ロンドン紀行その4 素敵が詰まったロンドンパラディアム劇場 | 「道草オンラインマガジンonfield」[別館]

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6日目の木曜日は旅行中の唯一の雨降り日だった。といっても霧雨のような雨がしとしと降っている程度で、傘がなくても凌げる程度だ。ツレはやや旅行疲れが出ているようなので、夜に一緒に観に行くコンサートを控えて夕方までファミリー宅で小休止。僕は朝から一人で中心部へ出かけることにした。6日目ともなると、かなりロンドンの交通事情にも慣れてきて、とくに不安はない。

 

まずはハイドパークをめざす。Blurのコンサートなど名だたるアーティストの野外コンサートでもお馴染みの公園だ。ハイドパークは実に広々とした居心地の良い場所で、晴れていればベンチでゆっくり読書にふけるのも良さそう。落葉に敷き詰められた広い道をジョギングしている人も多くて、秋がとてもよく似合う風景だ。真ん中にどーんと池があって、鴨や白鳥がのびのびと佇んでいる。池の水面と地表が近く、観光客も多くて、鳥たちはすっかり人に慣れている様子。近くまで寄っても逃げようともせず、のんびりと構えている。

 

 

ハイドパーク南側のロイヤルアルバートホールは外側から眺めた。ここも歴史ある劇場だ。ちょうど改装工事中なのか全貌は拝めなかったが、風格は十分。クリスマスにはメサイアの公演があるようで、どちらかというとクラシック系の演目が多そうな感じ。

 

 

この後の予定はとくに決めていなかったが、とりあえずウォータールー駅に向かうことにした。ABBAのヒット曲に「恋のウォータールー」というのがあって、単純に名前に惹かれて立ち寄っただけなのだが、結構大きなターミナル駅だった。(ちなみにウォータールー駅に関する楽曲ではない)

 

周辺には屋台のエリアがあり、「JAPAN SOUL FOOD」と看板を掲げた屋台を覗くと、どうやら日本人夫婦が出店している店のよう。日本語で話しかけたら、関西訛りの気さくな声が返ってきた。ちょっぴり日本食が恋しくなり始めていたので、カツ丼ボウルを注文。カツ丼といってもチキンカツだったが、後で考えたら、宗教上の配慮から豚肉を避けたのかもしれない。これも多民族な街、ロンドンの片鱗が見え隠れする部分だ。

 

テムズ川が近いので川縁まで足を伸ばした。雨のせいだろうか川は黄土色に濁っていたが水量は十分、東側のドーバー海峡側からロンドン市内西部までアクセスでき、川幅も広いことから行き交う運搬船も少なくない。川のたもとにはNational Theatre(国立劇場)の看板が目立つ建物があり、トイレに使おうと入ってみると、荷物のセキュリティチェックを受けた。後で調べてみると英国の三大芸術劇場の一つらしいが、1階は公共スペースになっていて、片隅にバーカウンターやカフェがあり、あちこちでMacのノートPCに向き合う男女がいる。ふうむ、これは何をしているんだろうなあ。静かにパソコン作業ができる無料スペースということかしらん。

 

 

 

今夜はツレとコンサートに行き、市内のホテルに泊まる予定になっているので、先にホテルに向かうべく、トラファルガースクエアをめざす。ここは6つか7つの道路が集まる環状交差点=ラウンドアバウト(イエスの楽曲で有名な言葉の意味を今回初めて知った)を擁した広大な広場になっていて、正面にはナショナルギャラリー、広場内には銅像やら大きな噴水が2つあって、パノラマチックな風景が壮観だ。

 

ツレの到着を待ってチェックイン。ホテルの部屋は値段(2人で3万円程度)の割に簡素な部屋でバスタブなし(シャワールームあり)、ダブルベッド(♥)だった。今夜のコンサートはロンドンパラディアム劇場で開かれるAimee Mann。最新作が大好きなのと、劇場が素敵そうだったので事前にviagogoでチケットを購入、4~5日後には航空便で届いた。フォーキーなロックを奏でる女性シンガーソングライターとして日本でも根強い人気があって、ノイジーなロックが苦手なツレにも気に入ってもらえるんじゃないかと。

 

日も暮れてきたのでホテルを出発、劇場まで歩くことにしたのだが、周辺は煌びやかな商業地で電飾もピカピカ、そして劇場へ真っ直ぐ北上するリーガルストリートは、一体的な石造りの建物が曲線状の壁のようにそそり立ち、そこにブランドショップなどが建ち並んでいて、まさにゴージャス。街角にはチケットショップの出店がいくつかあって、細かくはチェックしていないけど、ショービズが市民生活に根付いていることを思わせる。

 

しばらく歩くと右側にパラディアム劇場のネオンサインが見えてきた。ずいぶん小さめのネオンサインで、何かおかしいなあと思いつつ近づいて行くと、どうやら楽屋の入口だったみたいで、反対側に観客の入場口があった。券面に書かれた時刻は18:30。すでに時刻は少し過ぎていたのでスムーズに入場できた。

 

 

場内にはクラシックな椅子を配置したパーティ会場みたいなスペースがあって、窓側に小さなカウンターバー、バーの背後にはバルコニーがあって下が見下ろせるようになっていた。観客席に通じるカーテンは閉じられていて、まだ中には入れないようなので、しばし、ここで酒でも飲みながら歓談に興じるのが習慣らしい。ツレと一杯やりながらカーテンが開くのを待つ。僕が注文したHOBGOBLINというビールはベルギービールのようなコクがあって、とても美味しかった(半ば備忘録w)。

 

 

カーテンが開いて中に入れるようになったのは19時半ごろだったかな、客席に足を踏み入れてツレと共に歓喜した。貴賓席のような出窓状の観客席が正面の左右にあって、全てが固定の座席シート、照明などのインテリアがとても素敵だ。2000人余りを収容する小ぶりな感じも実に良くて、もうこの時点で大好きな会場になった。ツレも市内観光でここが一番のお気に入りになったようだ。

 

 

観客の年齢層はTrainと同様に30~50代が中心だったが、白人のインテリ系が多く、原色に染め上げた髪をパツンパツンの短髪に格好良くまとめたパンキッシュなおばさん、ひと癖ふた癖ありそうなオヤジたち、いかにもリベラルな仕事してます風の人々も目立つ。ともあれ大人な観客ばかりで、ここでも日本の洋楽ライブハウスとは微妙に違うのだなあと感じる。何というのかな、大人たちの日常の延長線上に音楽がある、とでも言えばいいのかな。

 

20:30ごろに前座の男性フォークシンガー、Jonathan Coultonが登場。「ハロー、エイミー・マンです」と自己紹介して客席の笑いを誘う。後でTwitterのフォロワーさんから情報をいただいて知ったのだけど、エイミーとは一緒にツアーに出ているミュージシャンらしく、さらにWikiによればスタジオアルバムを9作もリリースしており、エイミーの最新作では複数曲で楽曲提供しているらしい。

 

中堅ベテランとあって軽快なギターワークと歌声だったが、それにも増してMCで盛んに笑いを取っていた。少し英語が解せるツレによれば、綾小路きみまろみたいな、中年夫婦の悲哀をネタにしたトークが多かったよう。エイミーとの相性もいいのだろう、前座の段階でエイミーも登場、一緒に数曲をデュエットしていた。

 

エイミーの本編が始まったのは21:30ごろ。熱心なファンから大きな歓声が湧き上がる。彼女のステージはバックの音数を最小に抑えた静謐でアコースティックな感じで始まり、途中から前座のJonathan Coultonやストリングス4人も加わって最新作「Mental Illness」の楽曲を中心に進んでいく。女教師然とした眼鏡姿のエイミーが背筋を伸ばして歌う姿は終始凜々しく、毅然としながらも温もりのある歌声はとても魅力的だった。

 

客席の足もとには双眼鏡が配置されていて、1ドル硬貨を入れると取り外して使えるようになっている。ツレがそれを見つけて2人で交互にステージを覗きながら1時間半のステージを堪能した。

 

劇場を出て、どこかで一杯やろうとリーガルストリートの脇道に入っていく。どこのパブも賑やかなのだが、よく見ると店内はほぼ閉店間近のようで、みな店の前で群れながらワイワイ飲んでいる。開いてる店がないねえ、などと言いながらホテルへ戻るうちにネオンサインはどんどん消えてしまい、ホテル従業員が「あそこなら24時間開いてるよ」と紹介されたコンビニ風の小売店(Tesco Express)は偶然にも清掃中で閉店。結局手持ちの小さなウイスキーをちびちびやるだけだった。

 

 

ツレが早々に寝てしまったので一人夜の街に出てみた。開いている小売店はあるのだけど、何故かお酒は売ってない。後で調べたら、地域によっては23時以降のアルコール販売が厳密に禁止されているよう。これは知らなかったな。ちなみにロンドン中心部の深夜はホームレスの姿が目立った。数人のホームレスからは声をかけられた。言葉は聞き取れなかったが、何かを求めるような内容だったと思う。でも身の危険を感じるような雰囲気ではなかったことは、記しておきたい。

 

ということで、今回はここまで。まだまだ続く。