若かりし20代の頃、

一度だけ訪れたことのある浅草寺。

 

露店で買って食べ歩きした

焼きたての醤油煎餅が衝撃の美味さで、

それから暫く江戸土産と言えば

浅草煎餅!!になったことぐらいしか

今では記憶に残っておらず…(笑)

 

今回も友人が取ってくれた宿に

ただ近いからという

理由だけで訪ねた浅草寺。

 

 

東京を代表する観光名所だけあって

この日も多くの参拝者で

賑わっていたのですが、

 

「実は上がれるんですよ。」

 

と、友人のそらさんが

案内してくれたのはご内陣。

 

そこで思いがけない出来事がありました。

 

 

ご本堂の内陣、

中央の御宮殿には絶対秘仏とされる

御本尊の聖観世音菩薩が鎮座されていて、

向かって左側に愛染明王、

右側に不動明王がおられました。

 

その不動明王を一目見た瞬間、

自分には閻魔さまに見えて

考えるより先に

こんな言葉が自然と出ていました。

 

「どうか安らかに

母を天国までお導きください。」

 

すると次の瞬間、

何かに包まれるような感覚があって、

そして不動明王はこう仰いました。

 

… それは約束されている。

 

その言葉はまるで

精子が卵子の膜を破って受精するが如く

僕のショボくれた心を見事に融かし、

堰を切ったように

止め処なく流れる涙の中で

僕を包む何かと一つになりました。

 

 

この時のことを

後にそらさんがこう伝えてくれました。

 

「観音さまがことのはさんのことを

とても労っていらして、

金龍さんがエールの氣持ちを込めて

ハグされていましたよ。」

 

それは今の自分にとって

何ものにも代えがたい癒しのときでした。


そしてもうひとつ、

予期していないことがありました。

 

 

暫く外界に目が向かなかった

自分には全く知らないことでしたが、

この日はそらさん曰く、

月蝕を伴ったパワフル満月で(笑)

 

スカイツリーと浅草寺、

そこで僕を温かく

抱きしめてくださった神仏、

そしてかけがえのない友人たち。

 

そのすべてが完璧な巡り合わせ中で

宇宙が準備万端、

用意してくださっていたことを知りました。

 

 

その日の夜遅く。

 

天が贈ってくれた

この旅を慈しみながら

夜の浅草寺を歩いてみることにしました。

 

 

雷門に掛かる扁額には

金で書かれた金龍山の文字。

 

 

そこで何氣なく

大提灯を下から覗いてみたら

金龍のお姿がありました。(。˃ ᵕ ˂。)

 

 

目に映るすべてが美しく贅沢で。

 

 

満月の優しい光の中で

僕の心を暫く占拠していた

途方もない喪失感は

少しずつ姿形を変えていきました。

 

 

言葉で上手く伝わるかわかりませんが、

天に愛され、天と生きる

この人生がとても愛おしく感じられて。

 

母にとっても最高の

供養のひとときだったと思います。

 

そのことがまた自分にとって

何ものにも代えがたい癒しとなりました。

 

 

そうして翌朝、

僕は神仏からの金言と共に

ここ浅草寺から新たな日常へと

送り出していただくことになるのですが、

そのお話は後編へと続きます。

 

松任谷由実 / 満月のフォーチュン