仕事に追われる男が、一人でたずねてホッと一息つける飲み屋を持つように
男にとって「家庭」でも「職場」でもない顔を見せられる場所は重要だと思う。
飲み歩かない会社員でもある自分にとって、これに代わるのは昼飯を食う店であるように思う。
約6年と半年、同じ職場で過ごしてきた。けっして長いとは思わないが、そんなに短期間だとも思わない。少なく見積もって、1年間で200日ぐらいは会社付近をウロチョロしながら昼飯をすませてきた。
年間、200回。単純に6年で1,200回になる。
1,200回。
なかなかの数字だ。
13:00 キッカリからふたたび始まる業務。それを前にした安息の1時間。
カレーうどんを食うもよし、パスタでもいい、昼に控えた得意先との打ち合わせを前に、ゲン担ぎにカツ丼で自分の胃袋を満たしてみるなんてのも、手だろう。
そう。この昼時だけ、ぼくたち会社員は自由だ。
「ケッ、課長のやろう。なんなら、この1時間、ノータイで過ごしてやろうか!」。
いいじゃないか、大いに結構。
飯を食うのも自由だし、食べないのも自由。「オレは飯より寝る間の方が惜しいもんね!」とアピリながら爆睡を決め込んだって構わないんだ。
そんな自由も、こと団体行動になると不便だ。機能しなくなる。上司の顔色をみてメニューを注文しなくてはいけない。上司が並なのに、自分だけ上をオーダーしていては、ニッポンの会社員はつとまらない。
ほら、周囲にひとがいるだけで、こんなにも不自由になった。
だからこそ、個人でいける店をもとう。
会社勤めから、ほんの少しでも解放される空間をもとう。
自分にはある。そんな店が。
そこはせまい、うどんとそばの店。
約1200回の昼飯を済ませてきたが、いまだ一人でしか行ったことのない店。
そこはお世辞にも広いとはいえない、提供されるうどんやそばなどの麺類だって
「とびきり旨い」とは言いがたい。
でも、あるのだ。そこの店には。
そう。
北斗の拳の重版、全巻が‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
ヽ(^◇^*)/
ワーイ
日本が誇るSF漫画を読みふけりながら、オレは旅するのだ、修羅の国を。
(あぶないってば!)
そばを「ズズーッ」とすすりながら、目で重版を追いかける。
目で追う先、そこは一子相伝の世界。北斗二千年の歴史だ。
いつも通りの「そばセット」570円。
細めのそばを三口ほど咀嚼しては、あっついスープで飲み干す。ついてくるたっぷりと甘みのきいた稲荷ずし三個はMF的役割。食事を組み立ててくれる存在だ。稲荷を中心に展開していき、そばは右・左からのクロス。スープは玉田ばりのゴールを決めてくれる。途中、ファインセーブを決めるGKは、突き出しのお新香か。
ところで先日は、シンを葬り去るのを見届け席を立った‥。
12:00から13:00までという、会社員にとってのオアシスが
こうして今日も過ぎていく。
そして、13:05には平気な顔して仕事の打ち合わせをはじめる。
12:55 と 13:05 の間に横たわる、決定的に大きな“自由”と“不自由”。
以上、昼飯賛歌なのであった。