ストーリー&解説
丸山隆平が「泥棒役者」以来8年ぶりに映画主演を務め、刑務所や拘置所への差し入れを代行する「差入屋」を家族で営む一家が、ある事件をきっかけにその絆が揺らいでいく姿を描いたヒューマンサスペンス。

金子真司は刑務所や拘置所に収容された人への差し入れを代行する「差入屋」を一家で営んでいる。ある日、息子の幼なじみの女の子が殺害されるという凄惨な事件が発生する。一家がショックを受ける中、犯人の母親が「差し入れをしたい」と店を訪れる。差入屋としての仕事をまっとうし、犯人と向き合いながらも、金子は疑問と怒りが日に日に募っていく。そんなある日、金子は一人の女子高生と出会う。彼女は毎日のように拘置所を訪れ、なぜか自分の母親を殺した男との面会を求めていた。この2つの事件と向き合う中で、金子の過去が周囲にあらわとなり、家族の絆を揺るがしていく。

主人公・真司役を丸山が演じ、真木よう子、寺尾聰らが顔をそろえる。「東京リベンジャーズ」シリーズなどの助監督を務め、本作が長編初監督作となる古川豪が自らのオリジナル脚本でメガホンをとった。     (eiga. comより)


感想

刑務所に、関係者に代わって物品を持ち込み面会するという仕事は、あとで調べてみると本当にあるようで、大阪の差入店の写真も載っていました。
この、金子差入店と同じような小さな間口の普通の小さな商店のような構えです。

金子真司は、6年前この仕事を始める前は、自分も暴力沙汰で服役していて、出産前の妻(真木ようこ)が面会に来た様子が描かれて、すぐその家業をしているシーンに変わったので、主役の丸山隆平という俳優を知らなかったので、服役中の人とは、別人に見えて、妻が再婚しての家業なのかと思ったら、同じ男性でした。目が悪すぎるのか、服役中の人相と違って見えたのか…

職業的に、嫌がられるようで、店の前に置いてある植木鉢が割られているのが、何度も出てきます。

このお話においては、ストーリーに書かれているように、2つの事件にしぼって、描かれていきます。

最初の近所の幼馴染の小学生が殺害された事件においては、その母親が差入れを依頼してくるわけですが、その母親の気持ちを受け取らない息子の精神状態や思考、母親の態度からも見られる親子関係などにも想像が及ぶように描かれています。
犯人は、この社会を不幸が蔓延する世界と捉えているようで、殺した少女を救ったという言葉が出てきます。
その親子の家庭は父親がいなさそうだったけれど、かなり裕福な家のようでした。
この酷い犯人に対する差入れをしていることで、反感も買い、金子家の息子がいじめに合います。

親の職業から息子が、そんな思いをすることに激昂する真司は、学校に乗り込みますが、学校の対応は想像に難くないものです。
母親は、状況を把握しつつ、夫のような過激な反応を見せることはなく、息子を受け入れながら、ことを荒立ててずに我慢する忍耐力のある人間に描かれています。

2つ目の話は、稼ぐために自分のみならず、高校生と思しき、いつも制服姿の娘にも客を取らせていた母親が、刑務所を出たばかりのそんな客の一人、横川に殺されます。

横川は、少女をあてがわれたが、娘にまで売春させていた母親に怒りを感じ、刺してしまう。
その横川に面会を拒絶されながらも通い続ける佐知と何度か刑務所で出会った真司が、彼と知り合いの弁護士(甲本雅裕)から、トドメを刺したのがその少女だったのではないかという説を聞き、彼女を自分が雇ったことにして、差入れに、連れて行き、横川に合わせます。
この時にも、真司の妻は、少女を暖かく受け入れ家でご飯を食べさせる良い母親っぷりを見せます。

最初の事件の中で、殺された小学生の家庭とその犯人の家庭の両方に父親が一切出てこないのです。

小学生の母親は放課後、子供にいくつも習い事をさせる教育ママというか、子供を疲弊させ、不幸にさせている親とも言えるかもしれない描かれ方をしていました。

2番目の作品の母親は実の娘に売春させる、毒親です。

これも意図的に毒親と娘を描かれたのかもしれません。考えると、犯罪の犠牲者として、女の子・少女であるほうが、話の展開がしやすかったようにも思えます。

そんな中で、作品を通して、最初から、最後まで、真司の妻は、肝っ玉の座った良き母親に思えました。この母、この妻があっての、この作品のだとも言えます。

気になったのは、二つの事件が、映像として詳細に描かれるけれど、実際には、真司は、差入屋として経緯は知ったものの、細部まで見たわけではありません。
鑑賞者に対する、この詳しい映像の見せ方は正解なのだろうかと少し疑問に思いました。

そして、2つの事件を通して、3項目くらいの、広がらせたり、深めたりすることができるポイント(出来事)がありながら、この作品が社会的広がりを見せずに、個人的出来事に終始したように思えるのが、すっきりしない、残念なところでした。

私が初めて宇野重吉を見たときの彼の年齢に近い、彼の息子の寺尾聰は、似ているようで、ちょっと違います。
彼は真司の伯父役で、もとはと言えば、彼が差入屋をしていて、出所してきた真司が店を継いだのでした。
寺尾聰は、最後に何か意味ある言葉を言って、このために出演していたのねの思ったけれど、何を言っていたのか忘れました。

邦画として、悪くない作品でしたが、高得点がつけられない残念さはありました。

❤︎