本格的な春を迎えて、

いよいよ山シーズンの幕開けです。

厄晴れの来年に向け、今年は初心に立ち返って、

たくさん山に登りたいと思っています。

 

そこで、4月最終週のGW前半に

鳥取県の大山登山を計画していました。

ところが!!互いの仕事の都合で

計画が二転三転しまして…。

宿もキャンセルして、一旦、白紙にした所で、

奇跡のような大どんでん返しの末、

4月19日、僕たちは大山の麓にやって来ました。

 

今回のメンバーは、

医事課のちょびさんと社会学者のはちみつ君。

 

そこで僕たちを待っていたのは、

濃い霧に覆われた真っ白な幽玄の世界でした。

 

 

みんなでひとっ風呂浴びた後で、

部屋でまったりするちょびさんを一人残し、

僕とはちみつ君は、大山寺に

お参りすることにしたのですが、

不思議なことに辺りには誰もいません。

 

し〜んと静まり返る白い参道は、まるで別世界。

 

 

勢いよく溢れ出す御手水の音さえも

掻き消してしまうような濃い霧の中で、

見上げる大山寺の山門は、

そんな別世界への入り口のように思えました。

 

 

その昔、この辺りには

たくさんの宿坊があったそうです。

大山は古くから信仰されてきた霊場ですから、

そのような所に僕たちだけが導かれるのには、

何か理由があるように思えました。

 

 

それにしても静かです。

 

年度末・年度始めと、

本当に忙しい毎日でしたから、

 

心を鎮めなさい。

もっと深く己を内観しなさい。

 

それはまるで、この大山の地で

修行を始める前の精神統一の儀式のようで。

 

魂の希求する“その先へ”と、

僕を導いてくださる存在を有り難く思いました。

 

 

と、その時、濃い霧の中から、

僕の目の前に、美しいお地蔵様が現れました。

 

昨年お参りした際もおそらく、

ここにこうしておられたはずですが、

その時の僕の心には映らなかったお地蔵様です。

 

この日、僕をここへ導いてくださったのは、

どうやらこのお地蔵様のようでした。

 

お地蔵様の真ん前にしゃがみ込んで、

しばらくお話しさせていただいた後、

 

「ブログで紹介させていただいても

 よろしいでしょうか?」

 

と、尋ねてみました。

 

 

すると、

 

… みんな一緒に紹介してくれるなら、

  お前の好きなようにしなさい。

 

そう仰ってくださいました。

 

もしかしたら、ご家族なのかもしれませんね。

 

その後、ふと本堂の裏手を見てみると

まだ雪が残っていて「おや!?」と思いました。

 

 

今にして思えば、これこそが、

お地蔵様からの示唆だった訳ですが、

 

「今、何月だっけ?…もう4月だよなぁ?」

 

「へ〜、日陰にはまだ雪が残ってるんだ〜。」

 

「さすがは大山だな。」

 

「それにしても今年は暖冬だったなぁ…。」

 

鈍感(天然?)な僕は、

この時、ただそう思っただけでした。( ̄▽ ̄;)

 

 

大山寺から大神山神社の参道に出ると、

昨年、とても心を惹かれた

お地蔵様がいらっしゃいました。

 

ご挨拶をしながら、

赤い前掛けを真っ直ぐに

直させていただいたのですが、

昨年とお顔の印象が随分と変わられたような…。

(昨年のブログはこちら『ことのはの凱旋 〜大山寺』です。)

気のせいでしょうか?(・Θ・;)

 

 

ところでこの日、4月19日は、

偶然にも平成最後の満月の夜でした。

 

とは言え、この濃い霧の中では、

満月さえも見えないように思えました。

霧が晴れるまで待とうという話もしていましたが、

なんと言っても翌日は朝から登山です。

いつ晴れるかわからないものをただ待つよりも、

この霧の中、とりあえず見るだけ

見に行ってみよう、ということになりました。

 

 

真っ白い霧が覆う夜の真っ暗闇の中、

山間から見えた満月は、

濃い霧も、夜の闇も、

そして僕たちをも明々と照らしながら、

悠然と空に浮かんでいました。

 

「うわ〜〜〜!!きれい!!」( 'O' * )

 

霧に霞む満月の美しい光に心を奪われた僕たちは、

大山を見晴らすことのできる高台、

豪円山のろし台まで一気に登りました。

 

そして、そこで見たのは…。
 

 

真っ白な霧を眼下に見下ろして、

満月を仰ぐ、そこはまさに幽玄の世界。

 

今、ここに、こうして立っていることは、

すべて神仏のお導き…。

 

そう感じた瞬間、

1曲の音楽が降りてきました。

 

薬師寺寛邦 / いろは歌

 

PCからご覧いただいている方は、

ぜひ再生ボタンを押してお楽しみください。

 

 

色はにほへど 散りぬるを
わが世たれぞ 常ならむ
有為の奥山 今日越えて
浅き夢見じ 酔ひもせず

 

頭の中で『いろは歌』がリフレインするたび、

これまでの人生の旅路が思い出されて、

ただ訳もなく涙が溢れました。

 

 

父と母の子として、

この世に生を受けた日から、

随分、遠いところまで、僕は歩いて来ました。

 

雨の日にも、風の日にも、

一人ぼっちだと思える日にも、

数え切れない程のたくさんの存在が、

絶えず愛の光を注いでくださっていたこと。

 

そのことを知るために、

僕はこれまで随分と回り道をして来たのです。

バカだなぁ…おれ。

 

ただ訳もなく涙が溢れました。

 

 

心から溢れ出す感謝と愛は、

もう窮屈なこの体を持て余す程で。

 

これまでの人生の旅路に、

そして、平成という時代に、僕はこの日、

この場所でサヨナラをしたのかもしれません。

溢れんばかりの感謝と愛を込めて。

 

 

そんなふうにして、

随分と長い時間、そこにいたでしょうか。

 

いつしか幽玄の世界を作り出してくれていた

眼下の濃い霧も晴れていきました。

 

さあ!明日はいよいよ大山登山。

待ってろ〜大山!! ( ・`ω・´)b つづきます。