なぜか・・・。
第1に、資源配分のメカニズムとして「市場」以上の効率的なシステムを人類は生み出していない。英国のチャーチルが言った「民主主義は最悪の政治形態。ただしこれまで試みられてきた他のすべての制度を除けば」と同じことだ。
「市場の暴走」が今回の世界金融危機を生み、世界経済に甚大な被害を与えたことは事実だ。しかし、この「市場の失敗」は、市場メカニズムの根本思想やデリバティブ(金融派生商品)に代表される金融技術発展の誤りだったのか? 根本思想や技術の誤りではなく、低金利による過剰流動性、債務担保証券(CDO)など投資商品の格付けの誤謬(ごびゅう)、そして運用機関に対するインセンティブ設計の失敗(上振れした時は経営者と社員のもの、下振れした時は株主と国民の負担)だったのではないか。
「市場メカニズムを政府によるセーフティーネットで補完」する現代の社会民主主義(第三の道)も、市場主義の1つのバリエーションだ。代替する有効なメカニズムがない中で、「市場」を否定するところからは何も生まれない。
第2に、言うまでもなく金融は経済の循環系である。「金融偏重の経済は間違いだった。やはり日本はモノづくりに回帰すべき」という二項対立的な議論は誤りだ。金融と製造業は対立概念ではない。製造業であれ、サービス業であれ、強い産業を育てるためにも強い金融が必要だ。これは日本の高度成長期における産業金融や、米国のIT(情報技術)産業・バイオ産業の育成におけるベンチャーキャピタルの役割を見ても明らかだ。
第3に、昨今の状況は日本およびアジアの金融市場と金融産業の抜本的強化のチャンスでもある。投資ファンド化した欧米の投資銀行や金融コングロマリットが、サブプライム関連損失の痛手で活動停止あるいは徐行運転を余儀なくされ、ニューヨーク市場、ロンドン市場の地位が相対的に低下している。また、金融市場の機能不全とレバレッジ(てこ)解消(ディレバレッジ=負債圧縮)の進行により世界でリスクマネーが不足し、日本や東アジアの個人金融資産の存在感が相対的に大きくなっている。さらに、欧米の金融機関が大規模なリストラを行った結果、高度な人材が市場に大量に放出された。日本・アジアの金融機関にとって、先端的スキルを獲得・強化するコストが大幅に下がったといえるでしょう。
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