娘へ
あなたと会えなくなって10年が経ちました。
あっという間の10年でした。
いや、目をつむっていた10年間はやはり長かったかもしれません。
最愛の娘を失うということは、生き甲斐を失うことでした。
みんな無くなりました。
この世界が灰色になりました。
あんなに好きだった海も、桜も、キャンプも、なんの魅力も感じられなくなりました。
あなたと同じ年頃の娘さんを見ると
あなたが帰ってきたのではないかと、あなたの顔と重ねて目で追ってしまいます。
でも、あなたではありませんでした。
そうですね、あなたは遠い世界へ逝ってしまったのですから。
空の上から
「お父さん、いい加減に先に進みなよ」と、笑われているかもしれないですね。
今年も、あなたが空へ旅立った季節がやってきます。
寒い寒い朝でしたね。
何年も病気と戦って、最期は笑って「お父さん、お母さん、ごめんね」と言い残して。
お父さんの方がゴメンなんだよ。
大事な娘を死なせてしまって、今でも、ゴメンなんだよ。
無性にあなたに会いたくなるんだよ。
「お父さん」って呼ばれたくなるんだよ。
諦めきれないんだよ、あなたのこと。
親なんだから、こんな風にあなたの事を想っている父さんを許してくれよ。
明日は、あなたの命日。
11年目の冬が始まる。
タバコはやめたぞ。狸みたいな体型になってしまったよ。
相変わらず、母さんとは仲良しだから心配はするな。
いつかあなたの傍にいく。
その時に、「よく頑張ったね」と、褒めてもらいたいから、弱音は吐かないと決めている。
あなたのいない年を、また一年穏やかに過ごすから、応援していてくれな。
父さんと母さんが、一番大切に思っているたったひとつの命は
間違いなく今も、あすか、君だから。
たったひとつの命だから
大事な娘を想って今日という日を生きます。
愛知県、50代男性