼女は公園に現れた。妙に彼女が気にかかる僕は学校帰りに20分30分ほど遊んでから夕飯の買い出しに出掛けるのが日課になった。
「ねぇ、この前言ってたことなんだけどさ」
彼女は返事をすることもなく黙々と砂で山を作っていく。僕は横目でそれをちらちら見ながら手を動かす。
「僕テレビで観たんだけどそれ、守護れ―」
彼女はもくもくと両手で砂を掻き集めては掌で叩きながら固めていく。
「松尾山」
簡単なよく見る砂の山を作り上げ、彼女はぼそりと呟く。
「は?」
とても懐かしいような単語を聞いて、ふと僕が経験したのではない声や銃声、喧騒が脳裏を高い速度で駆け巡っていく。どれも黒く塗り潰されているけれど。
「松尾山って、何・・・・?」
腹部が熱くなり、ぎゅうっと強く締め付けられたような感覚がして、僕は腹部を押さえて背を丸めてしまう。
「・・・・お腹、痛いの?」
彼女が僕を初めて自分から見た。垂れ目と困ったような眉が印象的だった。
「だい、じょう、ぶ!ちょっと気持ち悪くなっただけ」
「君だけあたしと同じ白い幽霊憑いてるの。あたしと君は本当のお友達なのかな?」
唐突に話し出す彼女の言葉を僕は腹部を抱えるように座りながら聞いていた。
「僕には白い幽霊なんて見えないけどなぁ」
「あたしには見えるよ。ほんとに白い幽霊が憑いてるの。生まれたときからずっと憑いて、見張ってる。怖い顔して見張ってるの。殺してやる、呪ってやるっていつも言ってるの」
―――3年の内に呪い殺してくれる
野太い声が耳の奥で聞こえる。肉体的に声変わりしていない僕の声ではない。では誰の?僕の中から沸々と湧き上がる怒り。誰に向けているのか分からない怒りが目の前の少女に向きそうになる。
「Gメン、ジューシーってあたしに言うの。意味分からないから、ちっとも怖くないけど」
彼女の言葉に近い本当の単語。無意識に復唱していた。
「人面獣心・・・・」
言ったかもしれない。言った気がする。きっと言った。
「君は、誰なんだい・・・・」
目の前の、自分と同じくらいの少女が怖い。
「あたしも気になる。白い幽霊、君にもいる」
彼女のいう白い幽霊は、僕には見えない。
「でも、お友達になれたらいいなって思うけど、お友達になれない気がするの」
まだ腹部を押さえこみながら話す僕にとうとう彼女は気にする素振りもなくなって、黙々と山を作る。
「笹尾山」
彼女はぼそりといってから、松尾山と笹尾山と名付けたらしい砂の山を手で崩した。灰色のような視界のなかで映えていたオレンジ色とも赤色とも言い切れないワンピースが砂で汚れた。
「そろそろ、君、帰る時間でしょ?」
彼女が崩れた山を見つめながら口を開いた。僕は立ち上がって、砂を払う。
「覚えててくれたんだ」
公園にある時計を一瞥してから僕は彼女にあいさつして、公園を去った。
「小早川くん」
砂場で遊ぶ少女の背に声が掛けられる。少女が振り向くと、そこには頭部に布を掛けて顔を隠すような格好の老人が立っている。
「徳川のおじいちゃん」
片手には杖、もう片手には曇り一つない水晶を手にしている。
「どうだったね、あの子は」
子と孫、曾孫ほど歳が離れているが、老人の声音は低く険しい。そんなことを少女は気にする風でもなく、老人に駆け寄った。
「ぎょーぶ殿だと思う。じぶ殿も一緒なのかな??」
老人は少女の頭を撫でてから、掌に乗せた水晶を見つめる。
「どうであろうな。ワシが占って、お前さんたちに会えただけだからの。偶然では会えなかろう」
少女はよく意味が理解できていないようで首を傾げた。
「もう戦争もないしの。会ったとこで戦は起こらんじゃろ、あのクソガキはの」
少女が意味を理解できていないことをいいことに老人は言葉を続けた。
「帰りにくれぇぷでも買ってやろう」