コウヘイは何も手掛かりを掴めないまま帰宅した。
「疲れたよ」
 そう言ってリビングのソファーに腰を沈めると、ぬくもり館で出会ったオカザキと言う女とのいきさつを話し聞かせた。
「そうなんだぁ~」
 妻のヒトミはコウヘイに同情するように何度も頷いた。
「……ねぇ!」
 そんなヒトミが写真を指差したあと、コウヘイの肩を叩いた。
「ここ、浅岡さんの牧場と違う?」
 同封されていた写真の中の一枚。コウヘイが見覚えなかった写真の背景に小さく写っていたのは、赤い屋根の牛舎にも見えた。
「そう言われたら……」
 だけどそれが事実なら、サキが浅岡のもとを訪ねていたことになる。しかし浅岡はそんなことなど一言も言っていなかった。だからコウヘイは少し頭が混乱していた。写真の中で微笑むサキが本当はどこにいたのかと。

「そうそう、この前の診察結果が出たらしいのよ。病院から連絡があって、少しまとまった時間が取れる時にでも来てほしいって」
 コウヘイは小さく首を上下させただけで、何も答えなかった。
 それよりも写真の方が気になった。一体、サキは何処へ行ってしまったのだろうか。
 コウヘイが思うに、もしも浅岡の牧場へサキが来ていたのならば、きっと生きていないように思った。
 生きていると分かっていたら、浅岡だってそう言うだろう。手紙を見せた背景には、サキの行く末を何らか知っていたに違いなかった。
「もしも浅岡がサキの生存を知っていたのなら、こんな風に隠したりするだろうか?」
 真剣すぎるコウヘイの眼差しに
、ヒトミは分からないと俯くように答えた。