文学つぶやきアーカイブスPART2

文学つぶやきアーカイブスPART2

その日手に取った本の、印象に残った文章を書き留めています

製本所では本は出来たそばからパレットに積み上げ一番上に木板を乗せて一晩寝かせる。(中略)製造工程で本には接着剤という名の水分がたっぷりと含まれる。だから重しをしながら乾かしていく時間が必要だ。わたしたちは本が紙でできていることを時々忘れてしまう。(笠井瑠美子「本も生きている」「図書6月号」岩波書店)
原案脚本にトリュフォー、監修にシャブロルと(中略)同志達が手を貸している。キャメラのラウール・クタールは手持ちカメラを駆使したそうでその効果が充分だ。素人の作るビデオ映画風のところがあって、これは映画館よりも家庭でビデオで観る方がふさわしい映画かも知らない。(色川武大「勝手にしやがれ」キネマ旬報社)
僕はレコードをかけ、それが終ると針を上げて次のレコードをかけた。ひととおり全部かけてしまうと、また最初のレコードをかけた。(中略)最初は『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』で、最後はビル・エヴァンスの『ワルツ・フォー・デビー』だった。(村上春樹「ノルウェイの森」講談社)