『Mystic Journey3 〜タイ王国編』

 

ある日の夕方のこと。

ホテルのシャトルボートに乗って

サパーンタクシンまで出掛けました。

 

 

夕食にアヒル料理を食べた後、

ロビンソン(百貨店)の食料品売り場を

覗いてみた時のことです。

 

小太りの欧米人がすれ違いざまに日本語で

「こんにちは〜」と笑顔で声を掛けてきました。

 

一瞬「ん?」と思ったものの、

そのまま果物売り場へ向かっていると、

また別の欧米人が近付いて来て僕にこう言います。

 

「わさびが欲しいんですけど、

どれが良いか一緒に見てくれませんか?」

 

若干の警戒心を持ちながらも、

日本人としての親切心が先行して

一緒にわさびを探すことになりました。

 

「実は来週から札幌に行くんだけど、

今、1万円って何bahtぐらいですか?」

 

わさびを探すのもそこそこに、

そんな話題を振ってきたかと思えば、

今度は「1万円札を見せて欲しい」と言います。

 

あ、あやしい…。( ̄▽ ̄;)

 

日本円を持ち合わせていないことを伝えると、

 

「財布を見せて欲しい」

 

と言います。

 

………。( ̄ー ̄;

 

当然、財布を見せる筋合いなどない訳ですが、

ちらっと振り返ってみると、

先程の小太りの欧米人が様子を伺っています。

 

気付けば人通りの少ないレーンで

欧米人二人に挟まれていました。

 

画像はネットからお借りしました。

 

万事休す。

まさに映画『ホームアローン』状態です。

 

瞬時の内に幾つかの未来を予測して、

素直が一番!と思った僕は、

有り金全部を見せることにしました。

 

タイの小銭と数枚のお札の入った

100均のパウチ。

 

すぐにお金が出せるようにと

旅行前に友人のはちみつ君がくれた物でした。

 

「Thank you.」

 

そう言いながら明らかに落胆する欧米人二人組に

 

(札幌への旅に向けて)「Have a good trip!」

 

そう言い残してその場を立ち去ったものの。

 

はちみつ君の厚意がなければ、

きっと不用心にカード類を入れた

長財布を持ち歩いていたでしょうし、

咄嗟の判断を誤っていれば、

パスポートの入ったボディバッグごと

強奪されていたかもしれません。

海外ですから怪我では済まない最悪の事態に

巻き込まれていたことも考えられます。

 

恐怖や怒り、自分への情けなさが

後から後から込み上げてきて意気消沈する僕は、

今すぐホテルのベッドに潜り込みたい

衝動に駆られました。

 

………。(´・ω・`)はぁ。

 

でもね、案外自分って

負けず嫌いなところがあって、

自分を奮い立たせる炎もまた

後から後から燃え上がってきました。

 

そうです、

何も買わずにホテルに帰ったら、

ただ強盗未遂に遭うためだけに

ロビンソンに来たことになります。

そんな負け犬みたいな自分は到底許せません。

 

絶対何か買って帰ってやる〜!!

と、意味不明な闘志に火が付いた僕は、

熟したカットマンゴー89baht(約350円)を

手にして無事にホテルに帰ったのでした。

 

Official髭男dism / ビンテージ

 

キレイとは傷跡がないことじゃない

傷さえ愛しいというキセキだ〜

 

海外には思わぬ落とし穴があります。

良いことばかりでなく、

良くない面も書くことで見えてくる真実があります。

 

 

例えば僕はこの一件で、

普段は見せない狛犬くんたちの

睨みの凄さを感じましたし、

お稲荷さんたちは事態からの抜け道を

瞬時に示して判断のアシストをしてくれました。

 

日頃から素直が一番であることを

神仏は教えてくださっていますし、

フツフツとした怒りの矛先を

あの二人組に向けずに済んだのも

裁くのは人間ではないことを知っていたからです。

 

 

トホホ…な気持ちを引きずったまま、

一口、口に入れたマンゴーはとーっても甘く、

僕に再び元気をくれました。

 

これは後になって気付いたことですが、

89bahtのマンゴーには

浄化の作用があったみたいです。

 

なぜって?

 

89baht払う → 89払う → 厄祓う

 

な〜んてね。( ゚ω^ )ゝ

 

つづきます!