大山登山を終えて、
大神山神社奥宮に着いた僕は、
拝殿から感謝の気持ちをお伝えした後、
ご祈祷をしていただくことにしました。
大好きな山の神様に、僕の覚悟と
大切な家族のことを知っていただきたくて、
『家内安全』を祈願しました。
友人のちょびさんは先に宿に戻る、ということで、
大仏くんと二人で幣殿に昇殿させていただいて、
ご祈祷が始まるまでの間、
しばし華麗な花鳥風月や
神獣が描かれた天井絵に見惚れていたのですが、
ふと、柱の向こう側のご神前の両脇に
随神の神様がおられることに気付きました。
手を合わせてご挨拶すると、
向かって右手の随神(年寄)様は、
… よく山に登ってまいったな。
ご苦労であった。
大変だったであろう?
良い山であろう?
と、ニコニコしながら話してくださり、
向かって左手の随神(若人)様は、
… よく参ったな。
大神様は、お前の申すことを
きっと聞き入れてくだされよう。
しっかりとお伝えするがよい。
と、励ましのお言葉を掛けてくださいました。
弥山の山頂でさえ、
あれほど遠く感じた大山の神様に
畏れ多くも今まさに拝謁しようとしている、
静粛にご祈祷を待つ幣殿には、
そう感じさせるだけの厳かさがありました。
間もなくして、
社務所で受付をして頂いた神職さんが来られ、
ご祈祷が始まりました。
お祓いの後、祝詞が奏上され始めると、
僕は神様に思いの丈をお伝えし始めたのですが、
その途中、両脇の随神の神様から、
… よく言った!!
と、まるで歌舞伎の“大向う”のような
掛け声が飛んできまして…Σ(;゚v゚ノ)ノ(笑)
そんな随神の神様の心強いご声援のおかげで、
自らの覚悟を余す所なく
お伝えすることができました!!
すると、大山の神様は、
… お前には、もうすでに、
たくさんの神の加護がついておる。
私の力で何ができるかわからんが、
お前の望むよう、精一杯、力を尽くそう。
そう、おっしゃってくださいました。
慎ましいそのお言葉が、
かえって大山の神様のお人柄や
ご神徳の強さを物語るようで、
桜井識子さんが神棚にお祀りしたいと思われる
その理由がわかるような気がしました。
僕はこの上ない幸せな気持ちに包まれて、
両脇の随神の神様からも、
… ご苦労であったな。
と、また声を掛けていただきつつ、
ご祈祷をしていただいた神職さんと
少し談笑していたのですが、
表を見るや否や、
「あっ!!長蛇の列ができておりますので…。」
と、急いで社務所に戻って行かれた神職さん。
なんと!!
この日、お一人で社務所にいらっしゃった
(その間、社務所が留守になる)にも関わらず、
快くご祈祷を引き受けてくださっていたのでした。
僕は、有難いやら、
お待たせしてしまった方には申し訳ないやらで、
皆さんに丁寧に頭を下げて、社殿を後にしました。
大仏くんと
「いや~、ご祈祷、感動したね~。」
「あのシャラシャラ(金弊の鈴祓い)がまた、
なんともありがたかったね~。」
なんて話しながら、
階段下の神門近くまで来たところで、
僕の名前を大きく呼ぶ神職さんの声に気付きました。
「ことのはさ~ん(実際は本名)!!
帽子〜〜〜、忘れてますよ~~~~!!」
あっ!!!(゜ロ゜;)ほんとだ…!!!
階段を駆け上がると、
列に並ぶたくさんの方々が見つめる中、
ご親切にもわざわざ社務所から出て、
帽子を持って来ていただいた神職さんに、
僕は顔を真っ赤にしながら、
何度もお礼を申し上げました(笑)
僕には、霊山に登って第八感に集中し過ぎると、
どうも身の回りの現実のことが
疎かになってしまう悪いところがありまして…。
また、やらかしてしまいました。(; ̄ー ̄A
それにしても、大神山神社の神様も神職さんも
皆さん、とてもご親切だったなぁ、と
本当にありがたい気持ちになりまして、
明日の朝、もう一度、
一人でゆっくりお参りさせていただこう、
そんなふうに思いました。
さて、大山の旅、最終日の早朝。
わざわざ大仏くんが起こしてくれまして、
(ありがとう!!)
登山に、ご祈祷に、と、
お世話になったこの旅のお礼を申し上げたくて、
僕はまた、大神山神社に向かいました。
早朝、人気のない奥宮への参道は、
とても神聖で、どこか神秘的で。
神様だけの時空に招き入れて
いただくような感覚を覚えつつ、
奥宮、弁財天社、下山神社と順にお参りして、
感謝の気持ちをお伝えしました。
すると…。
下山神社の神様から、
驚くべきことを告げられました。
それは、両親の寿命に関することでした。
僕は当初、神様は未来のことを
はっきりとは仰らないものだと思っていたのですが、
ここ最近、神棚の神様からも
時折、お聞きすることがありまして、
どうやらそれを受け取る必要性と
受け取る人間の心の準備が整った時にはじめて、
未来の話をされることもあると気付いていました。
そして、神様は決して嘘はつかれませんし。
それだけに…。
なんとも言いようのない気持ちになりまして…。
… なぜ私がこのようなことを申すかわかるか?
(。´・ω・`。) 黙り込む僕に、
… お前が、昨日、大神様としたあの約束、
あれは、お前が人としてする最後の務めだ。
… その務めを果たした後、
お前には素晴らしい未来が待っておる。
それは今のお前には想像もつかない未来だ。
確かに僕は、以前、石鎚の神様から、
「人間として生まれ変わるのは今回が最後。
次は仏になることになっている」
と、教えていただいたことがあります。
… 一日一日を大切にして、
しっかり精進しなさいよ。
ご両親を大切にな。
… よいお参りであったぞ。
最後は優しく、そう仰ってくださいました。
大山から戻ってしばらくは、
神様の意図を理解できずにいたのですが、
ふっと浮かんだ“根源”という言の葉が
僕の頭から離れなくなりました。
血の繋がりではなく、
心と心で結び付いた命の集合体を
家族と呼ぶのだとしたら、
家族ってすべての愛の根源だと思うのです。
家族の愛を知り、家族を愛すること。
それは愛の根源を知ることなのかもしれません。
大神山神社の神様方が僕に伝えたかったのは、
限りある愛しい毎日を、
大切な家族と、
一日一日、大切に過ごしていくこと。
つまりは、そう言うことだと、今は思えるのです。
秦基博 / 風景
大山から戻ってから、
僕の両親への想いは溢れるばかりです。
時が止まればいいのに。
何の変哲もない日常が、
こんなにも愛おしいものだなんて。
母親の手に触れて、
肩や腰にそっと手を回して、
その優しい温もりを、尚更、愛しく感じています。