一週間を置いて社会福祉協議会で二回目の面談が行われた

 

今回、弟とジジイは別々にやってきた

ジジイと一緒に来たのは娘だ

 

娘の事で相談に乗ってもらっている社会福祉協議会の自立支援担当の人は、今回の弟の件に紐づける形で娘を呼び出してアプローチを取るという提案をしてくれていたのだが、娘が弟の事で来るとは思えなかった上に普段から全く連絡してこない

予め来る事が分かっていればその担当者にも同席頂いて、話の流れによっては上手く娘を別室へという事も有り得たのだが残念だ

 

しかし、ジジイが娘を連れて来た理由は分かっている

私達夫婦が弟の金の事で躍起になる姿を見せたかったのだ

何処までも考えが浅はかなジジイだ

そもそも私は弟の金を取った訳ではなく預かっているだけなので、躍起になる事など有り得ない

なるとすれば、ジジイが金を取ろうとした時だ

娘にも弟にも、私が取ったと話している事は見え見えである

 

今回の面談では、前回から一週間の時間が経って弟がこの制度を使う考えに変わりはないか確認を受けた

社協へ預けなければならない事は弟も渋々承知している

金の使い方について再び説明を受けると、弟は「何度も言うな。耳にタコが出来る。」と横柄な態度を取った

担当者は「タコを作ってください。私は毎回言わせてもらいますよ。」と厳しい口調で答えた

そこでジジイが口を挟んできて「自転車を買ったり炊飯器を買ったりするのはいいんですよね?」と、またバカな質問をする

担当者は「頻度にもよりますが、必要な物はもちろん買ってもらってかまいません。普段の生活費とは別途考えてください。今から週に一万円での生活を始めると、お母様が遺されたお金を使わなくても多少の蓄えができます。そのお金をそういう出費に充てれば良いのです。」

 

ジジイはまだ何やらグズグズと言っていたが、担当者は「お兄様はしっかりとお母様の遺された弟さんのお金を管理されております。」と言って、前回同様ジジイに構う事無く話を進めてくれた

 

担当者が療育手帳について訊ねた

弟の事は母が施設に居ながらも全て対応していたので、私と妻は関わってこなかった

その後は弟が自分で持っているので、弟が該当する種類もわからない

だが、当然の事ながらA事業所の責任者は全て把握しているはずだ

しかし、この責任者は答える事ができず、弟に訊いても本人もわかっていない

「事務所へありますので今度コピーを持ってきます。」と焦りながら言った

何ともいい加減な仕事ぶりだ

 

次に担当者は弟へ「通帳を見せてください。」と言って内容を確認した

「これを見る限りでも明らかに使い過ぎですね。これは言い続けますので。」

弟は金の事でうるさく言われてかなり嫌がっている

以前、私が金の使い方を指導した時もそうだった

「出来ないのならこっちでその通帳も預かるぞ。」と言ったのだが聞くことはなかった

 

そして担当者が「一人暮らしをする見通しは立ちましたか?」と訊くと、A事業所の責任者は「実はもう始めてます。」と口にした

私よりも担当者の方が驚き「え?そうなんですか?」と言ったので、私はすかさず「いえ、何も聞いていません。」とA事業所の責任者を睨みつけるように答えた。

「何故、お兄さんへ言わずに?」との問いにA事業所の責任者は「お兄さんには今日ここでお会い出来るからと思いましてね。お父さんと話してそうさせてもらいました。」
 

この責任者もかなりバカだ

これまで記述していなかったが、A事業所の責任者は高齢の女性である

息子がこの会社の代表取締役で年齢が52歳という事が分かっているので、普通に想像すればその事と外見からすると70代後半か80前後といったところか

ここまで来ると、ジジイとデキているのか?と下世話な質問をぶつけてみたくもなるが、ちなみに御主人はまだ健在らしいので不倫という事になる

そういったくだらない事しか、もはや頭に浮かんでこない

 

しかし、家賃は私が預かっている通帳から引き落とすという話にはなっていたのに、引っ越す事すら報告がないのは改めてこのA事業所の責任者も非常識な人間であるという事をこの場で露呈させた

そのバカっぷりには前回のジジイと弟の発言同様、笑いを堪えるしかなかった

 

担当者「社協に預けるまでの管理はどうしますか?」弟は「おとうさんに」と答えたので、私は手元に用意していた弁護士事務所へ持って行った時の相談文書を見せながら「これを見ていだければわかりますが、うちの父親は前の家の借金とかもそのままにしたくらいなので、とてもじゃありませんが管理が出来るとは思いません。弟のお金の管理は私がします。」

担当者「そう、お兄さんは言われてますけど?」すると弟は「何を管理する?」私が「その通帳だ。」と言うと「はぁ!?」と声を荒らげた

「ずっとじゃない。ここでの管理が始まるまでの一カ月半だけだ。始まったら全部こちらに渡して任せる。」

すると弟は更にムキになり「今は関係ないだろ!自分でする!一週間一万円ですればいいんだろ!」と怒鳴るように言った

担当者が「自分でやってみますか?」と訊くと弟は「それぐらいできる。」

ここでもまた笑いを堪えるしかなかった

長年それが出来てなかったからこうなったいう事すら自覚していない

 

担当者「お兄様が預かっていらっしゃる通帳はそのまま管理されてもいいですし、こちらが預かる事も出来ますし、どちらでも構いません。」と言うと、突然娘が口を挟んできた

「通帳二つ持ってるってこと?話が全然わかんなかったんだけど、給料の通帳以外にもう一つあるってことよね?」
働かない弟が給料をもらえるわけない、障害年金だ

娘はその事すらわかっていないのか

 

娘の問いには妻が答えてくれた

「そうよ、叔父さんが持ってるのは障害年金が入る通帳で、うちで管理してるのはおばあちゃんが叔父さんへ遺した保険金が入ってる通帳よ。」

すると娘は「だよねー。ひとつの通帳に全部入ってるってことはないよねー。」

妻は「ないない(笑)そんなのこの人に持たせたら大変なことになるでしょ。」

娘「そうだよねー」

かなり久しぶりに顔を合わせたはずなのに随分と波長が合っているではないか

いや、妻が娘に合わせてくれているのか

妻「そうか、見せたことなかったもんね。これ帳簿だよ。見て。」と言いながら娘に帳簿を手渡した

ジジイはまた何やらグズグズ言い始めたが、妻はそれを遮って「今ここで見てほしい。」

私も言葉を付け加えた「そうだ、場合によってはおまえが全部やらなきゃいけない日が来るかもしれない。」

娘は「そんなの知らない。」と言ったが、妻は「でもね、歳の順で死んだら叔父さんが死んだ時はあなたがすることになるのよ。」

すると娘が「縁切られてるんだから知らない。」と言うので妻が「縁切られたの?それでも公の文書を作ってない以上は、叔父さんが死んだ時には全部あなたに連絡が行くし責任もかかるのよ。」

私は妻の説明に付け加える程度の事しか言えなくなった(笑)

「だから、そこまでの管理がおまえにできるのかって話だ。」

娘は「んーー」と考えていた

ここでまたジジイがグダグダと口を出し、娘と二人でもめ始めた

 

担当者「誰がどこでどう死ぬなんてわからないわけですから、こういう事を知っておいてもらいたいという事です。」

妻「この手続きが終わったら両方の通帳をここへ預けるんだけど、それまでの一カ月半くらいの間、年金を受け取る通帳をどうしようかっていうのがここまでの話。わかった?」

娘「うん、だいたいのことは。」

娘は帳簿をまじまじと見始め「家計簿みたいにやるんだぁ。」

いや、家計簿とは全く違う、形式は小学生の小遣い帳程度の物だ。

母が遺した金を使う機会は限られているのだから。

妻「そういうふうにきちんと書いて一円の間違いもないようにしてる。おばあちゃんから預かった大切なお金だからね。でも『兄ちゃんじゃなくて社協へ預ける』って言って、Aの責任者さんと叔父さんがここへ申し込んだのよ。」

上手い言い方をしてくれた

 

その後、担当者とAの責任者が今後の福祉サービスの内容や、弟の通院の事等を話している間、娘は貼り付けてある領収書と照らし合わせながら帳簿をゆっくりと見ていた

 

一通りの話が終わり、担当者が「これはもしもの話ですが、亡くなった場合はどなたに通帳をお返しすれば良いですか?」

弟はそういう事を考える頭等持っていないので「自分が死んだ時の話なんかわかるかけがない。」と、またもや思い切りバカっぷりな発言をした

私は敢えて娘を指名

娘は断りたかったようだが、弟が「じゃあ任せる。」と言ったので渋々了承した

 

挨拶をして解散し、部屋を出た

A事業所の責任者は最後まで私と目を合わせる事無く、今回も逃げるように弟を連れて帰って行った

ジジイは廊下の向こうで娘を待っていたが、娘が私達の後ろから離れないので「先に車へ行くぞ。」と言って去って行った

 

私は再度担当者に「途中でやめることだけはないようにお願いします。」と頼み、預かっている通帳の残高を訊かれたので伝え、その日の午後から打ち合わせに行く墓石の話をした

すると娘が「樹木葬にするんじゃなかったの?」と詰め寄ってきた

妻が「近くの樹木葬は良い所がなかったのよ。三年近く探し続けてもね。」と言い聞かせてくれた

私も近隣の樹木葬について説明し、場所を言えば娘も理解できるので「あんなとこじゃおまえは運転して行けないだろ?叔父さんだって自転車じゃいけないし。」

そう言うと娘は不服そうではあったが頷いた

「でもそれちゃんと墓前に報告した?」とまた詰め寄る

まるで反抗期の中学生のようだ

しかも墓の話をしているのに、仏前と墓前を間違えている(笑)

私「ばあちゃんが生きてる間にちゃんと話はしてたんだ。樹木葬かまたは、ばあちゃんのお母さんの墓へ入りたいって言ってた。だけど、ひいばあちゃんの墓は人数がいっぱいで入れないから同じ墓苑にしたんだ。」これはもちろん事実である
妻「ちょうどね、ひいおばあちゃんのお墓から見下ろせる位置が空いてたからそこに決めたのよ。」

それを聞いてようやく納得したようだ

 

車に戻ると妻が「娘をランチに誘えば良かったね。」と言うので、「ジジイがいるから無理だ。」と答えた

それにこの後、他の用を済ませ、そのまま墓苑の管理事務所に行かなければならない

昼を食べに店に入る時間すらなかったので、私が用を済ませる間に妻がお茶とおにぎりを買って来てくれて、車の中で急いで食べて墓苑事務所へと向かった
 

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続く